私のとなりは、私が決める
「なるほど。確かに弟君のノアとは親しい方がいいよね」
そう答えるレオナルドに、上手くいった! と心のなかでガッツポーズをする。
だけど、そう簡単には思い通りにはいかないみたい。
「じゃあ、私とアリア、ノアの3人で行こう。君はついて来たかったら、ついて来てもいいよ」
ジンに冷たい眼差しを向けながらレオナルドは言った。そして、ジンが手を取ってくれた方の手を握ると促すように優しく引っ張られてしまう。
でもね、私は足を踏み出さないよ。あなたとともに歩かないの。私のとなりは、私が決めるから。
拒絶になると、傷付けることになるとわかりながらも、レオナルドに握られた自身の手を引き抜こうとした。
「あれ?」
何でこんなに優しい力なのに抜けないの?
何かしているのは明らかなので、じろりとレオナルドを睨む。
「どうかしたの?」
「どうかしたのって……」
レオナルドは、にこにこと楽しそうに笑っている。睨まれて笑うとか、正気とは思えない。
「アリアは睨んでいても、可愛いね」
アメジストのような美しい瞳のなかに、どろりとした感情が見えた気がして、ぞわりと鳥肌が立った。
「離して!!」
そう叫ぶとともに、無意識に身体強化をして握られた手を振り回した。
だらりと揺れるレオナルドの右腕。
パンッという小さな音とともにレオナルドの腕から銀の腕輪が落ちていく。
「魔道具……。殿下、これはどういうことですか?」
素早く拾った銀の腕輪を見ながら、ノアはレオナルドを見据えた。
ノアの黄金色の瞳が朱に染まっていく。ノアの魔力が揺らいでいるのを感じる。
「ノア、大丈夫だから」
「だけど!」
朱色の瞳が私を見る。私のために怒ってくれた可愛い弟。その気持ちは嬉しい。だけどね……。
「魔道具を使った天罰はすでに下ったから」
右肩を押さえながらもレオナルドは笑っている。痛いはずだ。顔色だって良くない。
そりゃそうだろう。身体強化をした私に思いきり腕を振られたのだから。腕がとれることなく、くっついていることが幸運だ。
「殿下、これは何の魔道具ですか?」
「捕まえておくためのかな? 魔道具が壊れるのは想定済みだったけどね」
昔、レオナルドの魔道具を壊したことがあったけど、まさかまた使ってくるとは……。
「捕まえておくためって言ったけど、まさか捕縛用とかじゃないよな?」
「私がそんなことをするように見える?」
「俺は王子のこと何も知らないが、自分のために捕まえる用の魔道具を使う時点でまともじゃないことは分かる」
ジンもまた、私のためにすごく怒ってくれている。やっぱりその気持ちは嬉しい。
だけどね、今はそれどころじゃなくなってきたんだよね。
「ねぇ、とりあえず殿下を連れて逃げようよ。そろそろ限界だと思うよ」
ちらりとお父様の方へと視線を向ける。
「どけ、セバス! あの小僧を仕留める!!」
「流石に、それはいけませんぞ!」
「そうよ、いくらゲスなことをしてきてもそんなことをしてはダメよ!! ローゼに合わせる顔がなくなるじゃない」
お母様、違う! 王妃様と友だちなのは知ってるけど、何かもっとお父様を止める良い言葉はなかったの!?
お父様は魔術でレオナルドの方へと攻撃を放ち、セバスが防御している。
セバスが立ち塞がっているおかげで、お父様も本気を出せていないけど、それも時間の問題だろう。セバスを大ケガしない程度に倒して、レオナルドに攻撃してきそうな勢いだ。
「アリアお嬢様、殿下を連れて逃げてくだされ!」
セバスの切羽詰まった声とともに、私はレオナルドの右手を取って駆け出した。
ジンとノアもついてきてくれている。
え? 何で態々手を取ったかって? 右肩の骨が折れているからだよ。
せいぜい、痛い思いをするといい。捕まえておくための魔道具を使われたこと、怒ってるからね?
私は罪人でも、ペットでもないんだから!!!!
いつもありがとうございます(((o(*゜∀゜*)o)))
活動報告にブラコン悪役令嬢の小話あげました!よろしければ、是非✨
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