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勇者と魔王は真実の愛を求めて異世界を渡り行く  作者: usiroka
第一章 勇者と魔王、そして神さま
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第五話 殺し合い

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

「…!」


 仲間たちの協力を得(え)て走り続けた先に、勇者はついに魔王がいる玉座の間の扉の前にたどり着いた。


(………行くぞ!)


 仲間(なかま)の無事(ぶじ)を信(しん)じて、勇者は覚悟(かくご)を決めて大きな扉を力いっぱい両手で押して開ける。


「来たぞ!魔王!!」


 しかし扉を開けても誰もその声に応(こた)える者は誰もいない。一通り玉座の間を見た勇者は警戒(けいかい)しながら中へと入っていく。


「…。」


 玉座の間は薄暗(うすぐら)く、不気味(ぶきみ)な雰囲気(ふんいき)を漂(ただよ)わせる。


「…。」


 勇者はゆっくりとゆっくりと玉座の間を歩く。


「………よく来たな。人間の勇者よ」


「!?」


 勇者が玉座の間の中心にきた瞬間、突然と女性の声が聞こえ、勇者が開けた扉は急激に閉まる。


 そして扉が閉められて真っ暗となって何も見えなくなったとき、飾(かざ)られていたたいまつに紫色(むらさきいろ)の炎が勝手に点火(てんか)されていき、部屋全体を急激に明るくしていく。


「…!!」


 そして明るくなった玉座の間で玉座に深く腰を掛けて座る魔王らしき人物が勇者の目に映る。


「…いつまでも腰かけておくのは失礼だな」


 玉座から立ち上がった魔王は首元のマントをボタンを外してゆっくりと玉座の階段を降りてこちらへ向かってくる。


 そして玉座から魔王がこちらに近づいてくるのにつれて、魔王の姿がはっきりしていく。


(…。)


 黒色に近い赤色をしたロングヘアー、170近い身長、スラっとした細いお腹周りと脚、形の整った豊満な胸、そしてとても綺麗(きれい)に整った顔立ちをして、黒と赤を主体(しゅたい)とした美しいドレスを見事に着こなしている。


 これだけを見れば絶世(ぜっせい)の美女とでもいえるだろう。だがそんな魔王からあふれ出る魔力は、明らかに常人(じょうじん)が立っていられない程の強いプレッシャーを放っていた。


「…人間の勇者よ、お前は何故(なぜ)ここに来た?そして何故(なぜ)私を殺そうとする?」


 階段を全て降りた魔王は口を開いて低く冷たい声で勇者に問いかける。


「…俺はみんなの思いを背負(せお)ってここまで来た」


「…。」


「…俺よりも勇者になりたいと思う人は周りに沢山(たくさん)いたし、お前たちを憎(にく)んで殺したいと俺よりも思っている人は星の数程いる…。でもみんなはその悲しみや憧(あこが)れといった感情を含(ふく)めて、勇者として選ばれた俺に全てを預けてくれたんだ…!」


「…。」


「…だから俺は勇者として預けられたこの全ての思いを、無駄(むだ)にする事は絶対にしてはならないんだ!!」


「…ほう」


「…俺はお前たちを打ち滅ぼす!!お前たちを滅ぼして、お前たちに奪(うば)われたものを全て取り戻す!!そのために俺はここまで来たんだっ!!」


 普通の人が言えば言葉は完全にただの綺麗(きれい)ごとにしか過ぎないものを述(の)べたことになるだろう。しかし勇者が発(はっ)した言葉はとても真(ま)っすぐで、嘘偽(うそいつわ)りといったものを全く感じさせなかった。


「…そうか。………お前も私と同じなのだな」


「…?」


 一通(ひととお)りの会話を終えた魔王は自分の内からとてつもない程の量の魔力を湧(わ)きあがらせる。


「…!!」


 勇者は自分の鞘(さや)から剣を抜き取り、最大限の警戒体制(けいかいたいせい)に入る。


「…お前のように裏表(うらおもて)ないその本物の素晴らしき意志に敬意(けいい)を払(はら)い、全てをこの身に預けてくれたみなの為に、魔王として私が出せる全てを…!ここで振舞(ふるま)わせてもらおう!!」


「………来るなら、…来いっ!!」


 勇者と魔王はお互いに魔力を極限(きょくげん)までに集中させる。お互いのとてつもない魔力はぶつかり合い、不自然な風が発生する。


「「…。」」


 極限(きょくげん)の集中状態の二人のにらみ合いは威圧感(いあつかん)はあるものの、あまりにも静かでお互いの時がまるで止まっているかのようだった。


「「…。」」


 だがその静けさはいつまでも続くことはない。互いの魔力によって作られた不自然な風が玉座の間にあるたいまつの炎を大きく揺(ゆ)らす。


「「…。」」


 そして玉座の間にある一つのたいまつの炎がお互いの魔力のぶつかり合いで耐(た)えきれなくなって消えた時


「「…!!」」


 勇者と魔王は殺し合いを始めた。


「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 大きな掛け声とともに勇者は魔王に一瞬で距離(きょり)を詰(つ)めて、大きく振った剣を魔王めがけて容赦無(ようしゃな)く振り下ろす。


「…!」


「…。」


 一歩先を取られた魔王であったが、右の手のひらに大きな魔法陣を展開して勇者の一撃を防ぐ。


「…フッ!」


「くっ!!」


 勇者の剣を跳ね返し、勢いよく剣を跳ね返された勇者は大きく後方(こうほう)へ飛ばされ地面を大きく一回転して転がる。


「…展開せよ」


「…っ!?」


 勇者が目を上げた矢先に、左腕を大きく左へ広げた魔王とその後ろに大量に展開された魔法陣が目に映る。


「【エクスプロージョン・キャノン】!!」


 数多(かずおお)く展開された魔法陣から超高熱の炎が大砲のごとく勇者に向かって放たれる。


「…【グラビティ・カット】ッ!!」


 急いで立ち上がった勇者は自身に掛かっている重力を限界まで無くし、全力で走りぬけて飛ばされてくる超高熱の炎を何とか避けていく。


「…うおおおおおぉぉぉっ!!」


 放たれる炎が終わりを迎えたとき、勇者は走り抜けるのをやめて魔王に攻撃を仕掛けようと一気に近づいていく。


「【重剣(じゅうけん)・」


「!」


「フォトン・ブラスト】ッ!!」


 強い光を纏(まと)った剣が魔王へ振り下ろされる。


「…!?」


 しかし先程(さきほど)と違い、剣の重みが全く違う。まるで片手剣ではなく両手剣、いやそれよりも重い剣を持った相手にしているかのようだ。


「はああああぁぁぁっ!!」


 強力な剣の力に耐(た)えきれなくなり、魔王の展開していた魔法陣は砕(くだ)ける。そして魔法陣が砕(くだ)けた衝撃(しょうげき)により魔王は後ろに転げるようにして飛んでいく。


「ぐっ…、ガハ…」


 勇者は攻撃の手を緩(ゆ)めることなく、魔王へ向かって全速力で走る。


「【重剣(じゅうけん)・フォトン・バースト】ッ!!」


 また剣に強い光を纏(まと)わせて、勇者は剣を振り下ろす。


「…くっ!…【スカイ・フライ】!!」


 だがそれに負けじと、魔王は自らを低空浮遊(ていくうふゆう)させ両手で魔法陣を展開して勇者の剣を受け止める。


「!」


「はあああああぁぁぁぁっ!!」


 勇者の剣を弾いてかなり遠くにとばし、勇者と魔王に大きな間ができる。


「…!」


「【ダーク・イート・デス】!!」


 そして魔王は勇者に間を詰(つ)められないように、上空に高くを飛んで両手から紫色(むらさきいろ)の頭蓋骨(ずがいこつ)がケタケタと笑うかのような不気味(ぶきみ)な闇魔法をガトリング砲のようにして高速で連続して放つ。


「…【重剣(じゅうけん)・光速連撃斬(こうそくれんげきざん)】っ!!」


 だが勇者も負けじと、光を纏(まと)う剣で向かってくる【ダーク・イート・デス】を全て相殺(そうさい)していく。


「…かかったな」


「…!?」


 ぼそりと口を開いた魔王に気が付いた勇者は、【ダーク・イート・デス】を相殺(そうさい)しながらも急いで周りを見る。


(…!!)


 すると勇者の周りにはいつの間にか数えきれないほどの大量の魔法陣が足元に敷(し)き詰(つ)められていた。


「【グラビティ・…ッ!!」


「もう遅い!!【ボルガノン・カラム】ッ!!!」


 敷(し)き詰(つ)められていた魔法陣から玉座の高い天井をも燃やしつくすほどの高い炎の柱が一斉(いっせい)に放たれる。


「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 熱い。身が引(ひ)き裂(さ)ける。

 勇者は超火力の炎の柱に巻き上げられながらにしてその身を焼かれていく。


「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「…。」


 死という絶望(ぜつぼう)がいつ見えてもおかしくないと魔王は焼けていく勇者を見つめる。


「あああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 しかし、勇者はその身をいくら焼かれてたとしても


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 その心と精神は一つたりとも諦(あきら)めてはいなかった。


「……はああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 燃え盛(さか)る炎を剣を振り払ってかき消し、勇者は危機を脱(だっ)する。


「…何っ!?」


 そして炎の柱から抜け出した勇者は火傷(やけど)の痛みを堪(こら)えながらも剣を空中で構える。


「【重剣(じゅうけん)・月光波動斬(げっこうはどうざん)】っ!!」


 空中から剣を振り、放たれた三日月のように美しい輝きを持った斬撃(ざんげき)は魔王めがけて超高速で落ちてくる。


「!!」


 あまりの斬撃(ざんげき)の速さに反応が遅れ、あわてながらも右手で魔法陣を展開させてる。


「うぅ…!!」


 しかし片手での魔法陣の展開では限界があり、魔法陣は破(やぶ)られなかったものの、ドレスの一部を切られながら斬撃(ざんげき)の衝撃(じょうげき)で魔王は少し右腕にダメージを負う。


「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


「!!」


 右腕を気にする暇(ひま)も与(あた)えず、一気に勇者は魔王の元へと突っ込んでいく。


「…【エクスプロージョン・キャノン】ッ!!」


 魔王の後ろに高速展開された大きな魔法陣から、先ほどとは比べ物にならない威力(いりょく)の【エクスプロージョン・キャノン】が勇者に向けて放たれる。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 だが勇者は目の前に向かってくる超高熱の炎に少しも逃げようとせずに真正面へ向かっていく。


「【重剣(じゅうけん)・月光直下(げっこうちょっか)】っ!!」


 勇者の身はその炎の中へと消えてゆく。


「…!?」


 だが勇者は【エクスプロージョン・キャノン】を切(き)り裂(さ)きながら、更(さら)に速度をあげて魔王の元へと向かってくる。


「…そんなっ!?」


「はあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


【エクスプロージョン・キャノン】を全て切(き)り裂(さ)き、勇者は魔王との距離(きょり)を一気に縮(ちぢ)めていく。


「…くっ!!」


 魔王は両手で大きな魔法陣を急いで展開する。そして勇者が振り降おした剣は魔王が展開した魔法陣へ激しい音を立ててぶつかる。


「はあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




 しかし魔王が勇者の剣を防(ふせ)いだのはごくわずかな一瞬で




「ああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




 気が付いた時には勇者の剣は魔王の胸元(むなもと)を切(き)り裂(さ)いていた。






「…ぁあっ!!」






 勇者の渾身(こんしん)の一撃が入り、魔王は血しぶきを上げて後ろへと倒れていく。


「はぁ…、はぁ…」


 全ては終わりを迎(むか)え、勇者の勝ちは確定(かくてい)したように見えた。






「…!!」








 しかし、倒(たお)れゆく魔王の目はまだ死んではいなかった。








「………【ヘルフレイム・ブロウ】ッ!!」


 胸元(むなもと)を切られた痛みをこらえながらも魔王は無理やりその場に踏(ふ)ん張(ば)って、偽(いつわ)りの勝利に溺(おぼ)れ油断(ゆだん)した勇者のみぞおちめがけて黒い炎を纏(まと)った拳(こぶし)で渾身(こんしん)の一撃を与える。


「ぐおぉっ…!!」


 大きく弧(こ)を描(えが)いて勇者は後ろへと飛ばされる。


「うぅ…」


「コホッ…」


 勇者と魔王はお互いにもうボロボロだった。


「「はぁ…、はぁ…、はぁ…」」


 勇者は全身に負(お)った火傷(やけど)が強い痛みを発(はっ)して立つことすら辛くなり、魔王も切られた箇所(かしょ)から大量出血(たいりょうしゅっけつ)し意識を保(たも)つことがやっとの状態だった。


「「はぁ…、……はぁ」」


 だがそれでも二人は殺し合いをやめようとはしない。


「「はぁ……、はぁ…………、…はぁ。」」


 自分に全てを預けてくれて、この場に立たせてくれたみんなの為に必ずこいつを殺すと決めた固い決意が二人を震え立たせていた。


「…【グラビティ・カット】!」


「…【スカイ・フライ】!」


 お互いにそれぞれ魔法を付加(ふか)して身を構える。そして二人はお互いの目が合った時理解する。


((…これが、お互いに最後の一撃だ…!!))




 二人は自身に残された全ての魔力を限界までに振(ふ)り絞(しぼ)る。




「はああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」




『ここで必ず終わらせる』。その意志の元に二人は一騎打(いっきう)ちに持ちかける。






「…【フューチャー・エンド】ッ!!!!!」



「…【重剣(じゅうけん)・シャイン・ホープ】ッ!!!!!」






 もうじき消えてしまうだろう自分の命の事を気にかけることなく、全てをその手に注(そそ)ぎんだ二人は






「勇者あああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」



「魔王おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」








 今ぶつかり合おうとしていた。








「「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」











「…【タイム・ストップ】」











 しかし二人がぶつかり合おうとした時








「「…!?」」








 白いスーツと白い短めのシルクハットを帽子(ぼうし)を被(かぶ)った、勇者と魔王が共に見知らぬ青年が二人のぶつかり合いの中心にいつの間にか入(はい)り込(こ)んできていた。

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