表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラコン悪役令嬢は、弟の破滅を阻止するためにすべてを物理でねじ伏せる。~王子様は結構です。運命の相手、自分で見つけました~  作者: うり北 うりこ@ざまされ2巻発売
第3章 領地編2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/123

痛いまま レオナルドside


 王子ずっと泣いてんじゃん。

 

 そう話す、目の前の恋敵を見る。

 ジン・フォクス。特筆するのは黒髪、黒目という変わった色彩のみで、特別な何かを持つわけでもない凡庸な子爵家の子息だ。

 

「何を言っているの?」

 

 僕が泣いている? そんな馬鹿な。

 

「意味もわからず、好きな女の子が婚約者候補の筆頭からいなくなった。そのあとは連絡も取れなくなって、会うこともできない。傷つかない方がおかしいだろ」

 

 淡々と続く言葉に、じくりと胸が痛む。


 なぜ、今になってそんなことを言われなければならない。もう過ぎたことだ。

 ジン・フォクスに何がわかる。アリアの隣に何の苦労もなくいられたくせに。

 

「心の傷はいつか自然と治ることもある。だけど、吐き出さなければ膿み続けることもあるんだ」

 

 過去の痛みを、会ったばかりの、何の取り柄もない恋敵に暴かれる。こんな屈辱ってない。

 そもそも、こいつさえいなければ、こんな気持ちになどならなかった。アリアが弟や家族と笑い合っているだけならば……。

 

「言いたいことは、それだけか?」

「うーん。まぁ、他にもいろいろとあるにはあるけど、とにかくアリアときちんと話し合うべきだ。もちろん2人きりじゃなく、ノアかカトレア様に同席してもらって」

貴様(きさま)に指図される(いわ)れはない。私とアリアのことに口出しをするな」

 

 私が言い返せば、怒ることも怯むこともなく、変わらない表情で謝られた。

 

「そうだな。悪かった。でしゃばり過ぎた」

 

 そんなに簡単に謝罪をされてしまっては、こちらの方がばつが悪い。

 

「だけどさ。王子って、さっき自分のこと()って言ってた自覚ないだろ。口調も幼くなってたし」

「……は?」

 

 何を言っているんだ?

 

「早くなんとかした方がいい。俺には言われたくないだろうけど」

「……出ていってくれ」

 

 もう話したくなかった。一人になりたかった。これ以上、感情を揺さぶられたくなどない。

 だけど、これだけは言わなくては。

 

「ジン・フォクス。私はアリアを諦めない。どんな手を使ってでも、私のものにする。必ずだ」

 

 そうだ。アリアが欲しい。あのキラキラと光る笑顔を隣で見るんだ。

 強くて、優しい、可愛いアリア。彼女さえいれば、何もいらないはずなんだ。

 


「そうはさせない。姉さんのことはスコルピウス(僕たち家族)が守るよ。殿下、スコルピウスを敵に回す意味を考えた方がいい。国が滅ぶよ?」


 アリアの弟に睨まれたが、何も怖くなどない。敵意を向けられることなど慣れている。だが、ジン・フォクスの見透かしたような瞳が私を苛立たせる。


「王子はアリアの何を見ているんだ? 最近は知らなくても、昔は知ってるんだろ?」

「何が言いたい」

「どうして、好きな子が悲しむかもしれないことができる。それって、本当に好きだって言えるのか?」

「好きだから手に入れたいんだろ」

「手に入れて、どうする? 悲しむ彼女を閉じ込めるのか?」


 そんなことは言ってない。私の手で幸せにするんだ。私がいなければ何もできないほどに、私だけを見てくれるように……。 

 

「悲しくなんてないさ。アリアも私だけを見ればいいんだ。そうしたら、幸せになれる」


 なんで、そんな目で私を見る。そうでなければ、いけないんだ。そうだよね?


 自分でもこんなに執着するなんて異様だって、わかってるんだ。

 だけど、アリアが変えてしまったんだ。僕の人生を。


 地獄だったさ。会えない相手を想い続け、少しでも何か知りたくて、リカルドからの話を待ち望む日々は。惨め以外のなにものでもなかった。


 嫌いになれたら良かった。他の令嬢を好きになれたら良かった。

 それなのに、お茶会での思い出だけが僕のなかで宝物みたいに輝き続けた。


 アリアがいなければ、幸せにはなれない。そうしないと、僕は救われない。そう思った。


 だって、ずっと痛いままなんだ。

 

 キミが僕を傷つけたんだから、キミが救ってくれないと。

 

 そうしないと、大好きなキミを憎んでしまいそうなんだよ。こんなにキラキラと光っているのに。大好きなのに。憎みたくなんかないのに。


 はじめての感情だったんだ。

 誰かにこんなにも興味を惹かれるのも、()がれるのも。

 

 この気持ちを一緒に育てたいと願うのは、罪なのだろうか。



 ねぇ、アリア。僕の何がいけなかったの? 

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


レオナルドの心の揺らぎを書いたつもりでしたが、うまく伝わりましたでしょうか?

私と僕の書き分けはわざとです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新楽しみにしています!
[良い点] 更新お疲れ様です。 ……うんまぁアレですな。純粋な『男』としての視点から見たら「好きな娘にずっとそばに居て欲しい、添い遂げて自らの血を遺して欲しい」と焦がれる感情は理解出来なくはないん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ