⑥ー13第一話「登場!電磁マン」
13 第一話「登場!電磁マン」
まばゆい光の中で浮遊感に包まれる。体が光に溶け出していくようで、視界や精神の方ははっきりと覚醒していく。ゆっくりと降りて、落ちていく。ただ白く、何もない場面眼下に広がる。その中心に忽然と立ち現れる少女がこちらを見ている。ただ見ていた。儚げな少女がこちらに向ける視線の意味を考える。少女は何を考えているのか、僕にはわからない。そのまま、その場を通過してさらに降下していく。少女は何者だったのか。
気がつくと、僕を包んでいた光は足元の地面に収束していった。言語と記号で構成された魔法陣は、僕が確かに自分の体と地面の温度を認識すると、光を失った。周囲には独特のマントかぶった、怪しげな集団がこちらを見ている。
「勇者様ようこそいらっしゃいました」
そのうちの一人が歩みより、膝をつき、僕に手を差し伸べた。意味のわからない状況にもかかわらず、なんとなく自分の状況は理解できている。言葉もわかる。僕はこの世界にやってきたのだ。誰かに呼ばれて、この世界にやってきた。僕を呼んだのは、この人たちか。見ず知らずの大人たちに囲まれているのに、まるで恐怖を感じない。むしろ体は自信に満ちている。そしてこの世界に降りてたときに、与えられたギフトなる力もことも認識している。そうかギフトがあって、力を持って、だから、この人たちの事は怖くないのか、それがわかると抑えようにも笑みがこぼれた。
「勇者…か」
「勇者様、どうぞお名前を聞かせください」
「タツミデンジ、タツミデンジだ」
用意された、湯船につかりながら自分の体を確認する。ここに来る前の自分の体そのものである。しかしなぜだろう、確かな自分の存在の実感と言うのか、気分が良い。やはりここに来たときにもらったギフトとか言うものの力があるおかげだろうか。
まずはこの力の使い方を学ばなければ。手のひらから激しい光が生じ、弾けて大きな音が浴室内に響いた。
「いかがなさいましたか」
女中が慌てて飛び込んでくる。
驚いて心臓がドキドキする。激しく脈打って血が全身を巡る。
続いて、今度はその光で全身を包んでみる。興奮状態に見知らぬ世界に来た不安など無いに等しい。楽しい。
「大丈夫、大丈夫です。大丈夫なんだ、僕は」
自分の理想を貫く強さが、今の僕にはある。
「改めましてご挨拶させていただきます。私は執事としてハスタ国王族に使えさせていただいております。バレットと申します」
身なりの良い初老の紳士に案内されて城内を歩く。一階の大広間の床はガラス張りになっていて、その下に先程、転生召喚の儀式を行った場所が透けて見える。怪しげな装束身にまとった者たちが、まだ何か作業をしているようだ。地下一階から四、五階ほどの深さがすり鉢状に吹き抜けになっており、その底が特殊な魔術儀式の場になっているとの説明だった。その周りを螺旋状に囲む階段と、規則的に無機質なドアが並んでいる。元は騎士団の宿舎との事だったが、今は使うものがいないらしく、やけに静かで生活音も聞こえてこない。
手前の部屋に案内される。
その内側も質素だが、ストックされた日用品は、装飾の施された品の良いものが取り揃えられている。
「私は王族の魔術教育も担当しておりました。デンジ様には、私が直接この世界の魔術と魔具の扱いをお伝えさせていただきます」
「わかった。でも自分でもある程度は調べておきたいから、魔術書?のようなものをできるだけ集めて欲しい」
机の上に置かれた本を一冊手に取り、パラパラとめくる。文字は読める。問題なさそうだ。
「かしこまりました」
そう言って、バレットが去ると、僕はすぐに部屋の扉の鍵を閉じた。
机に向かい、ペンを取る。
メモ。完全なる正義が、すべからく実現されれば、世界は平和である




