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士獅十六国物語 〜“黒”の転生者狩り〜  作者: ホラナカチリ
⑥【閃きのカスケード】

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⑥ー14第二話「強いぞ!電磁マン」

14 第二話「強いぞ!電磁マン」


 ハスタ城、地下、魔術構堂。

初級の魔術書を指でなぞりながら、順に魔術を顕現させてみせる。手のひらに生じた光がくるくると変わっていく様は、なかなかに面白い。概ね想像通りの動きをしてくれる。いや、魔術の方がどういう形が正解かわからないだけで、自分の理想通りにすべての魔術を動かせている。

 「素晴らしい。初級魔術の基礎は素養としてあるようですね」

 バレットが軽く手を叩きながら褒めてくれる。

 「それでは私からは少し実践的な魔術についてご説明させていただきましょう」

 基本的な魔術については、バレットが教えるまでもなく、教本を読むだけで顕現できたので、今日はすぐに実践の訓練に入るようだ。

 その方がこちらとしてもありがたい。

 「我が国、ハスタ国のにおいて、騎士団入隊のために必須となっている基本的な魔術要項がございます。“雷閂(ライセン)”これは相手の魔術に当てがうことで、その効果を無効化するという魔術です。打ち消し術や、相互相殺の術と言う呼称をする国もあるようですが。公用語のライセンスの語源の語源にもなったとか」

 確かにそのような記述が用意してもらった魔術書の中にも散見された。

 「ではなぜ第一に身に付けるべきは雷閂なのかと言うお話をさせていただきましょう。これは、主に我々の敵である魔族への防衛術であるからです。魔族は体内に魔力を内在し、それを体に流し、身体器官の一部として魔術を扱います。魔術具、魔具によって魔術を制御する我々人族とは、決定的に魔術との関わり方が違うのです。よって多くの場合、魔族の方が魔術の扱いに長けている。敵となる魔族の魔術を受け止める、あるいは受け流す手段を持ち合わせなければ、戦場に立つことすらできない。不意の攻撃、とっさの防御防衛のために、まずは雷閂を身に付けることによって、こちらの魔具を用いた魔術を打ち込むタイミングを見極めるのです」

 「わかった。詠唱の文言はどこにも書いていなかったんだ」

 「閉口の言、沈黙の意。詠唱はありません。扱いうる限りの魔力を滞留し、相手の放つ魔術、その権限を調伏し相殺する。相手方の魔術ありきのものです」

 そう言いながら、バレットは腰から杖を抜き、体の真正面で、垂直に立てる。木製のそこまで強度のある武器には見えない。光に反射してようやく見えるようになる宙を舞う埃のような薄白い輝きが杖を包んでいるようだった。

 「何か攻撃の魔術を、と。デンジ様の勇者の魔術を受けるのはさすがにまずいですね。聖騎士様お手伝いいただきましょう」

 そう言うと僕らがいるこの魔術場の天井、ガラス張りの一階、入り口付近に立った白い装束の護衛の男に、バレットは、左手の人差し指を立てて合図を送る。

その意図を察したのか、聖騎士ジェイル・ジャケットは肩にかけていた長い銃の銃口こちらへ向ける。それに向けて、バレットは杖を左右に振ってみせ、当てろと言うジェスチャーを送っている。かなり距離がある。杖とバレット自身との距離も腕一本分。何より、その数歩先にはデンジがいる。甲高い独特の破裂音と共に銃から発せられた魔術がものすごい速さで杖に命中する。自身の想像から木製の杖は折れたと思ったが、若干の煙を上げながら、杖は無事のままだ。

 「この通り。と言っても、聖騎士様にはむろん手加減していただきましたが。相手の放った魔術を相殺するだけの潜在的魔術使用のキャパシティがこちらにあれば、相手の魔術を受け止めることができる。これが対魔族、あるいは対人戦闘における防衛スキルの第一になります」

 「わかった、やってみる」

 両手を広げ、そこから魔術を展開する。光が周囲に十分に滞留したところで、片手を顔の前、その手から生じる発光する魔術が全身を包み込む、隈無く光に覆われ、光の人となったデンジは聖騎士に向けて合図を送る。

 バレットは多少困惑し、止めようかと聖騎士の方を見上げるが、ジェイルは既に魔術を装填している。

 「見せてもらおうか。君のギフト」

 甲高い発砲音が鳴る。発された魔術弾は、先ほどバレットの杖に当てたものよりも、小ぶりで、なおかつ狙ったのはデンジが突き出した右手のひら。射線上に体が入らないようにと配慮したものであった。魔術弾は、デンジ光る手に吸い込まれるように命中すると、一瞬、紫色を帯びた小規模な雷が生じ、消えた。しかしその紫電は、そのまま全身に広がる。先の一発で、完全に容量をつかんだデンジの姿は、発光体から、全身に雷閂をまとう姿へと変化した。

発光するデンジの表情は見えないが、立ち姿から自信がみなぎっていることがわかる。さらに左手を高く掲げ、聖騎士ジェイルに次の攻撃を所望する。

 発砲音が連続し、それを覆い隠すようにバリバリと雷鳴がこの地下の巨大空洞の内部に響く。


 「どうですか、状況は」

 ハスタ城上階の高見台にて、勇者の鍛錬を終えたジェイル・ジャケットが、警戒にあたるもう一人の聖騎士トゥルフ・クトゥル・クフセンに声をかける。

 トゥルフは長い杖の神器を肩にかけうずくまっているように見えるが、空に飛ばす無数の魔術鳥により、実際にはずっと広い視界を見ている。ジェイルは神器による射撃で、他の魔術師の追随を許さぬほどの遠距離攻撃が可能ではあるが、このトゥルフに対してだけは、射程限界から狙いをつけるだけでも、見られているような悪寒に襲われる。

 「情勢は変わらなんだ。転生者狩り、くだんの者がハスタ国に入るようなことがあれば、すぐにこちらが気づくようになっている。他の聖騎士たちはトリトン・ハスタを捕まえるには至っていない。複数名の聖騎士を使っても、彼の痕跡すら見つけられないと言う事はすなわち、それが一つの答えなのかもしれない」

 「人界にはいない。魔界にいると?」

 人界四天王としての実力と三本もの神器。これがあれば、魔界での短期の活動も可能ではあろうが。目的はなんだ。

 「転生者の心はどうだ」

 「私の魔術弾では、概ね彼の雷閂が突破できないようだ。勇者のギフトはやはりスケールが違う」

 「聖騎士の内では、その魔術が一番近いだろう。圧倒的な魔力量で放たれる光線の魔術。あの魔王にも至る道筋だ」

 「教育係になれというような指示は受けていない。我々二人で彼の護衛だ。聖騎士が二人で動くなど、(トリトン)を取り逃した罰に相応しい不名誉だ。自分より順位も上の大先輩と」

 「鳥もいつか風に食いつぶされて死ぬだろう。順位など、魔術鳥の伝書のためにふった数字に他ならない。気にする事は無い。十位ジェイル・ジャケット。最も遠い場所から教王様をお守りするんだ」


 メモ。魔術について。

 魔術の始まりは、祈り、あるいは強い願望。抽象的だが、欲望欲求など根源的な感情の素。それを魔術として顕現するために詠唱がある。根源的な感情の元素を言語化し、組み上げ、より強固のものとする。その過程を魔術構文と呼称している。根源的な感情と、それを言語化した魔術構文。その結果、魔術が顕現する。

 というか、

 勇者、転生者の“ギフト”は、それよりももっとシンプルな機能として存在しているように思える。使えばその結果だけが顕現する。例えば、僕が雷閂を使う時、その思いの強さによって効果が変わるような様子は今のところない。あるいは魔術弾を作り、それを放つ時にも同じように思う。魔術構文?いやそれはどうかな。ギフトがあり、その解像度が変われば結果にも影響される。この辺りの誤差は課題だ。

 先の勇者は、十三年かかって魔王を討伐したらしい。十三年だ。そして今はもういない。その長い時間と、その割に痕跡のなさに、何か意味があるのだろうか。

 地下魔術場は、たった数週間でその様相を大きく変えていた。大規模な工場のような機械音や魔具を魔具で削る火花があちらこちらで上がっている。金属を削るその熱が、すり鉢状の地下に反響している。

 「なんです。この小さいもの達は」

 色々と魔具を作るからと材料を手配したバレットではあったが、これだけの作業が現行していることに驚いている。そして何よりもその作業をしているのが手のひら大の小さい魔具たちなのであった。小さいながら、その手足で懸命に作業に当たっている。

 「“ナンデンカンデン”と名付けました。僕のギフトで一体一体つながっていて、リアルタイムで指示通りにイメージするものを組み上げてくれます。小さいものは小さいものを作り、寄り集まってより大きなものを作る。これで大型の魔獣に対応する、巨大な魔具を作る。僕がいないときに、僕の離れた場所にいても、僕の正義を実行し、皆を守る。そんな魔具が必要なんです。そして、」

 突如、壁に備え付けられた警報が、一瞬、物々しい音を立て、警告の赤い光を場内にちつかせる。しばらくすると光も収まる。

 「敵が現れたら鳴るように作った警戒アラートなんですが、誤作動なのかしょっちゅう鳴ってはしばらくすると勝手に消えるんです。さすがにうるさいので、音はすぐ切れるようにしました。何にせよ、早く現場に駆けつけられる移動手段を作らないと」

 すごい速さで今まさに進行するデンジの計画に面くらって閉口していたバレットだったが、最後に一言申し伝えた。

 「どうかお一人で行動なさらずに」

 それは自らが仕えていたハスタ王族家の“消えた”主君を憂いての言葉だった。



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