表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者と魔王は真実の愛を求めて異世界を渡り行く  作者: usiroka
第一章 勇者と魔王、そして神さま
6/17

第五話 殺し合い

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

「…!」


 仲間たちの協力をて走り続けた先に、勇者はついに魔王がいる玉座の間の扉の前にたどり着いた。


(………行くぞ!)


 仲間なかま無事ぶじしんじて、勇者は覚悟かくごを決めて大きな扉を力いっぱい両手で押して開ける。


「来たぞ!魔王!!」


 しかし扉を開けても誰もその声にこたえる者は誰もいない。一通り玉座の間を見た勇者は警戒けいかいしながら中へと入っていく。


「…。」


 玉座の間は薄暗うすぐらく、不気味ぶきみ雰囲気ふんいきただよわせる。


「…。」


 勇者はゆっくりとゆっくりと玉座の間を歩く。


「………よく来たな。人間の勇者よ」


「!?」


 勇者が玉座の間の中心にきた瞬間、突然と女性の声が聞こえ、勇者が開けた扉は急激に閉まる。


 そして扉が閉められて真っ暗となって何も見えなくなったとき、かざられていたたいまつに紫色むらさきいろの炎が勝手に点火てんかされていき、部屋全体を急激に明るくしていく。


「…!!」


 そして明るくなった玉座の間で玉座に深く腰を掛けて座る魔王らしき人物が勇者の目に映る。


「…いつまでも腰かけておくのは失礼だな」


 玉座から立ち上がった魔王は首元のマントをボタンを外してゆっくりと玉座の階段を降りてこちらへ向かってくる。


 そして玉座から魔王がこちらに近づいてくるのにつれて、魔王の姿がはっきりしていく。


(…。)


 黒色に近い赤色をしたロングヘアー、170近い身長、スラっとした細いお腹周りと脚、形の整った豊満な胸、そしてとても綺麗きれいに整った顔立ちをして、黒と赤を主体しゅたいとした美しいドレスを見事に着こなしている。


 これだけを見れば絶世ぜっせいの美女とでもいえるだろう。だがそんな魔王からあふれ出る魔力は、明らかに常人じょうじんが立っていられない程の強いプレッシャーを放っていた。


「…人間の勇者よ、お前は何故なぜここに来た?そして何故なぜ私を殺そうとする?」


 階段を全て降りた魔王は口を開いて低く冷たい声で勇者に問いかける。


「…俺はみんなの思いを背負せおってここまで来た」


「…。」


「…俺よりも勇者になりたいと思う人は周りに沢山たくさんいたし、お前たちをにくんで殺したいと俺よりも思っている人は星の数程いる…。でもみんなはその悲しみやあこがれといった感情をふくめて、勇者として選ばれた俺に全てを預けてくれたんだ…!」


「…。」


「…だから俺は勇者として預けられたこの全ての思いを、無駄むだにする事は絶対にしてはならないんだ!!」


「…ほう」


「…俺はお前たちを打ち滅ぼす!!お前たちを滅ぼして、お前たちにうばわれたものを全て取り戻す!!そのために俺はここまで来たんだっ!!」


 普通の人が言えば言葉は完全にただの綺麗きれいごとにしか過ぎないものをべたことになるだろう。しかし勇者がはっした言葉はとてもっすぐで、嘘偽うそいつわりといったものを全く感じさせなかった。


「…そうか。………お前も私と同じなのだな」


「…?」


 一通ひととおりの会話を終えた魔王は自分の内からとてつもない程の量の魔力をきあがらせる。


「…!!」


 勇者は自分のさやから剣を抜き取り、最大限の警戒体制けいかいたいせいに入る。


「…お前のように裏表うらおもてないその本物の素晴らしき意志に敬意けいいはらい、全てをこの身に預けてくれたみなの為に、魔王として私が出せる全てを…!ここで振舞ふるまわせてもらおう!!」


「………来るなら、…来いっ!!」


 勇者と魔王はお互いに魔力を極限きょくげんまでに集中させる。お互いのとてつもない魔力はぶつかり合い、不自然な風が発生する。


「「…。」」


 極限きょくげんの集中状態の二人のにらみ合いは威圧感いあつかんはあるものの、あまりにも静かでお互いの時がまるで止まっているかのようだった。


「「…。」」


 だがその静けさはいつまでも続くことはない。互いの魔力によって作られた不自然な風が玉座の間にあるたいまつの炎を大きくらす。


「「…。」」


 そして玉座の間にある一つのたいまつの炎がお互いの魔力のぶつかり合いでえきれなくなって消えた時


「「…!!」」


 勇者と魔王は殺し合いを始めた。


「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 大きな掛け声とともに勇者は魔王に一瞬で距離きょりめて、大きく振った剣を魔王めがけて容赦無ようしゃなく振り下ろす。


「…!」


「…。」


 一歩先を取られた魔王であったが、右の手のひらに大きな魔法陣を展開して勇者の一撃を防ぐ。


「…フッ!」


「くっ!!」


 勇者の剣を跳ね返し、勢いよく剣を跳ね返された勇者は大きく後方こうほうへ飛ばされ地面を大きく一回転して転がる。


「…展開せよ」


「…っ!?」


 勇者が目を上げた矢先に、左腕を大きく左へ広げた魔王とその後ろに大量に展開された魔法陣が目に映る。


「【エクスプロージョン・キャノン】!!」


 数多かずおおく展開された魔法陣から超高熱の炎が大砲のごとく勇者に向かって放たれる。


「…【グラビティ・カット】ッ!!」


 急いで立ち上がった勇者は自身に掛かっている重力を限界まで無くし、全力で走りぬけて飛ばされてくる超高熱の炎を何とか避けていく。


「…うおおおおおぉぉぉっ!!」


 放たれる炎が終わりを迎えたとき、勇者は走り抜けるのをやめて魔王に攻撃を仕掛けようと一気に近づいていく。


「【重剣じゅうけん・」


「!」


「フォトン・ブラスト】ッ!!」


 強い光をまとった剣が魔王へ振り下ろされる。


「…!?」


 しかし先程さきほどと違い、剣の重みが全く違う。まるで片手剣ではなく両手剣、いやそれよりも重い剣を持った相手にしているかのようだ。


「はああああぁぁぁっ!!」


 強力な剣の力にえきれなくなり、魔王の展開していた魔法陣はくだける。そして魔法陣がくだけた衝撃しょうげきにより魔王は後ろに転げるようにして飛んでいく。


「ぐっ…、ガハ…」


 勇者は攻撃の手をめることなく、魔王へ向かって全速力で走る。


「【重剣じゅうけん・フォトン・バースト】ッ!!」


 また剣に強い光をまとわせて、勇者は剣を振り下ろす。


「…くっ!…【スカイ・フライ】!!」


 だがそれに負けじと、魔王は自らを低空浮遊ていくうふゆうさせ両手で魔法陣を展開して勇者の剣を受け止める。


「!」


「はあああああぁぁぁぁっ!!」


 勇者の剣を弾いてかなり遠くにとばし、勇者と魔王に大きな間ができる。


「…!」


「【ダーク・イート・デス】!!」


 そして魔王は勇者に間をめられないように、上空に高くを飛んで両手から紫色むらさきいろ頭蓋骨ずがいこつがケタケタと笑うかのような不気味ぶきみな闇魔法をガトリング砲のようにして高速で連続して放つ。


「…【重剣じゅうけん光速連撃斬こうそくれんげきざん】っ!!」


 だが勇者も負けじと、光をまとう剣で向かってくる【ダーク・イート・デス】を全て相殺そうさいしていく。


「…かかったな」


「…!?」


 ぼそりと口を開いた魔王に気が付いた勇者は、【ダーク・イート・デス】を相殺そうさいしながらも急いで周りを見る。


(…!!)


 すると勇者の周りにはいつの間にか数えきれないほどの大量の魔法陣が足元にめられていた。


「【グラビティ・…ッ!!」


「もう遅い!!【ボルガノン・カラム】ッ!!!」


 められていた魔法陣から玉座の高い天井をも燃やしつくすほどの高い炎の柱が一斉いっせいに放たれる。


「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 熱い。身がける。

 勇者は超火力の炎の柱に巻き上げられながらにしてその身を焼かれていく。


「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「…。」


 死という絶望ぜつぼうがいつ見えてもおかしくないと魔王は焼けていく勇者を見つめる。


「あああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 しかし、勇者はその身をいくら焼かれてたとしても


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 その心と精神は一つたりともあきらめてはいなかった。


「……はああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 燃えさかる炎を剣を振り払ってかき消し、勇者は危機をだっする。


「…何っ!?」


 そして炎の柱から抜け出した勇者は火傷やけどの痛みをこらえながらも剣を空中で構える。


「【重剣じゅうけん月光波動斬げっこうはどうざん】っ!!」


 空中から剣を振り、放たれた三日月のように美しい輝きを持った斬撃ざんげきは魔王めがけて超高速で落ちてくる。


「!!」


 あまりの斬撃ざんげきの速さに反応が遅れ、あわてながらも右手で魔法陣を展開させてる。


「うぅ…!!」


 しかし片手での魔法陣の展開では限界があり、魔法陣はやぶられなかったものの、ドレスの一部を切られながら斬撃ざんげき衝撃じょうげきで魔王は少し右腕にダメージを負う。


「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


「!!」


 右腕を気にするひまあたえず、一気に勇者は魔王の元へと突っ込んでいく。


「…【エクスプロージョン・キャノン】ッ!!」


 魔王の後ろに高速展開された大きな魔法陣から、先ほどとは比べ物にならない威力いりょくの【エクスプロージョン・キャノン】が勇者に向けて放たれる。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 だが勇者は目の前に向かってくる超高熱の炎に少しも逃げようとせずに真正面へ向かっていく。


「【重剣じゅうけん月光直下げっこうちょっか】っ!!」


 勇者の身はその炎の中へと消えてゆく。


「…!?」


 だが勇者は【エクスプロージョン・キャノン】をきながら、さらに速度をあげて魔王の元へと向かってくる。


「…そんなっ!?」


「はあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


【エクスプロージョン・キャノン】を全てき、勇者は魔王との距離きょりを一気にちぢめていく。


「…くっ!!」


 魔王は両手で大きな魔法陣を急いで展開する。そして勇者が振り降おした剣は魔王が展開した魔法陣へ激しい音を立ててぶつかる。


「はあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




 しかし魔王が勇者の剣をふせいだのはごくわずかな一瞬で




「ああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




 気が付いた時には勇者の剣は魔王の胸元むなもといていた。






「…ぁあっ!!」






 勇者の渾身こんしんの一撃が入り、魔王は血しぶきを上げて後ろへと倒れていく。


「はぁ…、はぁ…」


 全ては終わりをむかえ、勇者の勝ちは確定かくていしたように見えた。






「…!!」








 しかし、たおれゆく魔王の目はまだ死んではいなかった。








「………【ヘルフレイム・ブロウ】ッ!!」


 胸元むなもとを切られた痛みをこらえながらも魔王は無理やりその場にって、いつわりの勝利におぼ油断ゆだんした勇者のみぞおちめがけて黒い炎をまとったこぶし渾身こんしんの一撃を与える。


「ぐおぉっ…!!」


 大きくえがいて勇者は後ろへと飛ばされる。


「うぅ…」


「コホッ…」


 勇者と魔王はお互いにもうボロボロだった。


「「はぁ…、はぁ…、はぁ…」」


 勇者は全身にった火傷やけどが強い痛みをはっして立つことすら辛くなり、魔王も切られた箇所かしょから大量出血たいりょうしゅっけつし意識をたもつことがやっとの状態だった。


「「はぁ…、……はぁ」」


 だがそれでも二人は殺し合いをやめようとはしない。


「「はぁ……、はぁ…………、…はぁ。」」


 自分に全てを預けてくれて、この場に立たせてくれたみんなの為に必ずこいつを殺すと決めた固い決意が二人を震え立たせていた。


「…【グラビティ・カット】!」


「…【スカイ・フライ】!」


 お互いにそれぞれ魔法を付加ふかして身を構える。そして二人はお互いの目が合った時理解する。


((…これが、お互いに最後の一撃だ…!!))




 二人は自身に残された全ての魔力を限界までにしぼる。




「はああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」




『ここで必ず終わらせる』。その意志の元に二人は一騎打いっきうちに持ちかける。






「…【フューチャー・エンド】ッ!!!!!」



「…【重剣じゅうけん・シャイン・ホープ】ッ!!!!!」






 もうじき消えてしまうだろう自分の命の事を気にかけることなく、全てをその手にそそぎんだ二人は






「勇者あああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」



「魔王おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」








 今ぶつかり合おうとしていた。








「「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」











「…【タイム・ストップ】」











 しかし二人がぶつかり合おうとした時








「「…!?」」








 白いスーツと白い短めのシルクハットを帽子ぼうしかぶった、勇者と魔王が共に見知らぬ青年が二人のぶつかり合いの中心にいつの間にかはいんできていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ