番外編 買い物に行こう1
さぁ、今日はしゅいちゃんとべにちゃんを連れて買い物に行きます!
スコルピウス領に帰ってからは、お店の人を呼ぶのではなく、自分達で足を運ぶようになった。
なんかね、王都では高位貴族がお店に直接行くと品位がないとかいちゃもんつけてくる馬鹿が結構いるんだって。無視してもいいんだけど、わらわらとそんな人が出てくるし面倒だからって呼んでいたらしい。
それ聞いた時、貴族って面倒くさい。
って、本気で思ってたら、ノアが「僕が結婚する人は、買い物に当たり前に出かける人にしよう……」って言ってたのが印象的だったな。
『わぁ! 人間がいっぱいですね』
『あ! あれが可愛いわよ!! アリア、あそこに行くわよ』
街につけば、べにちゃんはキョロキョロして前を見て歩かないし、しゅいちゃんは気に入ったものがあると突撃してしまう。
「アリア様、二手に分かれましょう」
「そうだね。このままじゃ、どっちかが迷子になっちゃう」
ミモルの提案で、私とべにちゃんとオロチグループと、ミモルとしゅいちゃんグループになる。
『あたし、オロチ様と一緒がいいんだけど』
こっそりとしゅいちゃんは言うが、ミモルに小さく首を振られる。
「次回からはそれでもいいですが、今回は諦めてください」
『どうしてよ?』
「オロチ様では流行が分かりませんから」
『流行?』
「そうです。女性のファッションは日々新しい流行りが作り出されます。それを取捨選択し、より自分らしく、いかにトキメク自分になれるのかが大切なんです」
『……トキメク自分』
「今日はまずどんなものが似合うのか、トキメクのかを探しましょう」
『そうね! ミモルと行くことにするわ!』
にっこりと笑うしゅいちゃん。ミモル、すごい。しゅいちゃんの性格把握してるよ。でも、危なくないかな? ギャルしゅいちゃんは可愛いし、ミモルは美人さんだもん。ナンパされちゃいそう……。
「ねぇ、ミモル。オロチも二人と一緒に行ってもらおうと思うんだけど」
「……? いえ、オロチ様にはアリア様のストッパーになって頂きませんと……」
「ストッパー? 何の?」
いったい、何を止めるというの? 買いすぎかな? 確かに、可愛いべにちゃんは何でも似合うだろうし、散財すること間違いない。
いや、散財じゃないな。だって似合うんだもん。これは、必要経費だ。
「大丈夫だよ。必要経費だから。それより、ミモルとしゅいちゃんじゃ戦闘力が低いと思うんだよね」
『アリア、何言ってるの? ここは人間しかいないのよ? 私が負けるわけないじゃない』
しゅいちゃんはそう言うけど、そうじゃない。
「二人で行ったら、絶対にナンパされる。一人や二人じゃない。ナンパ待ちの行列ができるわ。確かにしゅいちゃんも普通の人間相手なら勝てるだろうけど、大人数を相手にミモルを守りながらじゃキツいでしょ?」
『……確かに』
良かった。しゅいちゃんが理解を示してくれて。二人だけで買い物に行ってもらうなんて危険過ぎるもの。
「アリア様。ナンパ待ちの行列なんてできませんよ。それに、何と戦うんですか?」
「いやいやいや。ミモル、自分の顔を鏡で見たことある? ナンパされたことないなんて言わせないわよ」
「いえ。ナンパしてくる人なんて、もういませんよ。ノア様が私とメモルのために作ってくださった魔道具のおかげで」
「……えっ?」
ミモルが服の下からネックレスを引っ張り出して見せてくれる。どうやら、このネックレスの先に付いている赤いしずくの装飾が魔道具らしい。
「邪な気持ちを抱いた人や、私が嫌だと感じる人と接触することで発動するんです」
「……何が?」
まさか、殺害レベルのものじゃないよね? 気絶や半殺しはセーフだけど、殺害はアウトだよ?
「強い静電気です」
「へ?」
「強い静電気が発生するので、私に触れられないんです。しかも、何度もなると気味が悪いようで逃げていきます」
「な、なるほどー」
思ったより、平和アイテムだった。そっか、そうだよね。街中でそんな物騒な魔道具使えないもんね。
いやー、焦ったぁ。




