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143話 会食

 ロン大人ターレンが店の一番奥にある席に美女2人と共に座ると、手をひらひらとさせて参加者に食事を促した。

 どうやら参加者が全員揃うまで料理を楽しんでくれという意向のようだ。

 それならと、ドーソンは角煮と烏龍茶らしきものを頼み、それらをゆっくりと楽しみながら待つことにした。

 やがて、とある海賊が店内に入ってきた直後、店のシャッターが閉められた。

 その海賊が、参加者の最後の1人だったようだ。

 海賊全員が席についたのを確かめてから、ロン大人が立ち上がって演説を始めた。


「まずは、良く集まってくれたと礼を言いたい。そして、この店に集めた者たちは、この我がSU宇宙軍と戦うに際して期待を大に感じている者たちである」


 遠回しでの『頼りにしている』という意味合いに、本当に理解出来ている様子なのは海賊の半数ほど。残りは『なんか褒められている?』といった感じの疑問顔だ。

 しかし先ほどの言葉は、集まった海賊たちの頭脳指数を図るためのものだったようで、ロン大人はより易しい言葉遣いで話を続けていく。


「SU宇宙軍は、海賊を駆逐すると息巻いている。そして、それが実現可能だと信じて疑っていない。しかし我らは、そんなにヤワな存在だろうか。いや、違う! 我らは、猟師に狩られる兎ではなく、狩る側の狼である!」


 ドーソンは、宇宙時代の生活の中であまり見ない『兎』や『狼』を、例え話に使って海賊が理解出来るのかと疑問に思った。

 しかし海賊たちは、ちゃんと兎と狼が分かっているようで、ロン大人の演説に歓声を飛ばす。


「そうだ! オレらは商人を狩る狼! SU政府の犬に負けるかよ!」

「猟犬より、狼の方が恐ろしいってところ、見せつけてやるぜ!」


 わーわーと声が上がり、その盛り上がりが最高潮になったところで、ロン大人が手を掲げて歓声を止めさせる。


「皆の意気は分かった。我らは狼。犬に敗けようはずもない。しかし狼とて、一匹狼では多数集まった猟犬に負けてしまうのも、また事実。故に我らは、狼が群れを作って獲物に襲い掛かるが如く、一致団結しなければならない。その切っ掛けとなるよう、今回酒宴を開かせてもらったわけである」


 ロン大人は、暗に海賊たちに付き合いの少ない他の海賊との交流を促している。

 ドーソンは余計なお世話だと、つい思ってしまう。

 この店の中にいる海賊で、活動1年少々なものなど、ドーソンだけだ。

 ロン大人が交流を促した所為で、この後に他の海賊から会話を持ちかけられることは目に見えている。

 正直ドーソンとしては、自分の目的のために動く気しかないため、海賊たちと仲良くする気があまりない。だから話しかけられても困ってしまうのだ。

 そんなドーソンの気持ちを知ってか知らずか、ロン大人の言葉は続いていく。


「酒宴にて腹を満たした後は、歓楽街にて最上級の夜の運動へとお招きしよう。食事と運動で英気を充満し、SU宇宙軍との戦いに頑張ってもらいたい。さて、我からの話はこれで終わりにしよう。皆、楽しんでくれ」


 ロン大人が杯を掲げ持つと、海賊たちも各々の飲み物を掲げる。ドーソンも習って、烏龍茶の入った杯を持ち上げた。


「打倒、SU宇宙軍! 乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 乾杯の音頭の後、店内に海賊たちが話し合う喧噪が戻ってきたので、ドーソンも角煮を突きながら烏龍茶を飲む行為に戻る。

 しばらくチマチマと、味の濃い肉の味を楽しんでいると、海賊が1人近寄ってきた。

 ドーソンが仮面越しに視線を向けると、40代に差し掛かりそうな手足を機械化した男が、軽く笑いながら勝手に同じ卓の空いている席に座った。


「お前さん、≪ビックコック≫では見ない顔だな。どこから来た?」

「この白黒の表面は、俺の顔じゃなく仮面だ。俺の顔は見せてないぞ」


 探りを入れる言葉にドーソンが皮肉を返すと、質問してきた海賊が笑った。


「ふはっ、そりゃそうか。で、どこからだ?」

「最初は≪ハマノオンナ≫で次は≪チキンボール≫だ。そんでお呼ばれして、≪ビックコック≫まで出張ってわけだ」

「ほー。≪チキンボール≫の白黒仮面か。話には聞いたことがある。お前さんがあの、SU宇宙軍を狙い続けるイカレ野郎か」


 初めて聞く評価に、ドーソンが首を傾げる。


「宇宙軍を殊更に狙っているわけじゃない。良い船と装備を揃えるには、宇宙軍の艦艇を襲って奪った方が速かっただけだ。それと最近は、宇宙軍ではなく居住可能惑星や衛星の物資強奪を仕事にしているしな」

「その強奪の際にも、宇宙軍と戦っているんだろ?」

「向こうが手を出してくるからだ。出してこないのなら、戦う気はない」

「ははっ。略奪を黙って見過ごしてくれたら、宇宙軍を襲うのを我慢してやろうってのか。なかなかなイカレ具合だ」


 一頻り笑ったあとで、海賊は急に声を顰めてきた。


「宇宙軍と戦った経験が豊富なお前に聞きたいんだが――勝てるか?」


 20万隻もの大軍を相手だと、ロン大人が目を付けた海賊であろうと不安らしい。

 ドーソンは角煮をチマチマと食べつつ答える。


「やりようによっては勝てるし、勝てなきゃ困る」

「そうか、そうだな。宇宙軍は海賊の殲滅を宣言しているんだ。投稿したところで、だな」


 この海賊は聞きたいことが終わったようで、すぐに席を立って別の海賊へと向かった。

 ドーソンは食べ終わりそうな角煮を前に、また新たな料理を頼むことにした。

 今度は注文した料理を食べ終えるまで、誰も近寄ってこなかったし、食べ終えた後はロン大人主導で海賊たちが歓楽街へと繰り出すこととなった。

 しかし全ての海賊が歓楽街へ行くわけではないようで、何人かは列を外れて港の方へと足を向けている。

 ドーソンも腹が一杯で運動する気分でもないので、≪雀鷹≫に戻るための短距離船を捕まえるべく港へと向かうことにしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] エゴソフトが作る宇宙ゲームXシリーズの世界観に似ている、宇宙海賊物語がもっと読みたい。
[気になる点] ドーソンもしかして童貞? どどど童貞ちゃうわっ!
[気になる点] 常に投降が投稿になっているのは、何の意味が隠されているのだろうか?
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