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士獅十六国物語 〜“黒”の転生者狩り〜  作者: ホラナカチリ
④湖の城と海の島】

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④ー12水と火

④湖の城と海の島


12 水と火


 「あぁああああああああっ!」

 「どうした!アル。うわっ、こいつら何してんだ」

 船内を散策していたら、暗がりでシャに遭遇した。ひとり、いや、ふたりか。

 「…。」

 二人は黙ってじっとこちらを見つめてくる。

 「なんでしょうか。何してるんでしょうか。ちょ、エミス、聞いてみて」

 「何だアル。怖いのか?」

 「だって、なんでいつもこういきなり現れるのかな」

 奥の通路を、もう一人別のシャが通っていった。船内に何人いるんだ。

 「サラサが貸してくれるってさー」

 フェリオがひょいと顔をだす。

 「フェリオ、事前に言っといてもらえるかな」

 「ぼくもさっき聞いたんさー」

 「「喋れるの?」」


 「我らサラサ様の私設部隊、計六名。この度の任務に同行させて頂きます」

 「おー」

 「普通に喋れる人いたんだ。僕が会った人たちはひたすら詠唱だけして襲いかかってくるばっかりだったから新鮮」

 「だな」

 サラサの配下のシャ。の隊長?と思わしき彼は、礼節正しく床に膝をついて教えてくれた。

 「とはいえ、大々的に我らの関与がセイに知られるのは、サラサ様のお立場上良くない。あくまで裏方に回らせて頂きます」

 「もちー。人手があるだけありがたいよねー」

 「皆さん、そろそろご準備を」

 トバリが皆に声をかける。

 船はラクス城を捉えた。


 海風の中、甲板で弾けた波の飛沫を頬に受ける。陽は直天に上り、揺らす波は高い。

 「行こうか」

 見上げれば、ラクス城は遥か遠くの海まで監視するように、毅然とそびえ立っている。

 戻って来たのだ。なんだか複雑な気持ちだった。

 振り払うように腰のウルクを引き抜くと、魔力を込める。託された思いを、あるべき場所へ。

 「走れ、ウルク」

 ナハトムの船から、瘴気を噴出して飛び上がり、ラクス城、島内へ飛び移る。

 火を纏ったエミス。シャ達。フェリオとその魔術に連れられたショーンが続く。

 「“隠蔽”の魔術を解きます。後をお願い致します」

 「あまり怪我人をだすなよ」

 「いってらっしゃい」

 作戦らしい作戦は特にない。全員で奇襲をかけ、シャ、フェリオ、ショーンが騎士団を引きつけているうちに、僕、エミス、トバリの三人で城内を目指す。ヨルと船医は船で待機、城の船着場に紛れてやり過ごす。

 前回同様、少人数での奇襲は時間勝負だ。ラクス騎士団が出揃って囲まれれば、勝ち目はない。混乱のうちに、何としてでも転生者にたどり着く。

ナハトムの情報では、転生者は現在、主塔に拠点を移しているとの事だった。ナハトムは転生者とラプソディア・ラクスに居場所を追いやられていることを憂いていた。ラクス城内の情勢について詳しくはわからないが、今は主塔を目指すのみだ。

 島の中心部に聳え立つ、最も大きな塔。周辺には当然護衛の騎士が見える。腕に瘴気で編んだ黒布を巻きつける。

 「おいっ!遅え遅え。なぁにやってんだオメェ。こんなんじゃあ、あっちゅうまに囲われちまうぞ」

 後方からショーンのヤジが飛ぶ。

 「ド派手に行ってこい」

 爆発音に空気が震えた。思わず後ろを振り返ると、ショーンの魔具の銃口からモクモクと煙が上がっている。頭上を火の玉が通過し、ラクス城の中腹に激突、粉砕し、穴を開ける。

 「凄いけど、一気に場所が知れたね…」

 「騒がしい奴だな!」

 「急ぎましょう」

 瘴気の噴射で、ショーンが開けた穴から城内へ侵入する。エミスは身に纏った炎で軽々と二、三階付近までジャンプする。アズマの魔術は体を軽くするのだろうか。トバリは一瞬背中で黒い翼を羽ばたかせる。

 「別れようか」

 「ダメです」

 「上だ!」

 後ろを見下ろすと、この騒ぎで次々騎士達が集まってくるのが見えた。相談している時間もなさそうだ。階段に向かって走り出すエミスに続く。


 松の木の防風林。

 この場所で、フェリオ達は騎士団を引きつける。

 城に魔術を打ち込んだ男を目掛けて、騎士達が走って来る。

 「そんじゃー、みんなよろしくー」

 「了解」

 シャたちは防風林に身を隠しながら展開していく。

 「おい、どれだけ引きつけつけておけばいいんだ?」

 ショーンの問いに、フェリオは杖を引き抜きながら答えた。

 「夜までかー、死ぬまで?」

 目がマジだ。

 「こいつは腹括るようだぜ」

 ショーンは銃身を構え直して、数が限られる狙撃から、長期戦に備えて杖術の近接戦闘へ切り替えた。


 城を上階へと向かう。

 廊下の奥から数人の騎士が向かってくるのに対して、エミスが立ち止まって構えた。

 「エミス?」

 「アル、行け」

 フェリオに魔術で錬成してもらった剣に熱を帯びる。

 手に構えた一本の他に、腰にも四本ほどまだ差している。

 「お前が決めたことなら、俺はいい。それでいい。だから今は、俺がお前を護ってやる」

 「…わかった。ありがとう」

 なんて言ったらいいか、わからない。気をつけてとか、死ぬなよとか、当たり前に心から祈りすぎていて、うまく言葉に出なかった。胸のモヤモヤが、また広がる。

 少しでも早く。その為に走り出す。後ろを振り返ることはしなかったが、エミスの火の魔術が展開する熱を背中で感じた。

 「灯火はあとを引く 誓うは約束のかがり 与うは公然の節理 奪うは友なきけぶり“びくに”」

 走り来る騎士達の足音とエミスの詠唱が重なるのを後に残してゆく。


 主塔、中央階。王座の間。

 それと知らなくても、この部屋が城において重要な場所である事は、扉の豪華さと他との違いでわかる。

 「いらっしゃるようですね。彼女は私が引き受けます」

 トバリは警告とともに扉を開く。

 舞踏会が行われるような、広い空間だった。天井から壁への装飾と、大理石の床に圧倒される。そしてその中央に、彼女はいた。

 「…。」

 冷たい目でこちらを一瞥すると、ガラスを割るような、パキパキといった冷たい音を立てながら剣を抜刀した。

 「アルクさん、行きなさい。あの奥の階段から上へあがれるようです」

 トバリはスカートの裾を両手で軽く摘み上げると、中から剣の魔具を二本落とし、両手に構えた。

 疾走で一気に走り抜けようとして、首元がゾワっとした。死のイメージを明確に体感したのだ。今、ラプソディアの横を通れば、確実に斬り落とされる。

 「タイミングをあわせて」

 トバリの瘴気が、刀身から漏れでる。

 耳元で女性が叫んでいる。

 絶叫は、やたら甲高い雷鳴だった。避雷針となったラプソディアの細剣(セイケン)ラビットは、すでにトバリの肩を貫いていた。

 混乱する僕に、トバリは目で指示を出し続けていた。「行け」と。

 迷いを振り払うように、体は動き、疾走で階段まで来ると、止まることなく駆け上がる。

 「貴方を殺すわ」

 ラプソディアが剣に力を込めると、トバリは蹴りを繰り出す。一瞬現れた巨大な爪は空を切り、トバリはラプソディアの姿を探す。

 背中から胸を貫く剣を、身を捩り、急所をかわす。

 「魔獣は死ねば良い、魔族は滅びれば良い…。世界は綺麗になる」

 トバリは口から血を吐きながら、ラプソディアの剣を掴む。

 「世界など知りません。私はただ、主人を通すだけですから」

 トバリの顔に、鱗が浮かび上がる。血は焔となる。


 ラクス城、主塔、最上階。この場所が灯台になっている事は、ラクスの王族が海を統べる覚悟の現れであり、国民の誇りでもあった。

 部屋自体は先細りの最上階ということもあって、下階ほど広くはない。

 入って最初に目にとび込んできた光景は、青空を背景に、転生者・ゲントが、人の首を締め上げている所だった。唖然として見なおすと、その手に掲げられているのは一振りの剣であった。白昼の幻覚だったのだろうか。

 「君も懲りないね」

 ゲントはほとんどこちらを気にかける様子もなく、机に広げられた、何か実験器具のようなもので作業を続けた。

 「それでも、どうしても、君に伝えたいことがあるんだ」

 ゲントは手元の作業を続けている。

 近づこうとすると、左右に騎士がむくりと立ち上がり、こちらに向かってくる。気配が全くなかった。どこから現れたんだ。

 「…僕は特にないよ、話。もうそんな必要も無くなったんだ」

 ゲントは手製の魔具を摘み上げる。

 「FIREってやつかな」

 実験室で起こったボヤに、水でもかけるように、ゲントの采配で騎士達は侵入者に覆い被さった。



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