12.メイド服はいいぞ
物凄い今更だが入口前から奥に案内された。
コードやら謎の機械やらが散乱してる床に足を取られながら進むと、隠れているような扉があり、そこに生活スペースがあった。そしてなんとその部屋、暖かいのである。
まあ、一言で言うと 最高
最早ソファに座れるだけで幸せを感じる。やばい。
「革張りなのにふかふかだと.....!?」
けしからんな。眠くなってくるわ。
「今なにか飲む物を入れますね」
「ありがと!」
遠慮などしない。有難く頂く。
飲み物は貴重だよ。まじで。
青年がお茶を入れているのを見ると、どこから見てもただのイケメン執事である。これが人間ではないなどとは思えない。
「なんでそんな格好してんの?」
どうぞと渡された温かいマグカップを両手で包むと、じんわりと熱が手の平に伝わってきた。
「容姿の事ですか?」
「う、ん?」
容姿というか装いというか洋服というか.....?
「自由に変えられるので、何か要望があったらなんでも聞きますよ」
「変えられる.....?」
服を?服をだよね?
「はい。こんな感じに」
そう言った途端縮んだ。青年が。驚き過ぎて口が塞がらない俺の目の前で、ダボダボになってしまった執事服から、美少年が首を出す。
「どうでしょうか、データがある個体になら一応なんにでもなれるのですが........」
「.............」
............すげぇ。やべぇ
開いた口が塞がらない。すげぇ。まさか、液状型ってこういう事?
「.......性別、とかも変えられるの」
「はい。元々性別という概念が存在しないので、可能です。ですが私の場合、創造主の性別故かデータ統計的に若干男性寄りになってます」
「ひぇ」
変な声が出た。
最早なんでもありじゃねぇかよ。チートか。是非今度少年の状態でメイド服来て欲しいわ。それかピンク髪ツインテロリメイドでお願いします。
「私からも質問いいでしょうか」
さっと青年に戻ったロウィルが、首を傾ける。
「勿論。俺が答えられる範囲でだったらなんでも」
「......イノは、何歳ですか?」
「2歳」
身体的には。精神的には違うけど。
「全然見えないですね。.....いや、あの、見た目的な意味ではなくて」
慌てて言い加える青年は前世の弟よりも断然人間っぽかった。もうこの青年人間じゃないって思うのやめよう。
まあ、でも
(2歳児なんだよなぁ)
「2歳なんて皆こんな感じだよ」
知らんけどな
「そうでしょうか.....」
いまいち納得していない様子の青年を横目に、マグカップの中身を口にする。少し苦味があるココアだった。全身があったまる。生き返るわー。
「あ!!」
一息ついて思い出した。
(兄ぃぃいいい!!)
シンプルに存在を忘れてた。
どうしよう。やっべー。いざとなったら時間戻せばいいやとか思ってたけど、今時間戻したらこのチート青年との出会いも無くなる訳で.....
「どうかしました?」
目の前の青年との出会いをパーにしたくはない。
「.........なんでもない」
後で考える事にしよ。そうしよ
「そう、ですか?ならいいんですが」
無表情なのにわかりやすい謎。
「せいねん.....じゃなくて、ロウィルさ、別に2歳児に敬語使わなくていいよ?」
所詮はクソガキ。自覚はある
「いえ。私が敬語を外すのに慣れていないので、」
「そっか〜」
(こっちがタメでロウィルが敬語ってなんか気が引けるんだけど.....まあいいか)
考えるのやめよう。気遣いもやめよう。そっちのが楽だし!
てか自分で付けといてなんだけど、ロウィルって呼びにくいな。
ウィルでいっか!
「そーいや、ウィルってここに住んでんの?」
「.....はい、移動しようかと思ってますが」
ウィル呼びに若干驚いたのか少し目を見開いた所に好感が持てる。
一体全体誰がこんな高性能青年を生み出したのか。どこの転生者だろ。転生者だよなぁ。多分。
PC創れるとかどんな最強転生者だよ。
あーでも、持ち込みとかかな。いいなー、持ち込み羨ましいわ。このPC地球に繋がってないかなぁ.....もう俺の気分的に一年以上推しの声聞いてない気がする。あ゛ー。
「あの、一緒に来ませんか?」
「へ?」
なんの話だ