②ー16建国
②黒の団と舞踏
16 建国
「新生エルフ国」建国の日の夜。僕らはマルブルの誘いで、再びこの地をおとづれていた。
町の中央広場にはたくさんの飾り付けが輝き、音楽と出店と集まったエルフたちで賑わっていた。周辺の里からもエルフが集まって来ているという話だったが、それにしてもこの町にこれだけの人がいたとは。初めて来たときの閑散とした様子からは想像できなかった。
「あれなに?」
「んー。お菓子みたいだねぇー」
見たことない食べ物の数々に、ヨルは興味津々だ。フェリオの手を引いて、次々物色している。フェリオもあの様子なら大丈夫だろう。レノエルフたちとの戦いではだいぶ無理をしていたようで、ここに来るまでの数日の船旅の間もずっと寝込んでいたのだが、ライトエルフの里でヨルを迎える頃にはいつもの調子を取り戻していた。
「おーい!アルク」
雑踏を分けてレッタがこちらに向かってくる。
「なんだ、何も食べてないのか?せっかくのお祭りなんだから楽しめよ」
「マルブルさん達との話は終わったの?」
「おう。まあしばらくは大変だろうが、あいつらならなんとかするだろ」
レッタの後方の、中央の建物から、マルブルさんとマルモル、それに仲間のエルフ達が出てくるのが見えた。元は長老会の運営する学舎の学生であった彼らがこれからこの国を運営していくのだ。メンバー達は広場の賑わいを前に、真面目な顔で、それでいて楽しそうに話している。僕は自分の通った騎士学校を思い出して、規律重視の学生時代と、エルフ達の自由な空気を比べて、少し羨ましく思った。
「前に来た時は大変だったらしいな。わたしからよーく言っておいたから、もう大丈夫だぜ」
レッタは姉御風を吹かせて歯を見せてニヤリとする。悪寒がしたのか、遠くでマルブルがキョロキョロしている。
「ではお言葉に甘えましょうか、みなさん」
「よっしゃあ!」
引率の先生のようなトバリの言葉で、おのおの人混みの中に消えていく。
電飾の下、行き交うエルフ達は皆楽しそうな表情を浮かべている。ここ数ヶ月間、不安な夜を過ごしていただろう。
あの時、リューが最後にこちらを一瞥した目が忘れられず、自分のしたことが、本当に正しかったのか、意味があったのか、今でもわからずにいるが、エルフ達の表情に少し救われる。
「ありがとな」
「ん?」
「ファイトエルフの里で土砂崩れが起きた時、真っ先にエルフを助けようとしてくれただろ?」
「結局何も出来なかったけどね」
あの時は聖域からの助けがなければ甚大な被害が出ていただろう。
「エルフの為に動いてくれたことが本当に嬉しかったんだ。変わった奴だよ、お前は」
「そうかな」
レッタに改まって話されると、なんだか変な感じがした。
「おい、あれ」
少し先から、大きな声の言い合いが聞こえてきた。
「おれは騎士だ!」
「お前のような騎士がいるか!」
どうやら片方はエミスのようだ。
「まったく、何やってんだか」
レッタは渋々仲裁に入っていく。
「アルクさん」
いつの間にか後ろに立っていたトバリが、手に持った飲み物を差し出す。
「ありがとう」
「いえ」
目を逸らされた。
ここ数日、トバリが僕に対してだけそっけない気がする。聖域の中で何かあったような気もするのだが、記憶がはっきりしない。怒らせるようなことをしてしまっただろうか。
トバリの横顔を見つめて理由を考えていると、落ち着き澄ました様子で、じっとこちらを見返された。少しすねた顔をすると、少し笑ってくれた。
空で音が鳴る。見上げると花火の光が夜空に散っていた。小気味いい音が次々と上がり、この祝祭を彩っていく。
その光に合わせた楽しげな喧騒のなか、どうかガラーのエルフが再び一丸となれることを祈った。




