17.もう戻れない
ウィルに10歳児くらいの服も借りた、気合いはさっき入れた、魔力は充分回復してる。コンディションは最高(多分)
因みになんでウィルが色んな服を持ってるかって言うと、ウィルが伸縮自在だからだそうで。ああ、ツインテロリ...
「よっし、いくぞー」
想像する。魔法は想像が大事だ。ってどっかの主人公が言ってた。これって要は妄想力ってことじゃん?
この身体にかかる時間の流れを早める……のはムズすぎるから、元あった寿命、つまり本来経る筈の時間、これを凝縮させる。そんでもって今にぶつける。凝縮は.....押せばなんとかなるだろ。よし行ける。
まあ難点は寿命が縮むってことだけども。
(特別今の人生に執着ないしな)
短命とか別にいいや。前世だったら死んでも死にたくなかったけど。
まあとりあえず準備は整った。
ゆっくりと息を吸って、吐く
想像する想像する創造する妄想する
いける_____________
「"年齢操作"」
その瞬間
周囲に目を瞑っていても分かるほどの光が溢れた
*****
まあ、結果的に言うと成功した。
俺は見事に12歳になったわけだけども......
「.............」
全身が物凄く痛い。
寿命が縮むくらい痛い。
まあ実際寿命縮んだんですけど。.......本当に痛い。
(身体貧弱すぎて急激な負荷に耐えられなかったってとこか...............痛い)
目の前にあるステータスボードを、痛みで滲む視界で捉えた。
年齢確認にはちょうどいいと思って出したものだったが、正解だった。今世の名前の隣りにきちんと加算された年齢が書かれている。
(へぇ、俺の名前リーノって言うのか。苗字みたいなのは無さそうだけど....)
あの金髪碧眼美少女はやはり特殊だったらしい。
ピアノだかピアスだか忘れたけれど、苗字みたいなのがあったのは憶えてる。謎に長かったし。
まあ今更自分の名前が知れた所でどうもしない。というか、どうにかするには手遅れだ。
(.....ウィルのとこ戻るか)
目的の10歳より少し上だが、加算して困ることはほぼ無いだろう。
問題は、12歳のくせに全く12歳に見えないくらい貧弱だということぐらいだ。
しっかり鏡を見て確認した訳では無いけれど、感覚的にせいぜい8歳くらいにしか見えなさそう。なんなら8歳に見えたらいい方かもしれない。
やば。
借りた服の裾を引きずりつつ洗面所から出る。
いちいち扉にジャンプしなくてもよくなったのは、かなり嬉しかった。
「ウィルー、どーこれ」
律儀に洗面所近くで控えていたウィルにニヤリと笑って見せる。
外面で強がる事により痛みを忘却しようという余りにも浅はかな考えもあったりする。
「............魔法、使えたんですね」
本気で驚いている口振りだった。
「瞳の色からして魔力がないのかと思ってました」
「色?」
「はい。魔力のある人間は大抵、瞳の色が青系統になるので」
それは初耳だ。まあ初耳じゃない事の方が少ないんだけど。
だが言われてみれば、今まで出会った人の目青系だった気がしないでもない。
そんな事を思いながら、のそのそとワイシャツの袖を捲っていると、さらりとウィルがやってくれる。
有能にも程がある。
「魔力ない人は?」
「魔力のない人は赤茶、焦茶、黒茶あたりの色です。イノの瞳は黒のようなので、つい外見で判断してしまいました」
鏡を見た時を思い出すが、確かに青ではなかった。かと言って黒かと言われると微妙だ。
若干赤が入ってるような気がしないでもない。
つまり、よく分からん色。
自分の見慣れない色、日本人だった時とは異なる色が自分の目になっているからだろうが、俺の感想はこれだ。
「んー、ウィルの目は藍色......てことは、魔法使えんの?」
「はい、使えますよ。基本的に全属性使用可能です」
"全属性使用可能"......パワーワードすぎる。
「ですが、私の場合瞳の色はあまり関係なくて....人間に擬態するために一般的な色を参考にしているだけなので。.......そう考えるとイノの場合は、魔力根源の色が青じゃないのかもしれませんね」
「魔力根源...」
聞いたことあるわぁ。なんかの漫画とかで。
「魔力根源が青じゃないというケースはこの国では殆どありませんが、他国では割とあるそうです」
「へぇー」
じゃあ、俺は他国の人間ってことですか?........宙に浮く青い板にはそんな事書いてなかったけどな
.........分からんわ。いいやなんでも。めんどくせ
「あ、そう言えば。......ウィル、これ見える?」
ふと思い出して、パッと表示したステータスボードをウィルに見せる。
「はい、見えますけど.......青い.....板?」
やっぱ見えるのかよ。