オオトカゲ
「ただいま~」
「帰りました~」
「はい、おかえりなさい」
バッグから冷蔵庫に食材を移しながら浅生さんが応えてくれる。
あたしと聖夜子ちゃんは、郵便受け見たり、祥子さんに声かけたりして一足遅れの帰宅。
「むっ」
靴を脱ぎかけたところで、派手にひっくり返ってる靴が目に入る。
「倫!」
「え、なになに?」
あたしが声をあげるとリビングを転がって倫が顔を出した。
「脱いだ靴は揃える!」
「あれ? 揃ってなかった?」
「ない。上下左右全部めちゃくちゃ!」
「あはは。靴が踊ってますね」
聖夜子ちゃんは笑いながら倫の靴を並べようとする。
「ダメ、聖夜子ちゃん。本人に直させなきゃ。倫、こっち来て靴を並べて」
あたしはその手を止めて倫を呼びつける。
「うえぇ~~」
いかにもめんどくさそうに、のそのそ四つ足でやってくる倫。
「オオトカゲか!」
浅生さんと聖夜子ちゃんが笑う。
「いつも言ってるだろ。脱いだらすぐ揃える。習慣にしなさいって――」
「ああ~~。うう~~」
ぱしーん。
玄関まで這ってきた倫があたしの靴を手の甲でひっくり返す。
「あ、こいつ! 踏んづけてやる!」
「ひょ、ひょ、ひょ!」
あたしが足を上げるよりも早く、倫は四つん這いのまま後退する。
「速っ!? 気持ち悪っ!!」
――ねぇ本条さん。うちのクールビューティこんなだよ!?