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天使様とお節介君  作者: いくらたべたい
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1.人生はふとしたことから変わるようだ

固有名詞考えるのが一番時間かかると思うんです

この場にいる皆の熱気…いや、情熱と言えばいいのだろうか。今までの自分の人生では味わったことのないほどの熱い想いがすべてステージ上で輝く彼女たちに注がれている。

その中でも「彼女」は自分のなかで一際輝いて見えた…気が付けば、大してライブには興味がなかったはずの俺も周りと同じように声を出していたのだった。

これが、俺の人生の一つの転機だったかもしれない。少なくとも今までにはなかった価値観に出会う一つのきっかけであったことは間違いないし、この日のことはきっと忘れないだろう。


いや、忘れられる訳がないんだわ。



「あなたが(さつき)さんですか!?」


間違いない。この日から確実に俺の人生の(ルート)がまるで積み木で作った蛇のようにめちゃくちゃに折曲がり始めたんだ。

----------------------------------------------------------------



彼女たちのライブが終わり、ここに招待してきた俺の親戚…というか彼女らのプロデューサーとの約束通り関係者以外立ち入り禁止のステージ裏へ向かう。どうやらちゃんと俺のことは伝えられているらしく、名前を出したらすんなり入れてもらえた。

まぁ関係者以外立ち入り禁止で、今日は彼女たち、「エンジェリックガールズ」のライブがあって…って言ったらまぁ、ばったり会ったりもそりゃあるわけでして。

後ろから


「あなたが(さつき)さんですか!?」


こうなったわけだ。


(さつき)こと柳 颯太(やなぎ そうた)とはまさしく俺のことである。(さつき)というのはネットでの俺の活動名で、今でもこの名前で色々な活動をしている。大体想像はつくと思うが、由来は名前の(そう)をそのまま別の読み方にしただけだ。


親戚に案内を頼まれたスタッフさんかと思い振り向くと…

そこには、「彼女」がいた。そう、ステージでも一際輝いて見えたあの子だ。

さっきまでステージで輝いていた彼女が、今は目の前に、しかもなんか俺に話しかけてきてる。この状況が理解できなくて俺の頭が混乱している。てかなんで俺の顔知ってるの...?

かなり動揺していたが


「はい、そうです」


緊張を表に出さないように軽い笑顔を作る。よかった、普通の声が出せた。多分。

すると彼女は、ルビーのように綺麗な赤い目を光らせ


「あのっ!私、颯さんのファンなんです!それで、山井さんからあなたが私と同い年だってことと、今日ここに来るってことを聞いて、会ってみたくて!今日一日楽しみにしてたんです!」


なるほど。ちなみに山井というのは彼女らのプロデューサーでもある例の親戚のことだ。

なにはともあれ、今や国民的アイドルになりつつある彼女(やばい、名前しらない)が俺のファンであるというのだ。今まで活動してきた甲斐がある。


「まじすか!ありがとうございます。僕も今日のライブ、皆さんのパフォーマンスに感動しました!すごかったです!」


コミュ障、なんとかそれっぽい言葉を引き出す。素っ気なくなってないか心配だが気にしたら負けだ。とりあえず、目の前の天使のように元気があって可愛い子が好意(変な意味じゃなくて)を持ってくれてるという事実だけですげえ嬉しい。


「本当ですか!?嬉しいです!」


そう言うと彼女は俺の手を取る。

え、ちょいまって、手。触れてる。やばいって(以下略


「あっ、あの!私、あなたが書いてくれた『Angelic!』が大好きなんです!いつもあの曲に元気をもらってます!」


やばい、手汗とか大丈夫かな俺。スキンシップというかなんというかがやばい。完全に違う世界の人だこの人。


ちなみに『Angelic!』というのは俺が彼女たちのために書き下ろした楽曲だ。彼女たちのデビュー曲でもあり、人気が爆発するきっかけともなった曲である。まぁ要するに俺も若干彼女らの関係者ではあるということだ。

とりあえず、俺の書いた曲がこの子の天使のような元気さに一役買っているというのならそれは心の底から嬉しい


「まじすか!嬉しいです!山井さんから突然アイドルのデビュー曲を書いてくれなんて言われた時にはどうなることかと思いましたが、皆さんの力になれて良かったです!」


焦りすぎてまじすか!を連発してる。とりあえずこれ文頭につけとけばどうにかなる。声震えてないかな、イントネーション大丈夫かな。こわいよぼく。

ちなみに俺は別に例の親戚、こと山井 伸也(やまい しんや)とはそんな畏まった関係ではない。先生と会話しているときだけ友達に君付けして呼んだりとかするあれ。


ちなみに今なんとか会話ができているのも、コミュ障を改善しようと色々努力していたからだ。

少し昔マジでコミュ障だったころの俺は、友人と以外まともに会話すらできなかったのである。当時の俺はコンビニのレジとかでもまともに受け答えもできないタイプのコミュ障であり、それに危機感を感じた俺は人の目を見て話したり、はっきり聞こえるように話してみる…などなど。いろいろとコミュ障を治すために努力したのだ。そこまでしてやっと今のレベルまで辿り着けた。

だが目の前のこれはなんだ。初対面の人間相手に自然に話せてなんなら手をとってきたぞ!?肌触れてるって。エグイてえ!

そもそも、女子と話す機会すそうそうないのに、触れることなんてそりゃないわけで。この状況は心臓が持たない。さっきまでステージ上にいたってのが、今触れてる相手が一般人ですらないってことを余計に意識させてきてもう無理。

なんて爆発しそうになっていたら


「お、来てたか颯太」


聞き覚えのある声に救いを求めるように振り向く。


「伸也!久しぶり。」


そう、彼こそが例の親戚。山井 伸也である。

伸也は目の前の状況を大体察したのか


「愛花、今日はお疲れ様。俺は今からこいつと大事な話があるから、借りていくぞ。」


借りていくぞって…別に俺は彼女と親密な仲でもないんだけどな。とりあえず爆発せずに済みそうだ。

すると彼女は残念そうに


「わかりました…。颯さん!また会いましょうね!」


また会いましょう…?彼女たちはまだ()()ことは知らないはずだが…?

とりあえず、了解の意を返す。

すると彼女は随分とご機嫌そうにこの場を後にした。


「元気そうでなによりだ、颯太。」

「そちらこそ。3年ぶりくらい…かな?」

「ああ。お前が中学に入学する寸前だからちょうどそれくらいかな。」

「それにしてもこっちはすごいね。何から何までいかにも都会って感じだ。」

「ああ、向こうに比べたらそれはもう。な」


俺はつい昨日、ある事情でこの東京に引っ越してきた、そして今度入学する高校もここ、東京にある。


「にしてもお前、まだコミュ障治ってないのか…。」

「いや、昔よりは全然マシだし、さっきのは俺じゃなくてもああなると思うんだが…」

「ま、それもそうか」


と、笑いながら伸也は言う。


「引っ越し早々悪いな。どうしても今日のライブを見てほしくてさ」

「いやいや、来てよかったよ。」

「そうか。よかった」

・・・・・

顔を合わせるのは3年ぶりなので近況などいろいろなことでそこそこな時間話を弾ませた。

そして


「それで、今日ここに来てもらった理由だけど…」

「あぁ、今後の彼女たちの楽曲に関しての話だろ?」

「そうだ。まずは、俺の無茶振りに答えてくれてありがとうな。『エンジェリックガールズ』の成功は間違いなくお前のおかげだよ。ありがとうな。」


頭を下げられる


「いや、いいよ。俺も彼女たちの曲を書けて光栄なんだ。今日、そう思った。」


すると伸也は笑い。


「ワハハ、そうだろ。あいつらには力がある。人の心を動かす力だ。だから、お前にこっちに来てもらったんだ。」

「あぁ、あの話、受けるよ。とは言っても毎回は無理だと思うけど。」

「そうか、『エンジェリックガールズ』の専属作家になってくれるのか。」

「ああ、その話、受けるよ。」


俺が東京に来たのは元々興味があったのに加えて、伸也が支援してくれるという話があったからだ。その際に専属作家の話もあったがそれは俺の自由にしろと言ってくれていた。

正直受ける気はなかったが今日のライブを見て気が変わった。それくらい彼女たちのパフォーマンスは俺の心に響いた。


「そうか。よかったよ。あの『颯』がこっちについてくれるんだ。俺らとしても心強いよ。それにいい宣伝にもなるしな。」


と、伸也はほっとしたように笑いながら言う。


俺は元々趣味で中1の夏あたりから動画サイトにアニメーション動画を作って投稿したりゲーム配信をしたりと色々やっていて、その頃はよくて1000再生、平均すれば400再生くらいの本当に趣味の範囲でやっていたのだが、その趣味の一環として音楽制作ソフト(いわゆる合成音声で歌わせるようなもの)を用いて作成した曲が奇跡的にヒットし(中2の夏ごろだった)、それ以降もそこそこなヒット曲を生み出すことに成功した結果、今ではそれなりの知名度を得ていて、今では楽曲作りを依頼されるなんてこともある。ちなみに趣味のアニメーション動画や配信も続けていて、そっちの方も多くの人に見てもらえるようになって正直嬉しかった。

再生数なんて気にせずに好きなようにやっていたが、やはり多くの人に見てもらえることは嬉しい。

ちなみに、まさかこんなに伸びるとは思っていなかったのもあって、俺の地元の友人には動画サイトのことは話していたので、今の俺の活動もバレている。

友人のように接していた伸也もこのことは知っていて、それで俺に楽曲の作成を頼んできた。それが大体中3の春だった。その時に書いたのが『Angelic!』だ。

正直、デビューするアイドルユニットの曲を書いてくれなんて言われるとは思わないし、伸也に関してはまさかアイドルのプロデューサーになってるなんて知らなかったので聞いた時には驚いた。

それに、ここまで大きな人気を持つユニットになるとすら思わなかった。


「それで、お前の家はどうだ?」

「気に入ってる。結構くつろげるな」

「そうか。気に入ってくれてよかった。」


こっちに越してくるのを支援してくれるということで伸也には物件探しや、受験する学校探しやらなにやらと色々助けてもらった。最初は家の家賃の1/3を支援してもらうという話だったが、間違いなく俺の方が伸也より稼いでいるのでその話は断った。(すまん伸也…)


ちなみに探してもらった物件は都内の駅から徒歩6分ほどの距離にある2LDKのマンションだ。一人暮らしで2LDKは若干広すぎる気もするが、俺は広い方が好きなのでこれで良し。

それに余裕もあるしな。


「学校の方は明日だっけか?入学式」

「あぁ、場所もばっちりだ」


俺が入学する桜稜(おうりょう)高校は有名模試でも偏差値は60を超えているそれなりな高校。正直受かったのは運がよかったとしか言えないが。


「そうか。頑張れよ。あっ、忘れてた。これ、契約書な。」

と、一枚の紙を受け取る


「にしてもすごい額だなぁ、これ。」

「あぁ、今回はうちもかなり力を入れてるからな。それにヒットメーカーを独り占めにするんだ。これくらいはやるさ。」


契約書を見ながら思わずにやける。こっちに来る前に聞いてはいたが改めて見るとすごい額だ。これで俺の人生もしばらくは安泰かな。


「んじゃあ、これからもよろしくな。颯太」

「ああ、よろしく頼むよ。」

「それで、今日じゃなくてもいいから一度メンバーたちとも顔を合わせてくれ。今後も彼女たちと一緒に仕事をするわけだしな」

「まぁ、そうなりますよねぇ…」

「お前がコミュ症なのは知ってるけどまぁ頑張ってくれ」

「はぁ」


ただでさえ女の子と話したことなんてないのによりにもよって相手は今を輝くアイドルとか…あぁ…………

俺の人生、これからどうなるんだろう。

そんな不安を抱えながら場を後にするのであった…


良ければ、感想や評価ください!アドバイスもぜひ。モチベになります!


書く速度が速いわけでもなくあまり暇とも言えないので投稿ペースは遅いと思います。

初心者なので何かと拙い部分があるとは思いますがよろしくお願いします!

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