ツンデレギャルのしゅいちゃん
早く、1日でも早くべにちゃんのお洋服を仕立てなくては……。
そんな決意を胸に、私は皆が待っている食堂へと向かう。べにちゃんを迎えに行ってから、既に3時間以上が経過していた。
「べにちゃん、かっわいいねぇ」
『えへへ。べに、うれしいです』
私プロデュースのワンピースを着たべにちゃんはご機嫌にスキップしている。
水色のフリルのワンピースに黒いリボン。白いエプロンも着いている。まさにアリス風。
「一緒にお洋服、買いにいこうねぇ」
『はいです!』
可愛い。可愛いこそ正義だよ。なんて、にまにましていれば、右隣から不機嫌な声が飛んできた。
『あたしだって、可愛いわよ』
膨れっ面のギャルしゅいちゃん。レモンイエローのワンピースがよく似合っている。私の中のしゅいちゃんのイメージはハイビスカスだ。
「うん。しゅいちゃんも可愛い。……小さくなったらもっと可愛いと思うよ」
『小さく?』
「うん。べにちゃんくらいの子って可愛いよね」
……あれ? なんか、しゅいちゃんの視線が鋭い?
『アリアはさ、子ども好きなわけ?』
子ども好き……とな? もちろん、私は子どもが好きだ。キラキラの瞳も、ふわふわの頬も、子ども特有の少し高い声も大好きだ。
だけど、しゅいちゃんが言う子ども好きと、私の言う子ども好きは同じ意味なのか。答えは否だ。
「私は子ども好きではあるけど、幼い子への恋愛感情は持ってないよ」
『本当ね?』
べにちゃんと私の間に割り込んでくるあたり、しゅいちゃんもいい子なんだろう。そのおかげで、私は無実の罪を被せられそうになっているけれど。
「しゅいちゃんが心配するようなことは何もないから安心して。それに、私……好きな人いるし……」
『『えっ!?』』
尻窄みになった私の言葉に、べにちゃんとしゅいちゃんの瞳が見開かれる。そんなに驚くことだろうか。
『お姉様に、好きな人が……』
『どんな人なの? さっきいた? 教えなさいよぉ』
呆然と呟くべにちゃんと、楽しくって仕方がないと言わんばかりのしゅいちゃん。正反対の二人に、このままじゃジンのことを根掘り葉掘り聞かれそう。
すぐに会うことになるとはいえ、恋ばなをするのはかなり恥ずかしい。
どうにか、話をそらせないかな……。
「その話はまた今度ね。もうすぐ食堂に着くよ。……あっ、しゅいちゃんはオロチに会ってないから着いたら紹介するね」
『オロチ?』
「私の眷属だよ。大きな蛇の魔物なんだ」
『男かしら?』
「うん、そうだけど……」
あれ? なんか、しゅいちゃんの様子が変わった? ジンのことを聞かれるかと思ったんだけどな。
『オロチって強いの?』
「うーん。強いんじゃないかな? 本人がそう言ってたし」
『かっこいい?』
「うん。イケメンだとは思うよ」
『アリアの好きな人ってオロチ?』
「まっさかぁ!!」
ないないないない。オロチはめっちゃいいやつだし、大好きだけど、それはない。
『嘘じゃないわよね? あたし、友達と男を奪い合うなんて嫌だからね』
「えっ? あっ、うん。大丈夫だよ」
うわぁー! うわぁー!! しゅいちゃん、私のこと友達だって思ってくれてたんだ。そっかぁ、友達かぁ。
「しゅいちゃんって、ツンデレだよね」
『何言ってんの? バカじゃないの!』
おぉー、やっぱりツンデレ属性だった。ギャルのツンデレとかモテそう。オロチとしゅいちゃんが両思いになる日もあるかもなぁ。