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勇者と魔王は真実の愛を求めて異世界を渡り行く  作者: usiroka
第零章 導く者と守る者 ※読まなくてOK!
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第一話 強襲 その一

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

※なおここは第零章ですので、本編に進みたい方は第五話の「殺し合い」からご覧ください。

「おおおおおぉぉぉっ!!」


「ぐはぁっ!!」


 暗い空からのわずかな光が差し込む暗い城の中、剣を持った一人の人間とその仲間たちは立ち防がる魔族達を力ずくで払いのけて目的地へと駆け足で向かっていた。


「通すな!魔王様の元へ絶対に勇者たちを踏み入れさせるなぁ!!」


「おおっ!!」


 地位が高い一人の魔族の指示と共に、迫力ある大きな掛け声と共に勇者たちの数倍以上いるの魔族たちはそれぞれ手に武器を持ち、血走った目で勇者たちを殺そうと真正面から迫ってきていた。


「はぁぁぁぁぁっ!」


 勇者との距離が縮まり、魔族の一人は勇者めがけて強烈な一撃を交えた剣を振り下ろす。しかし


「っ!!」


 その一撃はむなしくも勇者の剣によって轟音ごうおんと共に軽くあしらわれ、振りかざした剣が魔族の手から離れた時


「はっ!!」


 片手剣とは思えない程の重い一撃を乗せた勇者の剣は魔族の胸元を容赦ようしゃなく切りいた。


「かっ…、ぁ…」


 ひどく生々しい音を立てて、魔族は肉の塊となって床に倒れこんだ。


 しかし勇者は慈悲無じひなくその場を素早く後にし、向かってくる魔族も勇者と同じように倒れた仲間を気に掛けること無く、『勇者たちを必ず殺す』という殺意のみに意識を向けて勇者たちに襲い掛かろうとする。


「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」


「ハァァァァァァァァッ!!」


「おおおおおおおおおおぉっ!!」


 かえちにしようと勇者は剣を構えるも、後ろが何やらこちらに構えているのが目に入る。


「…魔法攻撃隊まほうこうげきたい!!弓兵隊きゅうへいたい!!放てーっ!!」


 はるか後ろでつえと弓を構えていた魔族たちが遠距離から放ってきた強力な魔弾と弓矢は空気を切りくかのように一斉いっせいに勇者めがけて飛んでくる。


「…!」


 だが勇者は足を一切止めることなく真っすぐに突き進む。そして魔弾と弓矢が突き進む勇者との距離が2mと縮まった時


「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…」


 勇者の後ろからたてと剣を持ち、よろいを身に着けた金髪と青いひとみの青年がもうスピードで勇者を追い抜き


「…ッ!」


 勢いよく地面を蹴り勇者の元へと放たれた魔弾と弓矢の目の前に自ら飛び込みたてを構えると


「【シールド・プロテクション】!!」


 たてに魔力を込め、防御魔法ぼうぎょまほうを発動して勇者に直撃するはずだった魔弾と弓矢を全て、爆発と共に身代わりとなり受け止めた。


「仲間を犠牲ぎせいにしないと先へ進めない…、人間というのは本当に無様ぶざまだなっ!!」


 先頭せんとうにいた魔族はたてとなった勇者の仲間の勇気を嘲笑あざわらった。


「…誰が無様ぶざまだって?」


「なっ…!?」


 しかし並大抵なみたいてい防御魔法ぼうぎょまほうを打ち崩すほどの強力な魔弾・弓矢をらったはずの青年は、かすり傷一つないまま黒い爆風を抜けて自分の行動を嘲笑あざわらった魔族の目の前に素早く現れる。


「くっ…!くそっ…!!」


 いきなり目の前に現れた青年に驚いた魔族は何とか体制を戻して素早く剣を振り下ろそうとしたものの


「…【シールド・ナックル】ッ!!」


 剣を振り下ろされる前に青年が放つたてによる強烈きょうれつな打撃の一撃により、頭蓋骨ずがいこつくだける嫌な音と地獄のような痛みを交えてはるか後ろへ飛ばされてしまった。


「…このぉっ!!」


 たてを大振りして隙だらけになった所を別方向からやりを構え、もうスピードで魔族の一人が青年の心臓に一撃をびせようとして、やり猛威もういに振るい串刺しにしようとする。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「ふっ!!」


 しかし青年は素早く体制を戻して、魔族のやりの一撃を完全に防ぐ。


「なっ…!?」


 魔族はやりによる一撃を跳ね返され、自身への反動で後ろへと足元をフラつかせて後ろへと後退してしまう。


 そして青年は魔族がフラついたわずかな瞬間を逃さず


「【アクア・スライシス】ッ!!」


 魔法の付加で水属性となって切れ味が数倍増した剣で素早く二連続で魔族を切りいた。


「ぅあ…」


 魔族が倒れて完全に動かなくなった所を確認した青年は、剣に付いていた魔族の血を軽く振り払うと即座に勇者の元へと走って戻ってきた。


「悪いアゼル!助かった!」


「気にするな!お前は前だけ見て走れ!今はなるべく魔王を倒す事だけに集中しろ!!」


 青年は勇者の横に並び、城の長い通路を駆け抜けていく。しかし


「おらぁっ!!」


 豪快ごうかいな音と共に通路の右にあった大きな扉が開いて、走る二人の後ろへ突然と数人の魔族が現れた。


「…しまった!」


「…!」


 突然と前と後ろで挟み撃ちにされた二人は思わず走るスピードを落としてしまい、後ろからくる魔族は思った以上の速さで二人の距離をどんどんちぢめていく。


(ヤバい…!俺がおとりになるしか…!)


 後ろから来た魔族達は二人を追い詰めていき、勇者を守ろうとたてを構え立ち止まったアゼルへ一斉に攻撃を仕掛けていく。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇっ!」


「…くっ!」


「アゼル!!」


 アゼルが魔族たちの一斉攻撃いっせいこうげきを死を持ってでも受けようと覚悟を決めようとした時


「…【フィールズ・アイス・ショウズ】!!」


 間一髪かんいっぱつでアゼルと追いかけてきた魔族たちの中心へ入り込んだ男性がやりを地面に突き刺した瞬間、魔法でとがった氷が発生してうまい具合に魔族たちを足止めした。


「…全くアゼル、進むことも大切だがお前は一つ間を置いて少しでも冷静になろうとしろ!」


「分かってるよニル…。いちいち言わなくって良いってーの!」


「…ったく。まぁ、お前らの無茶にはもう慣れたけどな!」


 ニルは地面に刺さったやりを改めて自分の手に取り、足止め代わりの氷を解除してアゼル達を後ろから攻撃しようとした魔族たちの中へと向かっていく。


「…チッ!!邪魔じゃましやがって…!!」


 あと少しでアゼルを倒せたかもしれないのに、攻撃を邪魔じゃまされたことに腹を立てた魔族たちは怒りをあらわにしてニルに向かっていく。


「…【フリーズ・ピック・ランス】」


 ニルの魔法の詠唱えいしょうと共にやり先端せんたんは強力な冷気をまとい、おぼろげな水色の光をはっする。


「おらぁぁぁぁぁぁっ!!」


 魔族たちの一人がニルを返り討ちにしようと殴りかかろうとする。


「…遅い」


 しかし殴りかかろうとするものの魔族の攻撃は全くニルに当たらず、ニルは魔族の打撃を軽々と容易よういに避けていく。


「クソッ…!!何で当たらない…!?」


「…。」


「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 魔族が我を少し忘れ無駄むだに大きく振りかぶって攻撃を仕掛けようとする。


「…。」


 だがそれもあっさりとニルは避ける。そしてニルは少し我を忘れた魔族のふところ


「…ふっ!」


 冷気をまとったやりを突き出した。


「くぅっ…!!」


 突如とつじょと走る痛みと冷たさに魔族は苦痛の表情を浮かべる。


「…!」


 ニルの攻撃の手はこれだけでは止まらない。魔族に刺さったやりを一瞬で抜き、別方向にいる魔族にもやりの攻撃を的確に当てていく。


「うぉっ…!」


「…くぁっ!!」


「うぐっ…」


 その場にいた魔族全員に攻撃を終えたニルはやり先端せんたんに付与させていた魔法を解除して、その場を去ろうとする。


「クソったれが…!!なめやがって!!」


 だが攻撃を受けた魔族はそれぞれ傷口を抑えながらも全員立ち上がり、改めてニルに攻撃を仕掛けようと向かっていく。


「結局誰一人殺せない臆病者おくびょうものが!!おのれのその無様ぶざまな行いにはじて死ぬがいい!!」


 大きな怒りをあらわにして魔族たちはニルの元へ向かってくる。


「…。」


 危機的な状況で何故なぜかニルは魔族たちのいる方向へ少しだけ振り返る。


「うぉぁぁぁぁぁっ!!」


 あと少しで魔族の打撃がニルの顔面に入る。魔族は自分の一撃がニルに入ったと思った瞬間


「がっ…!?」


 何故か魔族は突然と足首を何者かに掴まれたように、地面へと急に倒れ転んだ。


「なっ…、何が…!?」


 倒れた原因が何なのかと魔族はあわてて足元を見る。


「…!?」


 自身の足元を確認すると地面と同化するようにいつの間にか足が凍りついており、さらに刺された傷口から広がるようにしてどんどん凍り始めていた。


「…バカな!?いつの間に…!?」


 自分が凍りつきそうになるの必死に抵抗ていこうするが、その抵抗ていこうむなしく自身が凍りつくのを魔族は抑えられない。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「!?」


 突然の仲間の悲鳴に魔族はあわてて後ろの周りを見る。


「…なっ!?」


「お…、ぉあ…」


「い、いっ、痛い…!!止めて…くれ…!」


「あ…、あぁぁ…!」


「嫌だぁ!やめろ!やめろぉっ!!やめてくれーっ!!」


 ニルに攻撃を受けていた魔族たちは悲鳴をげて次々と凍りつていく。

 そして魔族は自身が凍りついていくことに冷たさと共に恐怖が強まっていくの強く感じてしまった。


「…誰も殺せない臆病者おくびょうものか」


 今まで黙っていたニルが静かに口を開き、魔族は少し震えながらニルの元を見る。


「違うな」


「…!!」


 見上げた先にいたニルの見下す視線は氷のようにとても冷たく、強烈きょうれつ威圧感いあつかんを魔族に与えていた。


「ぁ…、あぁ…」


 その強烈きょうれつすぎる威圧感いあつかんと自身が凍る恐怖に魔族は耐えきれなくなり、『頼む!助けてくれ!!』と何とか口を開こうとする。

 しかし身体を侵食しんしょくする氷の冷たさと目の前にいるニルに恐怖して言葉を発することが出来なかった。


「俺はお前たちに、俺が出来る最も残酷ざんこくな殺しを行っただけだ…」


 そう一言告ひとことつげるとニルは魔族に背を向けその場を去って行った。


「ぁ…」


 助けを求めようとした魔族の全身が凍り付いた時、そこにあるのは見るも無残むざんな魔族たちの凍り付いた姿だけであった。

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