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100話 殿軍

 ≪雀鷹≫と護衛戦艦は最後尾で殿軍となり、SU宇宙軍の追撃部隊の対処を強いられることになった。


「オイネ。護衛戦艦と通信を繋ぎっぱなしにしろ。ここからは一層、気を引き締めないと危ないからな」

「はい。ディカと繋ぎますね」


 通信が繋がった瞬間に、ディカは怒声に近い大声を放ってきた。


『ドーソンさん、なんですか! かなり忙しいんですけど!』

「分かってる。こっちも同じ状況だからな。その忙しさの何割かを、俺が代行してやろうって考えたんだが、啖呵をきれるぐらいだから要らないな」

『わわ、ごめんなさい! 手助け、もの凄く有り難んで、早く!』


 ディカの調子の良い様子に、ドーソンは微苦笑を漏らした。


「ここからは俺が指示するから、ディカはそれを実行してくれればいい。人工知能のお前にしてみれば、忙しさが軽減されるだろ?」


 人間相手なら意味不明に聞こえる理屈だが、ディカは大助かりだと言いたげに満面の笑みになる。


『とても有り難いですね。状況変化の対応に思考能力のソースを割くの、かなりの負担でしたから。その部分を担ってくれるのなら、3割ほど処理能力を向上させることができますから』

「異存がないなら、それでいい。じゃあ、指示出しするぞ」


 ドーソンは軽く一息吸うと、キッパリとした口調で命令を発した。


「護衛戦艦は最大艦速で前方の味方を終え。そして追いながら、前部砲塔と全銃座は進行方向周辺にある隕石へと弾幕を展開しろ。後部砲塔は追ってくるSU宇宙軍の艦艇を狙い撃ちにしろ。≪雀鷹≫はそちらの動きに合わせて適宜動くから、そちらは艦の操作に集中しろ」

『色々と疑問はありますが、分かりました。こちらは護衛戦艦を動かす装置として動きます』


 ディカは命令を実行し、護衛戦艦は弾幕と砲撃を始めた。

 前部砲塔の荷電重粒子と銃座から発せられる大量の熱線砲レーザーが隕石を砕き、後部荷電重粒子砲は敵艦艇の方へと発射される。

 ≪雀鷹≫も行動は同じ。周囲の隕石を攻撃して砕きつつ、後方から迫る敵艦艇を狙い撃ちで落としていく。

 どうして周辺の隕石を壊し続けていくのか。

 その理由は、直ぐに判明した。

 隕石地帯の中を隠れ進んでいた敵の戦闘機が、破砕されて弾け飛んだ隕石の破片に当たり、ドーソンたちの艦列の側にまろび出てきたのだ。その戦闘機は、≪雀鷹≫と護衛戦艦が張っている弾幕に打ちのめされ、程なくして爆散した。


「ディカ、弾幕は容易なよ。弾幕さえ張っていれば、敵戦闘機はこっちの艦隊に接近できない」

『はい、弾幕ですね! 最大発射レートで、弾幕を濃くして! 銃身が保たない? 保たせて!』


 中々に理不尽な指示の出し方に、ドーソンはディカに艦長の適正ありだと評価する。

 部下が頑張っているならと、ドーソンも少しだけ無茶なことをやろうと決意する。


「ヒトカネ。各種機関の調子はどうか?」

「絶好調だとも。足の遅い護衛戦艦と足並みを揃えているんで、ジェネレーター出力に余裕があるぞ」

「なら機関をフル活用する無茶をする。フォローを頼む」

「ほほう。いよいよ、腕の見せ所ってわけか」


 ヒトカネが労働を喜ぶ顔になるのを見つつ、ドーソンはコリィへと目を向ける。


「無茶な軌道をしながらの曲芸打ちをする。後部砲塔1門の動きは任せる。前部砲塔2門のコントロールをこちらに」

「りょ、了解。で、でも、どんな動きをするか、あらかじめ、教えてくれると……」

「それもそうだな。こんな軌道だ」


 ドーソンがサッと作った概要の≪雀鷹≫の軌道に、コリィは困惑と興味が混ざった声を出す。


「ほ、本当に、こんな動きを?」

「やる。というか、この≪雀鷹≫ならやれる。だからやる」


 ドーソンの決断的な言葉に、コリィは意を決した目つきになる。


「なら、ついてく、よ」

「頼んだ。ベーラ。前を走る艦隊の調子は?」


 ドーソンは『無茶』の準備をしながらの要請に、ベーラは交信作業を続けながら報告する。


「先行艦隊が突破した地点を目指して、爆走中だね~。邪魔になりそうな隕石を、艦砲射撃で打ち壊しながら、可能な限り直進してるって~」

「こちらの速度を気にせずに最大速度を維持するよう、伝えてくれ。こちらが敵中に取り残される形になっても気にするなともな」

「りょうかい~。でも、本当に取り残されると困るんじゃ~?」

「むしろ大量の海賊船ていう荷物がなくなる分、≪雀鷹≫と護衛戦艦の2隻だけなら楽に逃げだせるんだよ。だから気にしなくていい」

「そうなんだ~」


 ベーラは安心した様子で、先を進む味方艦隊と海賊船に通信を送る。

 その直後、押さえていた枷を外すような勢いで、先の味方が増速した。

 ≪雀鷹≫と護衛戦艦とが前と距離が少しずつ空きだすと、その間を遮断しようとするかのように、隕石地帯の中から戦闘機が大量に飛び出してきた。


「≪雀鷹≫と護衛戦艦は、弾幕の狙いを隕石から戦闘機に変更! 速度は維持したままだ!」

『敵戦闘機が突っ込んで来てます!』

「予想通りだ。弾幕で撃ち落とせ! 前部砲塔も放て。砲撃は牽制目的でいい!」


 ドーソンはディカに命令しながら、無茶をやる準備がようやく整った。


「コリィ。カウント5でやるぞ」

「じゅ、準備、できてる」

「用意。5、4、3――」


 2、1と続けてから、ドーソンは≪雀鷹≫の艦体を時計の針のように右横回転させる。それも急速に。

 後方から接近しつつある敵追撃艦隊に横腹を晒す危険な行動だが、利点もある。

 それは前部2門後部1門ある砲塔を全て、敵へと砲撃することに使えるという点だった。


「一斉射、放て!」


 号令に合わせ、ドーソンとコリィは敵艦を照準して、同時に発砲。1門につき、1隻ずつの敵艦に命中させる。命中はしたものの、1隻轟沈、2隻小破の結果に終わる。

 ≪雀鷹≫はぐるりと回転を続け、舳先が進行方向に対して真後ろを向き、やがて左側面が後方の敵艦隊へと晒されることになる。

 その回転の間、艦体にある3門の砲塔は急いで旋回を行い、左側面から砲身を伸ばす形へに変わっていた。


「第二斉射。放て!」


 号令に合わせ、二度目の3門での砲撃。まさかの2連射を敵は警戒していなかったようで、回避行動が弱い。再び3隻の敵艦に命中し、そのどれもが急所を撃ち抜かれて大破した。

 横回転と2斉射を終えて、≪雀鷹≫は本来の進行方向へと舳先を向け直す。無茶な軌道で速度が減ったため、護衛戦艦が少し先を進んでいる。増速して追いつき、やや速度を落として並走状態へと持っていく。


「ディカ、敵戦闘機の様子はどうだ?」

『こちらの弾幕が濃いと見て、先を進む海賊船の方へと行っています。狙いを変えたと思います』


 その報告に、ドーソンは舌打ちする。


「チッ。厄介なことに気づかれたか。海賊船の方に行きそうな戦闘機を銃座で牽制しろ。ベーラ。海賊たちに通信で戦闘機に対して警戒するよう促してくれ。いよいよとなったら、隊列から離れて逃げても構わないともな」

「は~い、伝えておくね~」


 ドーソンの発言は、ベーラには不思議に思わなかったようだが、キワカは多少は用兵を知っているためか疑問に感じたようだった。


「隊列から離れた海賊船なんて、戦闘機の恰好の獲物じゃないでしょうか?」

「質問はいいが、戦闘中だぞ。レーダー画面から目を離さないままで発言しろ」


 ドーソンはキワカに釘を刺しつつ、護衛戦艦への指示出しと後方の敵艦の対応も行いながら、先の発言の意図を語る。


「敵戦闘機の狙いは、海賊船の足を止めさせて、≪雀鷹≫と護衛戦艦の足止めに使う気だと思われる。その企みを逸らすには、海賊船が隊列の外に居てくれるだけで解決する」

「海賊の人たちを見捨てるということですか?」


 キワカは、命じられたとおりにレーダー画面から目を離さないまま、非難するような口調を放ってきた。

 ドーソンは、それがどうしたと言わんばかりの口調で言葉を紡ぐ。


「俺は生きて脱出させてやると言ったんだ。隊列から離れて逃げるってことは、俺の言葉を信じていないってことだ。信じてくれていない連中に、どうして労力を割かなければいけないんだ」

「なら、なぜ隊列から離れて良いって言ったのですか?」

「信用していない奴が隊列の中に入ると、自分だけどうにか助かろうと隊列を乱すようになる。そういう存在は他の邪魔だ」

「『隊列を離れて良い』と言っておけば、そいういう人たちは勝手に隊列から外れると?」

「忘れてないか。あの海賊の中には、≪ハマノオンナ≫から一足先に逃げだそうとして、SU宇宙軍の駆逐艦が隕石地帯に張っていると知って逃げ戻ってきた、腰抜けどもだぞ。俺たちの艦隊が危ないとなれば、身勝手に逃げだすに違いない」


 ドーソンの評価が正しい証明に、ベーラが通信を送ってから少しして、隊列から海賊船が何隻か隊列から抜け出て行く。その切っ掛けは、海賊船が集まる付近で、SU宇宙軍の戦闘機が≪雀鷹≫の射撃で爆散したことだった。

 無事に排除できたのになぜ離脱するのかと疑問に思う場面ではある。

 しかし海賊からしてみれば、隊列の真ん中という一番安全な場所にもかかわらず、敵戦闘機の接近を許してしまっているように見えたのだ。

 安全な場所で危険が目の前に迫っている事を知って、ドーソンを信じるのではなく、自分の力量に頼ろうと考えることもあり得ることだった。

 だがその考えは、状況に振り回されたウカツな判断でしかない。

 その証拠に、隊列から離れた海賊船は、隕石地帯に隠れていた敵戦闘機が襲撃してきて、あっという間に隕石地帯に漂うデブリの仲間入りとなってしまった。

 そして敵戦闘機に海賊船がやられたことを知って、その原因が隊列から離れたことだと分かってもいいはずなのに、また新たに海賊船の何隻かが不安にかられて隊列から離脱する。それらの海賊船もまた、デブリと化した。

 敵戦闘機たちは、隊列の中にいる方ではなく、隊列から離れてくる海賊船を狙うことに行動を変えるようになった。

 ちゃんとした成果を上げるための行動ではあるが、ドーソンが見抜いた『海賊船を航行不能にして、後追する≪雀鷹≫と護衛戦艦の障害物にする』という作戦に反しているように見える。

 しかしそれも仕方がない事だろう。

 あの敵戦闘機たちは、SU宇宙軍の新鋭艦の所属だ。つまり、使い潰してはいけない身分を持つ軍人ということ。

 そんな軍人が、楽に戦果を稼げる状況が目の前にあったら、大目的から目をそらした言い訳に利用できる手柄の確保に逸ることはあり得ること。


「命を大事に思っているようで、大変に結構なことだ。その我が身可愛さのお陰で、こっちは楽に逃げ切れる」


 ドーソンが呟いた直後、キワカに続いてベーラが報告を放ってきた。


「前方の味方の先に、敵艦の反応あり!」

「敵の包囲と思わしき姿を発見したから交戦開始したって連絡が来たわ~」

「よし。もう少しの辛抱で、危険地帯から抜けられる。気を抜かずにいくぞ」


 ドーソンが注意を呼び掛けた声が聞こえたはずがないが、敵の追撃部隊が距離を詰めてきた。

 包囲部隊と追撃部隊で挟み撃ちする気か、それとも手柄を包囲部隊に取られることを危惧したからか。

 どちらにせよ、不用意な接近でしかない。


「コリィ。敵は増速して回避行動が疎かになっている。狙いどころだぞ」

『はい。狙いを定めて、撃て!』


 護衛戦艦の後方砲塔から荷電重粒子砲が放たれ、敵駆逐艦に命中。舳先をごっそりと抉られて、敵駆逐艦は追撃を諦めるように減速していく。

 ドーソンも≪雀鷹≫の砲撃を行い、敵艦隊の出足を鈍らせる位置に荷電重粒子の光を通過させる。

 追撃部隊の対処を行っている最中、キワカがレーダー画面を見ながら声を上げる。


「味方の人工知能艦。敵包囲陣に突っ込んだ後に、隊列を変更しています。まるで川に渡された橋のような陣形です」


 キワカのレーダー画面には『く〇:』だった隊列が『=〇:』に変わっていた。その『=』の部分が敵の包囲網に突っ込み、敵陣の中に小さな道を形成していた。

 その道の中を、後続の海賊船が全速力で通過していく。そして通過し終えた海賊船は、もう隊列を気にすることなく、勝手な方向へと逃走を始めている。

 海賊船を逃がすためには良い陣形ではある。

 しかしドーソンにとって、海賊船よりも人工知能搭載の味方艦の方が価値が高い。そのため、こんな陣形変更の命令は出していない。

 ではなぜ陣形が変更されているのかといえば、理由は1つ敷かなかった。


「おい、エイダ! 的中で艦の足を止めるなんて、何を考えてる!」

 

 ドーソンが通信先に怒声を浴びせると、戦闘用アンドロイド姿のエイダは得意そうに胸を張って見せてきた。


『敵陣に穴を空け続ければ、味方の多くが逃げられるであります。いい作戦だと、自画自賛しているでありますよ』

「馬鹿が! 敵艦の砲撃に晒されて、人工知能艦隊に被害が出ているだろうが!」


 ドーソンが指摘した通り、敵の包囲陣に突っ込ませたことで、人工知能艦隊は艦の横を敵にさらけ出す形になっている。

 砲撃と弾幕で敵を牽制してはいるものの、反撃が艦体に食らってしまってもいた。


『確かに被害は出ているでありますが、必要経費でありましょう。海賊を逃がし終え、ドーソン艦長とディカが近づいてくれば、あとは一気に逃げればいいだけでありますし』

「気楽に言いやがって。待ってろ、直ぐに助けに行く」


 ドーソンはイライラとした様子ながらも、エイダとの通信を繋げたままにしている。

 どうやらドーソンの苛立ちは、エイダの勝手な行動にではなく、想定外の状況への適応を急ぐ焦りから来ているもののようだ。


「少し危険が増えるが、仕方ない。コリィ、護衛戦艦の移動方向を変えてくれ。順路はこれだ。追撃部隊の撃破は、もう気にしなくていい」

『えっと――はい、分かりました。人工知能艦隊の横へですね』

「敵の包囲網の穴を大きくすれば、エイダたちへの圧力を弱めることができるからな」


 ≪雀鷹≫と護衛戦艦は殿軍を離れると、海賊船の脇を左右に分かれて通過し、人工知能艦隊に攻撃を加えている敵の包囲艦隊へと突撃する。


「全力射撃だ!」


 ドーソンの号令に合わせ、砲塔と銃座が敵包囲艦隊へと集中した。

 横合いから突然殴られて、包囲艦隊は狼狽えた。今まで攻撃していた相手と、新たに現れた相手の、どちらに集中するべきだろうかと。

 その混乱から覚まさないよう、ドーソンは≪雀鷹≫の全力射撃を続ける。この場面を切り抜けさえすれば良いと、砲塔や銃座の砲身が焼けつく危険を顧みない、高頻度の攻撃で。

 包囲艦隊は、≪雀鷹≫が単艦でいることを見抜くと、先に≪雀鷹≫を打倒しようと攻撃を集中させてきた。

 この状況になること――人工知能艦隊への攻撃を止めさせることが、ドーソンの目論見だと知ってか知らずかに。


「回避行動だ! ≪雀鷹≫は艦体は小さいが、装甲は戦艦級だ。敵の包囲艦隊は駆逐艦が中心。接近しすぎなければ、砲撃も魚雷攻撃も恐れるに足りない!」


 ドーソンは≪雀鷹≫の操艦をしながら、砲撃担当のコリィが撃ちやすいようにも気を付けた軌道を心掛ける。

 護衛戦艦の方も、装甲と砲撃とで敵を牽制していく。

 こうした2隻の活躍があり、人工知能艦隊への敵からの攻撃圧力が弱まった。

 人工知能艦隊の生存性が高まったことが作用したのか、海賊船の脱出も早まり、とうとう最後の1隻が包囲網の外へと出た。

 その瞬間を、ドーソンは見逃さなかった。


「全速力でこの宙域から撤退するぞ! 人工知能艦隊と護衛戦艦と合流して、一塊になって包囲を抜ける!」


 ドーソンは通信で集合場所と隊列の指示を出しながら、≪雀鷹≫に最大速を出させる。

 程なくして人工知能艦隊と護衛戦艦と合流し、ドーソンは隊列を組んで包囲を突破していく。

 敵味方で激しい砲撃戦が行われ、戦闘時間自体は1分もなかっただろうが、双方にそれなりの被害が出た。


「被害報告だ! どれだけやられた!?」


 ドーソンが包囲を突破し、そして逃走を続けながら問いかける。

 ヒトカネ、ベーラ、キワカの順で報告が入る。


「≪雀鷹≫は装甲を焙られただけで、被害らしい被害はない」

「海賊船は、隊列を外れた人以外は、ほぼ全員が無事だね~。それぞれ個々人でTRへ向けて移動しているね~」

「味方艦の内、大破判定の後に証拠隠滅に自爆した艦が5隻。中破判定で曳航中の艦が3隻。小破は人工知能艦隊のほぼ全部です。護衛戦艦は、装甲の熱剥離がある以外は健全なようです」

「疲労困憊もいいところだな」


 エイダが無茶な事をしなければ、人工知能艦隊の被害はもっと少なくできただろう。

 しかしその代わりに、海賊船に多数の被害が出ていたことは間違いない。

 被害の数という点だけを考えれば、エイダの判断は間違いじゃない。それこそ人工知能艦が5隻沈んだだけで被害が済んでいるのだから。

 ドーソンが納得できない気分でいるのは、自分の艦隊の被害が出たという一点――もしくは、味方の人工知能の数の保全を優先するのか、それとも海賊という人間の命を優先するのか、という問題でしかない。

 ドーソンは本心では自分の艦隊の被害を出したくなかったとは思いつつも、冷静な思考の中では生き伸びさせてやった海賊たちの活用法を見出していた。


「あー、くそ。当初の目的は果たしているんだ。良しとするしかない」


 ドーソンはあえて言葉に出して気持ちに区切りをつけると、自分の艦隊を引き連れてTRの宙域へと向けて最大速で逃げることにしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読み応えのある文章量をほぼ毎日投稿お疲れ様です [気になる点] 前々から誤字はあったけどチキンボール防衛戦辺りから目立つ誤字が増えてきた [一言] 逃げたいのなら着いてこいっていうドーソン…
[良い点] うーん、海賊であろうと「人の生存確率を上げる」>「人工知能体を失う」という原則が行動指針ににあるのかねぇ。 [気になる点] > 弾幕は容易なよ。 流れからすると「弾幕はケチるなよ。」が正し…
[気になる点] エイダはともかく、キワカは軍人なのに何故静かに命令に従わないんだ… 戦闘中にいちいち説明しなきゃいけないドーソンのストレスヤバそう。小説としては行動の意味を説明するパートなんだろうけど…
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