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士獅十六国物語 〜“黒”の転生者狩り〜  作者: ホラナカチリ
⑤【重なる声と灯火】

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⑤ー5コロニー

5 コロニー


 「あ、光った」

 「ひと雨来ますかね」

 艦橋へ向かう途中、一緒になったトバリと窓の外を見る。あるのは曇天の雲ばかり。

 「どうぞ」

 ひと足先にトバリが扉を開けて僕を促す。

 「ごめん、ありがとう」


 舵のある、飛行船中央前方の広い部屋に、乗組員全員が集まった。

 魔族の双子、エミス、フェリオ。

 メイド(服)のトバリ。

 魔王の娘、ヨル。

 ネグロ第一商会。シャッツ、シーラ、ゼン。

 アズマの医者、船医(氏名不詳・匿名希望)

 ラクス国騎士団員、イエン・イエン。

 前方の窓の外から、飛行船を引く飛竜、サンドドラゴンが振り返ってチラリと船内を覗いた。

 あと、元人界四天王、トリトン・ハスタ(欠席)


 出身国のバラバラなメンバーが集まったものだ。それに目的も。みんながまとまれるような目標を、提示しなければならない。んだと思う。

 むづかしい…。

 (「うだうだ言ってんな!大将がドカンと構えねぇでどうする」)

 「…そういうんじゃないよ、僕は」

 怒鳴り立てるウルフに、小声で反論する。しかしまあ、少しだけ背中を押されたようにも思えなくもない。うるさいけど。

 「みんな、いいかな」

 全員の視線が集まる。覚悟を決めないとな。

 「次の目的地は、ディケにしようと思う。それぞれ違った思いで乗り合わせたわけだけど、乗り込んだ以上は、無事、目的地に着くまで協力してほしい」

 沈黙。誰か何か言って。

 (「ビビるな!」)

 うるさ。

 シャッツが手を挙げる。

 「異議なしです。違った思いっていうのは、なんか、引っかかりますけどね」

 シャッツありがとう。まだちょっと怒ってるけど。

 「それじゃあ、ディケについて、みんなが知っている情報を出し合わない?」

 

 ディケ。

 人界の最果て、魔界の始まり。

 かつての火山群が連立し、大地は険しく隆起する。

 その魔障を帯びた大地を、魔獣達が駆ける。


 魔族との戦いにおいて、人界側が魔界にアプローチ可能だったのが、このディケとフーモの二箇所であった。それ故に戦地となった。

 魔王討伐後も、人界軍の一部が駐留し、人族居住の誘致活動を行っているという。

 荒れた大地に、居住可能な場所が幾つか点在する。それが「コロニー」と呼ばれる活動を終えた火山の火口に造られた街だ。

 夜になると魔界側から雪崩れ込んでくる魔獣達も、火口にあるこのコロニーまでは登ってこないそうだ。


 「現在居住可能なコロニーは六つ。その全てを人界軍の統治下に置く計画だが、今現在どこまで計画が進んでいるのかは知らん」

 イエンは人界軍の動きに詳しかった。彼がその情報を惜しげなく僕らに開示してくれるのは意外だったが。今すぐに僕らに対して何か敵対するような態度を取るつもりはないらしいことがわかってよかった。

 「そのことなんですが、」

 シーラが手をあげる。

 「ディケを人族の住む国にするために必要な物資を、ネグロ第一商会が、人界軍に供給しています。なので、そのラインから情報が得られるかもしれません」

 「ディケに商会の人がいるのか」

 「たぶん」

 「到着し次第、本国にも連絡を取ります」

 立ったまま壁にもたれかかったゼンが一言発した。

 「あまりムートさんやオーロに頼ってばかりじゃいけないけど、連絡については任せるよ。あとは、六つあるコロニーのどこに降りるかだね」

 「お尋ね者になっていれば、人界軍に出会した途端、逮捕かな」

 船医が物騒な事を言う。いや、確かにそうなる可能性もあるので、できれば騎士には出会したくない。

 「そしたら…、どこに船をつけるかは、まだ到着まで時間もあるし、様子を見ながら決めると言うことで、えっと、本日は解散で。また何か思いついたことがあったら、いつでも言ってください」

 (「日和ったな」)

 そうだよ。嫌われたら嫌だもん。僕ディケのことなんて全然知らなかったし、初めて聞く情報ばかりで、正直追いついてないよ。


 「ふぅ」

 ゾロゾロと皆が部屋から出て行く中、エミスとフェリオが座るソファの真ん中に腰掛ける。

 「お疲れー」

 「お疲れ」

 「…。」

 エミスは黙っている。最近口数が減ったようにも思える。

 「エミス元気?」

 「ふん」

 エミスは鼻にグッと力を入れた顔を返してくる。機嫌が悪くはなさそうだ。

 「なになにー、エミはアルがリーダーしてるの嫉妬してるのー?」

 「そうなの?」

 「違う」

 エミスは手元の本を開いて、しおりの挟まったページから再開しようとする。最近、船医の勧める本を読んだり読まなかったりしているようだった。

 「何さ」

 「知らん」

 「人見知りちゃんかな〜?」

 「違う!」

 すぼめた口の下唇を前に出すという謎の表情。エミスは本を置いてこちらに向き直った。

 「アル!」

 「ん。はい。何でしょうか」 

 「…がんばれよ」

 「う、うん。何で?」

 「何でもない。それだけだ」

 「うん?」

 フェリオに視線をやると、ふざけた顔で両手をあげている。

 なんかいまいちコミュニケーションが取れているようないないような。でもこの感じが心地よかった。人が増えても、やっぱりこの場所は落ち着ける居場所のままだ。

 「えっと、解散で!」

 「えっと、えっとー?」

 「いじらないでくれるかな?」

 双子をソファのヘリに、くすぐりで追いやる。


 飛行船は地図上でディケに線引きされた領空に入った。



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