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第22話 北の山でアダマンタイトドラゴンと闘う

 俺達は長い時間をかけて、北の山までたどり着いた。何せ逆方向に位置する山なのだ。


 たどり着いた時、俺達に襲い掛かってきたのは猛烈な吹雪であった。北の山は先ほどまでいた南の火山とは正反対であった。北の山は雪山だったのである。


「南の火山は暑くて嫌だけど……こうも寒いのも嫌だな」


 俺は身体を震わせる。少しでも体温を上げようと、自分で自分の身体を擦りまくった。


「大丈夫ですか……今、温めて差し上げます」


 リノアが駆け寄ってきた。


「え? 温めるってどういう……」


温めるという言葉に一瞬、期待してしまった。リノアは一体、どんな温め方を俺にしてくるつもりなのか。まさか、温かい手で俺の凍える手を握って温めてくれるとでも言うのであろうか……。だが、現実は予想とは大きく異なっていた。


炎魔法(フレイム)


 リノアは俺の身体を炎魔法(フレイム)で直接炙ってきたのだ。


「あっ、あぢぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 俺は絶叫した。雪山に響き渡る程、大きな声で。炙るのはいいが、火加減が強すぎたのだ。


「も、申し訳ございません、グラン様! 火加減が強すぎましたか!」


 リノアは慌てて俺の火傷を回復魔法(ヒーリング)で癒す。


「……全く、気を付けてくれよ。MPだって無駄に使いすぎるとなくなってしまうぞ。魔法を使えるリソースは有限なんだ」


「わ、わかっております……。次からは慎重に使います」


「それで、目的のドラゴンはどこにいるんだ?」


 俺はリディアに聞いた。


「この辺りに生息しているとは聞いていますが……」


 ――と、その時であった。


 ドスン! ドスン! ドスン! ドスン! ドスン! ドスン!

 ドスン! ドスン! ドスン! ドスン! ドスン! ドスン!

 ドスン! ドスン! ドスン! ドスン! ドスン! ドスン!


 巨大な足音が聞こえてきた。


 吹雪などもビクともせずに闊歩する、巨大なドラゴンの姿が見えた。ただ、普通のドラゴンではない。前回闘った火竜(レッドドラゴン)の方が一般的なドラゴンという印象だった。

 対するこのドラゴンは全身が金属で包まれており、輝かしい光を放っていた。


 火竜とは異なり、鱗がアダマンタイトで出来ているからだろう。


「あれが、私達の標的(ターゲット)のアダマンタイトドラゴンです」


 リディアは指を指す。


「そうか、あいつを倒せばいいんだな」


 アダマンタイトドラゴンは歩みを止めた。どうやら俺達の事を認識したようだ。


 ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 アダマンタイトドラゴンの叫び声が響き渡る。この北の雪山の全体まで響き渡りそうな、大きな叫び声であった。


「ううっ!」


 鼓膜が痛い。鼓膜が割れてしまいそうだ。アダマンタイトドラゴンは火竜(レッドドラゴン)と異なり、息吹(ブレス)攻撃の類はしてこないようだった。猛然と突っ込んでくる。己の身ひとつで闘う、まるで格闘家のようなドラゴンであった。


上級火炎魔法(ハイフレイム)!」


 リノアは火炎魔法(フレイム)の上級版である、上級火炎魔法(ハイフレイム)を放った。火炎魔法(フレイム)よりも凄まじい、紅蓮の炎がアダマンタイトドラゴンを襲う。


 だが、アダマンタイトドラゴンの鱗は平然とその攻撃に耐えきった。


「なっ!?」


 リノアは面を食らう。アダマンタイトドラゴンはお返しとばかりに、その硬質な尻尾で攻撃をしてくる。テイルアタックだ。猛烈な勢いで尻尾が飛んでくるのだ。


「避けろ! リノア!」


 俺はリノアを押し倒す。リノアは硬直して動けないようだった。


 ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


幸い、テイルアタックは空振りをしたが、凄まじい衝撃音が発生し、粉雪が舞い散るのであった。

 間違いない……食らったら大ダメージだ。即死しかねない。


「……私の魔法攻撃が効かないなんて、打つ手がないじゃないですか……」


 リノアは嘆いた。


「そんなことはない! リノア! 俺達が闘った岩男(ロックマン)を覚えているだろう!? あいつと同じ要領だ。硬いのは結局表面だけなんだ。中身は柔らかいんだ。だから、外殻を何とかできれば、手の打ちようはあるんだよ!」


「そ、そうですか……で、でもどうやってあんな硬い、アダマンタイトの外殻を打ち破るというんですか……」


「リノアがスキルを進化させたように、俺も進化できたんだ……だからきっと、今の俺の『ビルドハンマー』ならあいつの外殻にヒビを入れる事くらい、できるはずだ」


 俺は立ち上がり、【建築(ビルド)】スキルを発動させる。作り出したのは勿論、『ビルドハンマー』だ。木製の時はヒビすら入れられなかっただろうが、ミスリル製へと進化した今の『ビルドハンマー』なら、アダマンタイトドラゴンの外殻にヒビを入れる事くらい、できるはずだ。


「いくぞ! アダマンタイトドラゴン!」


 俺は『ビルドハンマー』を構え、猛然とアダマンタイトドラゴンに襲い掛かった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 アダマンタイトドラゴンは尻尾を使って迎撃してくる。先ほど見せたテイルアタックだ。


 だが、俺は既に読めていた。俺は天高く跳び、その攻撃を避けたのだ。


「くらえっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 そして体重を乗せ、思いっきり、アダマンタイトドラゴンの脳天に『ビルドハンマー』をぶちかました。


 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 良いのが入ったからか、アダマンタイトドラゴンは悲鳴を上げて、崩れ落ちた。間違いなく、アダマンタイトドラゴンの額にヒビを入れる事ができた。そして、隙も作る事ができたのだ。


「今だ! リノア!」


 俺は言い放つ。


「はい、グラン様! グラン様が作ってくださった好機(チャンス)、最大限に生かしてみせますっ!」


 リノアは魔法攻撃を放つ。先ほどと同じ魔法だった。


上級火炎魔法(ハイ・フレイム)!」


 先ほどと同じように、紅蓮の炎がアダマンタイトドラゴンを襲う。先ほどと同じ攻撃ではあったが、結果は大きく違っていた。アダマンタイトドラゴンが悲鳴をあげたのだ。


 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 長い、断末魔のような悲鳴をアダマンタイトドラゴンは上げた。そして果てるのであった。


「やりました! グラン様……」


「ああ……何とかなった。これもリノアのおかげだよ」

 

 はぁ……はぁ……。俺は息を切らせる。動いたからか、不思議と極寒の山にいるにも関わらず、体温は上がっていた。あまり暑くは感じなかったのだ。


 アダマンタイトドラゴンは煌びやかな光を放ちながら、塵のように消えていった。


 それと代わるようにして、アダマンタイトドラゴンはアイテムをドロップする。


 俺達はアダマンタイトドラゴンからドロップしたアイテムを入手するのであった。

======================================

入手アイテム


アイテム名。アダマンタイトの塊×1。ミスリル、オリハルコンよりも硬質で貴重な金属。その貴重さは伝説級と言ってもいい。市場では非常に高価な値段で取引されている。強力な武器、装備、装飾品の材料として利用される事が多い。


======================================


 俺達はアダマンタイトの塊をアイテムポーチに入れた。


「これで砲台の砲台部分の素材が手に入った……そして砲弾の素材となる火竜(レッドドラゴン)の鱗を手に入れた……これで砲台を作る準備としては万全だ」

 

 俺はそう言った。


「ええ……そうですね」


「とにかく、帰ろうか……ここはあまりに寒い……いつまでもいると凍死してしまいそうだ」


 俺達は目的を達成した喜びも束の間にして、北の辺境にある自分達の家に帰っていくのであった。





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