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スパダリ化の裏側 ジンside


 アリアが好きだ。 


 アリアも俺に好意を持ってくれていると思う。俺にだけ頬を染め、はにかんだように笑う姿を見て、何度「好きだ」という言葉をのみ込んできたか……。


 なら、さっさと告白をすればいい。以前の俺ならそう言うだろう。


 だが、話はそんな簡単なものではない。

 アリアは公爵令嬢で、娘に対しての愛が重すぎる父親と、ブラコンの弟がいる。アリアの弟のノアは、俺の恋を応援してくれているが、父のデニス様はとにかく手厳しい。

 本当にアリアを第1王子の婚約者候補筆頭にしたことがあるのか? と疑いたくなるほどに、アリアを嫁に出したくないように見える。


 そんなデニス様と奥様のカトレア様、ノアを前に俺は頭を下げていた。



「アリアさんに、告白させてください」


 無事に米の収穫ができ、夢への一歩を踏み出せた。貴族としてのマナーや教養も、デニス様とセバスさんに問題ないと言ってもらえた。


 やっとアリアの隣に立てる。やっと告白ができる。


 そう思っていた。そのつもりで、アリアに話したいことがあるとも告げた。だが──。


「ダメだ」


 ピシャリ、とデニス様の厳しい声が響く。


 実を言うと、告白の許可を取りに来たのは初めてではない。いきなりでは許可がもらえないだろうと、今年の田植えの時期から繰り返している。「無事に米が収穫できたら、告白させて欲しい」と。

 その間にダメだと言われた理由を聞き、勉学や武術から炊事・洗濯といった日常的なものまで様々なことに取り組んできた。

 今度は何がダメだと言うのだろうか。そろそろ、デニス様もダメな理由を考えるのが厳しいはずなのだが。


「理由をお伺いしてもよろしいですか?」

「理由? そんなことも自分で考えられんのか? だから、ダメなんだ」


 今まで、散々あそこがダメ、ここがダメと言い続けてきたのに、ここに来て急に自分で考えろ……か。ダメだと言うネタが尽きたな。

 うーん。これは、どうしたものか。



「デニス。もうそのくらいにしなさいよ」


 俺が告白の許可を取りに来ている時、今まで何も言わなかったカトレア様からの援護射撃が入る。


「そうだよ、父さん。ジンの告白を止めてたなんて知ったら、姉さんに嫌われるかもよ?」

「1回や2回じゃないものね。あり得るわね」

「それに父さんの許可なんていらないのに、態々言いに来るんだよ? 姉さんのことを本当に愛してなければできないよ」

「分かるわ。こんな難癖ばかりつけてくる父親なんて無視すればいいのに、律儀よね。アリアちゃんとの将来をきちんと考えてくれている証拠だわ」


 おおぅ。そんなに言っていいのか? あぁ、デニス様が見るからに落ち込んでる。

 俺のためとは分かっていても、いたたまれない。


「デニス様は、何でそんなにアリアさんに俺が告白するのがイヤなんですか?」

「そんなの、アリアがOKするに決まってるからだ!!」


 あ、開き直った。いっそ、清々しい。


「どこぞの馬の骨より、俺の方がマシなのでは?」

「そんなことは、分かってる! だが、お前が言うな」


 それは、そうだな。

 だが、ここで引くわけにはいかない。学園に入るまでに、絶対に告白をする。


 婚約者候補のいないアリアは危険だ。勝手に想いを寄せるだけなら、俺がムカつくだけだ。だけど、可愛らしい見た目に反してアリアは脳筋の武力派だ。実力行使なんかしてみろ、相手がどうなるか考えたくもない。

 アリアが……というより、相手がヤバい。いや、アリアも心配なんだけど、相手はもっとヤバい。


 ……というのは建前で、やっぱりアリアの瞳に映る男は俺でありたいという俺のエゴが1番の理由だ。



「デニス様は俺をアリアの婚約者候補に、行く行くは婚姻も視野に鍛えましたよね?」


 そう聞く俺の目をデニス様は見ない。その姿を肯定と捉えて、言葉を続ける。


「デニス様がアリアさんをとても大切にしているのは分かります。アリアさんの気持ちを最優先にします。俺の気持ちを押し付けたりなんか絶対にしません」


 そうだ、そんなことは絶対にしない。命をかけて誓える。

 アリアは俺の希望なんだ。アリアがいなければ、今みたいな未来を描けなかった。ただ、足掻くことしかできなかったはずだ。


 感謝してる。だけど、それだけじゃない。


 楽しそうに笑うアリアの笑顔を、キラキラと輝く瞳を、前を向く心を。俺のすべてで守りたい。アリアの瞳が悲しみに染まらないように。

 そのために、努力を重ねてきた。今だってまだ足りない。最低ラインに立っただけだ。


 それでも、アリアのもっと近くに立つためにも。一緒にいるためにも──。



「アリアさんに告白をさせてください」



 深く、深く頭を下げると「顔をあげろ」と不快だという気持ちを隠しもしない声がした。

 言われた通りに顔をあげれば、仇だと言わんばかりの視線を向けられる。


「好きにしろ」


 地を這うような声でそう告げるとデニス様は部屋を出ていってしまった。



 やっとアリアに告白ができる。そのことに顔がゆるむのが止まらない。

 折角だから、収穫祭をやってその時に言おう。アリアに楽しいって思ってもらえるような収穫祭にしないとな。




 

お読み頂き、ありがとうございます!

右手の小指を負傷しました。゜(゜´Д`゜)゜。そのため、更新ペースが落ちています。すみません。

キーボードは諦め、携帯でちまちまと書いてますので、気長にお待ちいただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 ジン、裏でデニスさんとバチバチ(?)やり合ってたんですね。デニスさんの気持ちも理解出来ますが、これだけ頑張って来た以上ジンを応援したいですね。 [一言] 指を怪我され…
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