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第12話 人間の国アークライト

 俺達は森を抜け、人間の国であるアークライトを目指した。そしてやっとの事でたどり着いたのである。


 俺達はボロ切れを被り、身分を隠していた。


「グラン様……私達はなぜこのような恰好をしているのでしょうか?」


「理由は二つあるんだ。リノアはエルフだろ? エルフは珍しいから一目を引く、バレると問題が起こるかもしれない。エルフは奴隷としての商品価値が高いんだ……だから奴隷商に売りつける為、ゴロツキ達が君を誘拐するかもしれない」


「ど、奴隷にする為に……ゆ、誘拐ですか……それは嫌ですね」


 リノアは顔を真っ青にしていた。奴隷としてコキ使われている自分を想像して嫌気が差したのだろう。


「それともう一つ……俺は実家を追われ、国外に追放されたんだ。それがまた舞い戻ってきとなると何かと都合が悪い。俺だとわかると、もしかしたらつまみ出された再び国に入る事はできないかもしれない」


「な、なるほど……そういう理由があってこんな格好をしているのですか」


「それじゃあ、行こうか……何、派手な事しなけりゃバレやしないよ」


 こうして俺達は人間の国であるアークライトに潜入したのである。


 ◇

 

「凄い大勢の人です……人間とはこんなに多くの数がいるのですか」


 リノアは驚いていた。国の中に入ると、そこには大勢の人間がいたからだ。


「リノアはこれだけ多くの人間を見るのは初めてかい?」


「は、はい……初めてです。そもそも人間を初めて見たのが、グラン様とお会いした時ですから。私は長い年月をエルフの国で過ごしていました。ですからエルフ以外の種族を見る事自体が滅多になかったのです……」


 リノアは大勢の人間を物珍しそうに見ていた。

 

 そうか……エルフは少産の種族として広く知られている。だからエルフの国と言っても、人間の国程多くの数がいるわけではないのだろう。だからリノアにとってはこれだけの多くの群衆を見るのがそもそもとして初めての経験なのかもしれない。


 彼女にとっては目の前に映る光景の全てが新鮮なのかもしれない。


「よし……それじゃあ、とりあえずはミスリル鋼をお金に変えて、買い物をしようか」


 とりあえずは服から買おう。そして次に食糧……それから生活に役立ちそうな家財道具だ。


「はい! そうしましょう!」


 俺達はとりあえずはミスリル鋼を売り、お金に換える事にした。


 ◇


「らっしゃい……ここは古物商店だよ」


 頭のハゲた中年男性が俺達を出迎える。この店の店主であろう。


 俺達が行ったのは古物商店だった。古物商店と言っているが、別に古物だけを取り扱っているわけではない。装備品や装飾品、貴金属の類を何でも買い取り、販売している。割と何でも買い取り、そして売る……リサイクルショップのようなものであった。


「旦那……本日はどのようなご用件で」


「こいつを買い取って貰いたい……」


 ドン。


 俺はミスリル鋼を置いた。


「ほう……こいつは見事なミスリル鋼じゃないですか。ミスリル鋼でこのサイズなら金貨10枚でお引き取りできますが、いかがでしょうか?」


 装備品や装飾品、魔道具(アーティファクト)。あるいはアンティークに比べて、金や銀などの貴金属類は相場というのが大体決まっている。ミスリルもまた、貴金属の仲間だ。査定にかかる時間は装備品類に比べたら微々たるものである。


 その場で大体の金額がわかるものだ。店主はすぐに値段を提示してきた。


「その金額で構いません」


「まいど……すぐに用意させてもらいますぜ。ほら、金貨10枚だ。数に間違いはねぇな?」


 店主はカウンターに金貨10枚を置いた。俺は数える。


「ええ……問題ないです」


「それじゃあ、これで買い取り成立だ。こいつは貰っていくぜ」


 俺は枚数を確認した後、金貨を袋に入れる。

 

「他に何か用はあるかい? 旦那」


「いえ、もう大丈夫です……それじゃあ、金も手に入ったし、次は服屋に行こうか、リノア」


「は、はい! グラン様!」


 こうして金を得た俺達は古物商店から服屋へと移動するのであった。


 ◇


「いらっしゃいませ! アークライトの服屋へようこそ」


 店員が出迎える。女性の定員だった。快活な声が店内に響き渡る。服屋だけあって、様々な服が並んでいた。


「うわー! 服がいっぱいです!」

 

 服屋に入ったリノアのテンションは明らかに上がっていた。やはりエルフでも人間でも、女性というのは生まれつき美に対する関心が高い。美に関するものといえば化粧などもありうるが、主には洋服である。人間でもエルフでも着ている服によって、その印象は大きく変わってくる。


 リノアのような美しく、そして高貴なエルフにはボロ切れのような服は相応しくなかった。逃亡の際、命からがらで逃げてきたので致し方ないともいえるが……。


「どのような服をお探しでしょうか?」


「いえ……自分達で探しますので。更衣室はどこですか?」


「あちらにあります」


 店員に接客されて、リノアがエルフだとバレると何かと問題だ。服は俺が見繕う事にした。


「あそこに更衣室があるんだ……そこで服を選ぼう」


 俺達は更衣室へと移動した。


 ◇


「それじゃあ、リノア。この服に更衣室で着替えてくれ」


 俺は適当に服を選んだ。美しいリノアであるならば何を着ても似合う事だろう。


「わ、わかりました……」


 リノアが着替えをする。カーテンの先にリノアが着替えているかと思うと、なんだか俺もそわそわとしてきた……。想像してはいけない事まで想像してみたくなる。

 卑猥な想像をしないように、極力自制した。

 

 しばらくして、リノアは着替え終わったようだ。カーテンが開かれる。


「グラン様……いかがでしょうか?」


 綺麗なスカートをして、女性らしいまともな恰好になったリノアの姿があった。


「ああ……いいよ。リノア。良く似合ってるよ。他の服も見るか?」


「いえ……この服でいいです。前のようなボロボロの服よりは大分マシですから」


「そうだな……後、それは室内用にしよう。スカートではあまり、屋外で活動するには好ましくないんだ。屋外用にもっとラフに動ける服を一着買おうか」


「は、はい……わかりました」


 こうして俺達は服を購入した。俺用の服が2着。そしてリノア用の服が2着。合計4着の服を購入した。


 お代を金貨一枚支払い、俺達は服屋を後にしたのである。ちなみに購入した服はすぐに着る事にして、前の服は捨てた。既にボロボロだったので用済みだったのだ。


「ありがとうございました! またのご来店をお待ちしております!」


 出る際にも店員の快活な声が響き渡った。


 そして服屋から出た時、俺は思わぬ相手と遭遇する事になる。そう、義弟であるヘイトと遭遇するという、不幸な出来事が襲ってくるのであった。



 ◇


「グラン様……次はどうするんですか?」


 服屋を出た時、リノアがそう尋ねてくる。


「そうだな……市場で食糧でも調達しつつ、ぶらりと観光をして、それから北の辺境に戻ろうか」


 この国において俺達はいわば招かれざる客だ。長居すれば何かと厄介事(トラブル)に巻き込まれかねない。


 ――しかし、時既に遅かったようだ。俺と義弟ヘイトは思わぬ再会を果たす事とある。





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