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士獅十六国物語 〜“黒”の転生者狩り〜  作者: ホラナカチリ
③【湖の城と海の島

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③ー6ステータス2

③湖の城と海の島


6 ステータス2


 ラクス城、島内の幾つもある別塔のうちの一つ。限られたメイド以外立ち入ること許されていないラプソディアの“城”。その一室で、転生の勇者ゲントの魔術習得が続いていた。

 「あまねく星の、統べる天啓。王に一つ、還るは二つ“(うつ)”」

 ゲントが前に突き出す様に構えた白剣は、刀身に走った魔術が弾けると、手を離れて後方に飛んでいってしまう。

 「『剣技』七十番代は適性がなさそうね」

 古い石造の壁が剥き出しの寒々しい部屋に似合わない、絢爛なソファに深く体を沈めたラプソディアは、手に持った魔術書をパタンと閉じた。

 ゲントは飛んでいった剣を拾いにも行かず、ラプソディアに拗ねた表情を向ける。

 「あら、そんな顔しないで。これだけ連続して魔術を試せるなんてすごい才能なのよ?」

 部屋の隅には先ほどの、細く短い白剣が何十本と溜まっていた。

 「剣技はこのくらいにしておきましょうか。私としては、(つるぎ)一つで身を守れるくらいにはなって欲しかったけれども。やはり“ギフト”を起点に組み立てて行ったほうが良さそう」

 転生から数週間。ラプソディアは、手に入る限りの魔術書を集めて、片っ端からゲントに試させ続けていた。

 「剣で戦うのは向いてないってこと?」

 ゲントは、傍に置かれた木箱から、新たに白剣を取り出す。

 「体躯の使い方の問題よ。あなたはまだ幼い。剣技はもう少し体が大きくなってからね」

 ソファから立ち上がると、ラプソディアはあやすようにゲントの頭をひと撫でする。

 「少し出てくるわ。いい子にしてるのよ」


 「ねぇ」

 天窓から差し込む光の中、ソファに寝転んだゲントが、部屋中に散らばった白剣を一つ一つ向きを揃えて拾い集めるメイドに話しかける。

 「ラプソディアは外で何してるのかな」

 「お嬢様は王にゲント様を護るように進言なさっているのです」

 メイドは手を休めずに、つとめて平坦に答えた。

 「護るか…。僕はそんなに弱いかな?」

 「…そうは思いません」

 白剣を拾い上げる手が、一瞬震えた。

 「敵もいないって言うのにさ」

 足で勢いをつけて体を起こしたゲントは、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 離れて行ったのを十分に確認すると、メイドはその手の白剣たちをやさしく撫でた。


 カツカツとヒールの音を響かせ、ラプソディアは本塔の廊下を進んで行く。城に仕える者達は路を開け、頭を下げる。彼女が過ぎ去ると、困惑した表情で互いにこの状況を憂いている。こうも連日だと、気が滅入ってくるのだ。

 広間のドアを大袈裟に開くと、ラプソディアは王である父の前に進みでた。

 「ゲントの護衛の件。考え直して頂けたでしょうか」

 ラクス王はこめかみに手を添えると、じっとラプソディアを見た。

 「…第二騎士団を」

 途中まで言って、改めて自らを顧みたのか、王は言葉に詰まる。

 それでもラプソディアには十分満足のいく答えだったようで、口角を不敵に上げると仰々しくお辞儀をした。

 「教国からの勅命だ。私の判断ではない」

 その答えに満足したのか、ラプソディアは身を翻して早々に部屋を出て行こうとする。

 「一つ問いたい。勇者殿にはお前が付けば十分だろう。なぜ今になって騎士団にこだわる」

 何を恐れている?娘の気持ちなど今まで一度も気にかけてこなかった父が、初めて娘の胸中に触れた気がした。

 「…。」

 立ち止まり、斜め後ろを見遣って何かを言おうとしたが、言葉にならず、また取り繕う気すら起きなかったので、ラプソディアは少し開いた口から言葉の代わりに息を吐くと、再びヒールの音だけを残して去っていった。



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