13.やっぱ自分が最優先
「もし宜しければの話なので...」
「一緒に....?」
どこへ
「はい。これから帝都に移動しようかと」
疑問を浮かべる俺を見て察したのか、ウィルが既に言ってくれていたであろう事を付け加えてくれる。
ウィルが言うには、この実験室には必要な機材修理の為来ただけらしい。修理には数年かかったが、ここ最近終わったのだそう。
そんで、帰る準備をしていた時に丁度俺が落とし穴に落ちたという感じだ。
ウィルの主な生活場は帝都にあり、ここは支部か機材置き場みたいなものだとか。
まあでも、
(帝都ここより絶対治安良いよな)
もし悪いとしても、スラム街というより死体置き場的なこんな場所より、断然良いはずだ。
よし。行こう。
俺は死体の隣で寝る趣味はない。
それに、目覚めてから体を洗った覚えがないので、全身に死臭及び腐敗臭がこびりついていることだろう。
中身JKとしてどうなんだ。もしこれが俺じゃなく他の女子だったら由々しき事態なはず。
てか髪邪魔すぎて切りてぇ。
兄をどうしようかと一瞬考えもしたが、まあ、いいだろう。
あの兄だったら俺が居なくなった方がやる気を出す。多分。主に捜索の方面で手段を選ばないはずだ。兄の問題を放棄するのは目標を放棄することになるが、まあもうどうでもいい。
重要なのは兄よりも自分だ。
「一緒に行ってもいい?」
「はい勿論です」
嬉し気な雰囲気がウィルの周辺に広がる。表情筋に大幅な変化はないが。
「いつぐらいに出るの?」
「明日か明後日辺りにしようかと。その間充分体を休ませておいてください。ここには浴槽もありますし、ゆっくりできると思いますよ。まだ転移は試作品で膨大な魔力を消費するので、一応最終メンテナンスを____」
「転移!?」
転移があんの!?まじで!?
思わずソファーから身を乗りだす。
「はい、試作品ですがほぼ完成してます。問題点は魔力消費量による大量生産不可くらいかと。私の場合魔力は体内で生成及び蓄積可能なので、転移二人分の魔力ぐらいは比較的簡単に用意できます。」
「はぇ」
強すぎて変な声が出た。
魔力が体内で生成及び蓄積可能とか最早意味わからん。
「なので準備が終わったら言ってください。メンテナンスが終われば何時でも出発できます」
(.......本当にすごいな)
でもまあ準備と言っても、こっちはそれほど準備することが無い。風呂入って終わりまである。
「じゃあ私は落とし穴を埋めてくるのでゆっくりしていて下さいね。浴槽はこの部屋を出て右に、御手洗はその奥にあるので」
「......分かった。ありがとう」
何とか驚愕から抜け出し返事をすると、ウィルは大きめなシャベルを手に部屋を出ていった。
すぐ後に扉の閉まる音がしたが、鍵を掛けた音はしない。
セキュリティがばがばすぎる。
もし俺がこんななりをして相手を騙す泥棒とかだったらどうするつもりなのか。まあ違うからいいんだろうけど。
「風呂入らせてもらうかー」
ボロボロで小汚い自身を見下ろし思わず溜息をつく。
(後で座ったソファー拭いとこ)
そう考えながら、のそのそと浴槽へ向かった。