原点
多分、笑いあり、涙あり、恋愛あり、バトルありにする予定です。感想を是非。
原点
その日は小雨だった。
どんよりした空気の中、鉛色の空から、音も無く、静かに降り続ける雨。
きっと、肌に当たらなければ気付かないだろう。
だが、もし旅人等がいたらたちまちに異変を悟ったはずだ。
温泉がひっくり返ったような、硫黄の匂いがするぬるい雨―通常、そんなものは有り得ないのだから。
―そんな雨には目もくれない少年がいた。
小麦色の髪が頬にへばりつき、雫が垂れている。
もう長い間外にいるようである。
幼さの残る顔に血の気は無い。雨の所為ではなかった。
その目は、今見る事の出来ない、澄み切った青空の色。そして、揺ぎ無い意思を湛えていた。
水が飛び散った。湿った靴より重い、彼の心を映すように濁った泥水が。
「兄さん!!」幼い声が耳に届く。
雨はかき消そうとする様に勢いを増す。
少年は叫び返した。
「シャルルッ!!」
前方に見つけた。大切な探し人を。
雨で霞む碧眼に映したのは、まだ子供と言えるほど幼い少年。
後ろ手に縛られているのが見えた。
白銀色の髪が風になぶられている。
その目は暗い。そして、右目が前髪に隠れてうかがい知れない。が、恐らく恐怖に染まっているであろう事は見て取れる。
「今、行く!」
だがそれだけではないようだった。
子供―弟が叫んだ。
「着ちゃ駄目だぁ!!」
稲妻が轟いた。雷の光が目を焼く。
目眩がした。
地面から湧いて出たように青年が立っていた。
体格が良く、少年を一捻りにできそうだ。
だが、一捻りにした記憶しかなかった。
再び雷鳴が辺りを支配した。
最後に見たのは、笑っているのか泣いているのかも分からない弟の顔。
口から大量の血を流し、その胸には刃こぼれの激しいナイフが突き刺さっている。
笑おうとしているのか、口元を僅かに上げ、
「…ごめん…ね兄さん…さ……よ…な」
目尻から雨とは違う水滴が落ち、けれど最期に少年の為に笑おうとしていた。
弱々しく伸ばされた手が空しく空を握り―落ちた。
そして、風に前髪がなびいてあれほど隠したがっていた右目が一瞬、露出する。
直ぐに閉じられてしまった瞳の色は―
「うわああああああああああああああああああああああああぁぁぁ」
「ヴェインー。ヴェイン君〜」




