②ー7|隧道《ずいどう》
②黒の団と舞踏
7 隧道
暗く狭い道を、ただただ前について進んでいく。
最後尾を歩くリューからは、先頭が持つ魔具の灯りも、皆の背中越しにチラつくだけで、逆に不安を煽られる。たまに強く光源が目に入ると、これまでの道行がフラッシュバックする。
魔力の扱いに長けた耳エルフ達。崩れ落ちる大岩。圧倒的な力量差に恐れ慄く顔。
高度な魔術文化を持ち、自らの肉体を魔具に置き換えるドールエルフの街。崩壊する建造物を後にする彼らの、白い陶器のような顔のガラス玉のような瞳の奥に宿る反抗心。
村の多くが傭兵として出稼ぎに出ており、ほとんど女子供しかいないファイトエルフの村。こちらを見る、あの表情。
族長達三人は、同じエルフに対して容赦することもなかった。怒り、怒鳴り、命令する。勇者は淡々とそれを聞き入れた。
彼女は仲間に背負われて、今は眠っている。
触れたものを“破壊”するという、まさに神の力としか言いようのない“ギフト”を無尽蔵に使用できる一方、体は貧弱な人族の少女で、口数少なく何を考えているのかわからない。起きていても、ただ空をぼーっと眺めていることが多々ある。
「あなたは、この世界が好き?」
転生してすぐの昼下がり、彼女が一度だけリューに質問した。
しかし、その目に光はなく、自分に答えなど求めていないことが分かってしまった。言い淀むと、彼女はまた、空を見上げた。
強い風が吹いた時、彼女の口元が動いて何か言ったようにも見えたが、その声はかき消され、轟音の遠吠えのようだった。
彼女の叫びを、リューは聞き取れなかった。




