表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
士獅十六国物語 〜“黒”の転生者狩り〜  作者: ホラナカチリ
⑤【重なる声と灯火】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/136

⑤ー3声

3 声


 廊下に出て、ふらふらと歩き、壁に寄り掛かる。

 ここ数ヶ月の未使用期間中に、ゼンが飛行船内の改修を行なってくれていて、部屋が増えた。おかげで船内でも一人の時間が過ごせるようになっている。もう積荷でスペースを区切る必要もなくなった。

 「何をうだうだやっていやがる」

 耳元で大声で喋られているような耳鳴り。くぐもって聞き取りづらかったりする事もあるが、それは確かに意思を持って話していた。

 「ウルフ、もう少し声を抑えてくれないか」

 声の主、といっても姿はなく、あるのは手に持った不可思議な形をした魔具だけだ。ウルク。勇器ウルフとホークが重なって一つになった魔具。そのウルフの部分が話かけていると言う。

 「んだよ」

 「変に思われるだろ。それにみんなの声が聞こえづらくなるんだよ」

 「んなこと知ったことかよ」

 ウルクを手にしている間中ずっとこんな感じで悪態をつかれる。僕のことが気に入らないらしい。そして何より、この声は他のみんなには聞こえないから、僕が変になったと思われ始めている。

 「いつまでうだうだやってるんだ。いくんちか様子を見ていたが、あのねーちゃんと変な踊りを踊るくらいで、刀を握りもしねぇで。鍛錬はどうした鍛錬はっ」

 「言われなくてもわかってるよ。今はとにかく瘴気の扱いになれないと、」

 「馬鹿言ってんじゃねぇぜっ!刀をふらねぇ剣士があってたまるかよ。オメェの剣技はまるでなってねぇんだ。あんなまじないみてぇな小細工に頼ろうなんざ、片腹痛いぜ」

 「今の僕にできることだよ。剣術は、やれることはやったんだ。何も知らないお前にとやかく言われたくないね」

 「んだとおら!てめえなんざ俺が生きてりゃ叩き斬ってやったわ」

 「…大声だすなよ。ずっとこんな調子じゃないか。うるさいだけで話にならない」

 「なんもわかってねぇ小童がよく言うぜっ」


 「大丈夫かい」

 「船医さん」

 皆世話になったアズマの医者。悪い人ではなさそうなのだが、頑なに名乗らず、皆に自分のことを船医と呼ばせている。

 「トバリ女史に様子をみるように言われてね」

 「はは、おかしくなったと思われてるんですかね。魔具の声が聞こえるなんて」

 「さてどうだろう。まあ、ラクス城での戦いで、君の体に大きな負担がかかったのは事実だ。体に負担がかかれば、心にも影響がある。その逆もまた然り」

 そう言いながらも船医はペタペタと僕の顔を触って診察する。

 「異常なし。私の知る範囲ではね」

 「ありがとうございました」

 軽く頭を下げると、船医はなんてことなかったように懐から取り出した本を読み始める。

 「あぁ、そうだ。アズマにこんな言い回しがある」

 去り際に立ち止まると、船医は本を剣に見立てて構える。

 「決して錆びることのない名刀にかけて、“刀の錆”ってね。刀には、斬った者の魂の一部が付着すると言う考えだ。君に話しかけてくるのは、自分を斬った刀に怨念を持った霊の類かもな」

 「怖いんですけど…」

 「そう気に病むのはやめたまえ」

 あなたが言い出したんじゃないか。

 (「誰が悪霊じゃいっ!」)

 うるさ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ