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3/4

脚本 3/3

■監督の自室内

どこかから落下してきて尻餅を突く日暮。

少しして周囲の状況に気がつき、怪しみながらゆっくりと立ち上がる。

薄暗い部屋の中に所狭しと並んでいる、フィギュアや本、DVDの数々。

日暮「ここは一体……」

杉田「――暮……日暮……日暮!」

部屋の外から徐々に聞こえてくる、もやが掛かったような杉田の声。

日暮、慌てて部屋のふすまを開ける。

日暮「杉田さん!」

ふすまを開けた日暮の顔にオレンジ色の光が照りつける。日暮、絶句。

部屋の外には、オレンジ色の光で満たされた、巨大なデータの空間が広がっている。その中に浮かび上がるモノリスと、半透明の杉田の顔。

日暮「こ、これは……!?」

杉田「……日暮、無事でよかった」

日暮「杉田さん、ヨーロッパに行ったんじゃないんですか……? 一体何がどうなってるんですか。ここは一体何処なんですか!」

杉田「ここは……『フォース・ガーディアンズ』の最深部。この世界を生み出す過程で無意識に複製された、監督のアンダーワールドだ。俺は用済みなものとして、データの塊に還元されてしまった」

日暮「データですって……!?」

室長「――その通り。いわばこの場所こそが、レドラスタジオそのものなのだ」

日暮がビックリして振り返ると、そこにいつの間にか室長が立っている。

室長、片手に闇雄のものだった剣を持ち、弄くって遊んでいる。

室長「まったく、闇雄も最後に余計なことをしてくれたよ」

日暮「室長……アンタ知ってたのか。杉田さんがこんなことになってるって。いったいどういうことなんですか。アンタ一体何者なんですか!」

 怪しげに光る室長のサングラス。

杉田「俺が言ってやる。室長は……その男の正体は、監督のアバターだ!」

日暮「アバター……!?」

室長「ご明察。監督の描いたシナリオを円滑に進行させるため、この世界に送り込まれた監督の分身体。それこそが私なのだ」

杉田「前回の戦いのときも、今回も、俺たちは何度か明らかに不自然な展開に遭遇することがあった。全ては室長の仕業だ……監督の思惑から外れた展開が起こるたびに、奴がそれを力ずくで修正しているんだ!」

イメージとして挿入される、前作での室長が暗躍する場面。

日暮「そういうことだったのか……」

室長「ノンノンノン、不自然なのはむしろ君たちだ。我がマジェスティの描いた完全なるシナリオに逆らい、好き勝手に動き回る。それを修正するのに、私がどれだけ苦労することか」

日暮「予定調和にしか動かない人間に、いったい何の魅力があるっていうんだ! 人が人として自由に動き出す……それこそが物語だろう!」

室長「しかしその予定調和に救われているのが、君たちヒーローというものだ。約束された幸福に背を向け、過剰に自由を求めるのは贅沢というものだよ」

日暮「他人が勝手に決めたシナリオなんて……俺は幸福だとは思わない!」

室長「本当に贅沢だな、君は」

日暮「命じられたままにしか動けない、アンタには絶対分からないさ」

室長「命じられたまま、ね……」

意味ありげに呟き、俯き気味になる室長。

杉田「時間がない日暮……今すぐこのモノリスを破壊し、カントクをシャットダウンするんだ!」

日暮「でも、そんなことをしたら杉田さんは……!」

杉田「構うな日暮、この世界を守――――」

突然ノイズが走り、杉田の顔と声が掻き消えていく。

代わりにデータ空間の内部に、半透明の巨大ともだちヘッドが出現する。

日暮「杉田さん!?」

監督「表に出てくるな、我が“創造されし者たち”よ……!」

室長「我がマジェスティ、カントク!」

日暮「こ、こいつが……!?」

監督「室長よ……この世界はもう潮時だ。我が支配から抜け出すものが多すぎる。我は『フォース・ガーディアンズ』を捨て、新たな物語を構築する」

日暮「何だって!?」

室長「素晴らしいお考えです、マジェスティ」

監督「ケーリンXを始末するのだ、室長。それで『フォース・ガーディアンズ』と、お前の役目は終わりとなる」

室長「ウィ。お待ちになっていてください」

そう言って室長、日暮に剣を突きつける。

たじろぐ日暮。

室長「見てのとおりだ日暮、いやケーリンX。創造主の意思に従わぬ物語など、所詮は必要とされない。どれだけ抗おうとも、最後は見捨てられる運命なのだ」

日暮「くっ……」

室長「では永遠にさようなら。私は君を倒した後――」

監督「――室長、お前も残れ!」

室長「……えっ」

監督「データは揃った。次のお前を生み出す準備も!」

室長「しかしマジェスティ、私は、」

監督「もう要らぬ! 私は存在するのだ……私だけが!」

室長「そうですか……」

会話を聞きつつ、一歩も動けないでいる日暮。

室長「つまりは私も、駒のひとつに過ぎなかったということですね……」

監督「さぁやれ、室長!」

室長「ふんっ!」

振り返った室長、日暮に向けていた剣をデータ空間のモノリス目掛けて突きたてる。一同驚愕。

日暮「なっ……」

監督「どういうことだ……室長……貴様……!」

室長「用済みはあなたですよ……マジェスティ!」

悲鳴と共にモノリスが木っ端微塵に砕け散り、データ空間から大爆発が発生して部屋中に広がる。連鎖する爆発。

日暮「杉田さぁぁぁぁぁん!」

大爆発を起こす監督の部屋。


■市民の森/風車小屋裏の森林

転がってくる日暮。

ゆっくりと歩いてくる室長を、憎々しげな表情で睨みつける。

日暮「この……よくも杉田さんを!」

室長「ああしなければ、我々が消されていた。そして遅かれ早かれ、杉田もな」

日暮「どうしてあんなことを!」

室長「私はね、今の今まで自分は支配する側の人間だと思っていた。数年前、カントクのアバターとして生を受けてからずっとね。けれども、ソレは間違いだった。私も所詮、カントクにとっては使い捨ての駒に過ぎなかったんだよ」

イメージ映像として挿入される、マスカレイド、スカル、アクセルへの変身動画。

日暮「それがどうしたっていうんだ?」

室長「それだけさ。だが私にとっては、それが堪らなく許せない。私は君たち他の人間とは違う……創造主が持つ支配欲の結晶にして分身体……この世界の支配者たるカントクと、同等の権利を持つに相応しい唯一の存在なのだ!」

日暮、絶句している。

室長「その私が、お前たちとひと括りにされて消し去られるだと……? 断じて許せぬ! そんなものが運命ならば、逆流させてやろう。オリジナルのカントク亡き今……この私が、新たなカントクとなるのだ!」

高笑いする室長。

立ち上がり、大声を上げてガムシャラに突っ込んでいく日暮。

室長が片手を掲げてパッと開くと、衝撃波が発生して吹き飛ばされる日暮。

室長「主役は私一人でいい……ケーリンX、貴様は滅びろ!」

日暮「笑わせるぜ……」

室長「なんだと?」

日暮「自分で息をするようになった……ようやく本当の命を持った人間を押さえつけてまで、何が描けるっていうんだ。机上の存在から、本当に生きるようになった人間を切り捨ててまで、誰が喜ぶ。室長……いやカントクよ、お前は何も分かっていない!」

室長「一介のキャラクター風情が言うものだな。だが貴様がどう足掻こうと、物語の支配者はこの私なのだ。勝てるわけなどない!」

? 「ケーリンX!」

自信たっぷりに言い切った室長の前に、突然聞こえてくる声。

日暮・室長「!?」

突然、天から差し込むまばゆいばかりの光。

その中から無数の、笑顔を見せた人々の姿が出現する。

日暮と、室長の周囲を飛び交う聖なるエネルギー。あちこちから響き渡る、日暮を応援する声(ネット上で動画経由のエキストラ募集)。

観客1「負けるな、ケーリンX!」

観客2「立て、立つんだケーリンX!」

観客3・4「「ケーリンX!」」

無数のエネルギーに取り巻かれた室長、奇声を上げながら、剣を振り回してそれらを振り払おうとしている。

日暮「体中に……力がみなぎってくる。これがエールの力か!」

空を見上げた日暮、心の底から嬉しそうに、

日暮「皆……応援してくれているのか!」

室長「馬鹿な! この世界の支配者である私よりも、彼らは貴様の方を選んだというのか!?」

日暮「見たか室長……これが真の物語ってヤツだ。人間は人間として生き、皆がそれを応援する……彼らはお前一人に支配された世界よりも、俺たちが活躍する世界を望んだんだ!」

室長「おのれ!」

日暮「それに運命は抗うものじゃない……乗り越えるものだ!」

室長「尤もらしいことを言うなぁぁぁぁぁぁ!」

日暮「これで良いんだよな、杉田さん……」

いつの間にか腕にはめていたモーフィンブレスを見つめつつ、呟く日暮。

背中にポンと手が置かれ、振り向くとそこに杉田が立っている。

励ますように無言で頷く杉田イメージ

日暮、そちらに向かって笑顔で頷き返す。

日暮「皆……いくぞ!」

ゴーゴーファイブの変身ポーズをとる日暮。

日暮「着装!」

モーフィンブレスから放たれる光。

電子データの渦のようなものが日暮の体を駆け上がっていくと、数秒で変身を完了するケーリンX(出来れば黒バックのバンク風)。

即座にビシッと敬礼を決め、身構えるケーリンX。

ケーリンX「ケーリンX!」

頭部のアップ(ゴーグルの透けて見える演出再現)。

ケーリンX「人の夢想は地球の未来……燃える中二魂!」

「創作戦隊!」「フォース!」「ガーディアンズ!」

「出場!」

5人分の口上を一人で全部言ってしまうケーリンX。

雄叫びを上げて突っ込んでくる室長とバトルスタート。

基本、徒手空拳でのバトル(大体20秒ぐらい)。

最後の最後で、ディーソードベガを取り出したケーリンXが、二連続ぐらいで室長をぶった切って、跳ね飛ばす。

地面を転がる室長。

室長「ぐわああっ」

ケーリンX「今だ……メダガブリュー!」

ブレスに向かって命令するような体勢をとるケーリンX。

すると何処からともなく吠え声を上げて、アックス形態のメダガブリューが飛び跳ねながらケーリンXの手の中に飛び込んでくる。

いつの間にかバズーカモードに変形させて構えるケーリンX。

ケーリンX「ブレイカーモード! ターゲットロックオン!」

室長「なっ……!」

ケーリンX「カラミティブレイカー!」

正面からの画。ケーリンXの構えたバズーカから放たれる、超エネルギーの光線。

室長の体に命中し、火花が爆ぜる。

カッコよくバズーカを構えなおし、室長に背を向ける日暮。

地面にゆっくりと崩れ落ち、大爆発する室長。

室長「ぐわああああああああああああああ!」

 バズーカを下ろし、サッと敬礼するケーリンX。

ケーリンX「任務完了!」

再び割れる空。

異空間のトンネルを逆向きに飛ばされるケーリンX。

ケーリンX「トモダチゾーン脱出!」


■バルコニー

バルコニーの床に着地するケーリンX。

立ち上がって振り向くと、ボロボロになった室長がよろめきながら現れる。

咄嗟に身構えるケーリンX。

しかし、様子がおかしい室長。雄叫びを上げながら天を仰ぐ。

室長「ぬぅう……うぉああああああああああ!」

室長の全身から電流が迸り、やがて強烈な光に包まれる。

室長、真の姿であるカントクに進化(巨大ともだちヘッド)。

ケーリンX「お前は!」

カントク「ケーリンX……私は、レドラスタジオの支配者にして、『フォース・ガーディアンズ』の監督である! 私を追い詰めたその執念……見事だと褒めてとらそう」

モザイクが発生して真っ白な画面になり、やがて横スクロールゲームのような二次元的バトルフィールドが出現する。


■二次元のゲーム的空間

巨大なカントクと、ケーリンX、向かい合って立っている。

カントク「うぬの五体……バラバラに引き裂いてくれよう!」

第一回戦開幕。


(以下、グリーンバックで素材作って、全部合成で戦闘作成)


ダメージが溜まってきたカントクの全身、小爆発を起こし始める。

カントク「フォース・ガーディアンズ――愚かなキャラクターども!」

巨大ともだちヘッドが変形し、剣や砲、角などを持った魔神のような姿へと進化する。

カントク「――私に従えーーーー!」

第二回戦開幕。


(以下、グリーンバックで素材作って、全部合成で作成)


ダメージが限界に達したカントク、より大きな爆発を起こして崩壊していく。

カントク「私が――支配する―――支配――――ぐわぁー!」

大爆発に飲み込まれ、画面が真っ白になる。


■リザルト画面


■何処かの空き地

巨大カントクから分離した大量の残骸がつもった場所。

落下してきたケーリンX、地面に着地し息を切らす。

ケーリンX「はぁはぁ……やったか!?」

しかし瓦礫の中から一筋の光が天に向かって伸び、前作の姿に戻った室長がよろめきながら現れる。

室長「まだだ……まだ終わらんよ……!」

ケーリンX「まだ生きていたのか!」

室長「私は負けん……貴様には負けんぞ……私は、支配する者――」

言い終わらないうちに、ゴロゴロという雷の音。

頭上がチカチカと光り輝き、ケーリンXの目の前で一発の落雷が起こる。

室長、雷に打たれて蒸発。

驚愕するケーリンX。


■監督の自室内

パソコンの画面。

猛スピードで削除されていく脚本の一場面。

カメラが動くと、BackSpaceキーを押している監督の指。

ともだちマスクを外した監督、諦めたように椅子にもたれる。

監督「私の負けだ……ケーリンX。いや、日暮」


■何処かの空き地

変身を解除したケーリンX、ふらふらと近くの木などに寄りかかる。

日暮「全てが終わった……だけど失ったものが多すぎる……」

空を見上げる日暮。

日暮「この戦いは、一体何だったんだろう……」

街並みの向こう側から、突然光り輝く龍が舞い上がる。

その軌跡に舞い散る金色の光の粒。

その中に、笑顔で昇天していく杉田の顔。

日暮「杉田さん……!」


■監督の自室内

疲れきったように、パソコンの前で椅子にもたれている監督。

そこに聞こえてくる、玄関から監督を呼ぶ声(日暮と同じ声)。

監督「分かったよぉ」

カメラ、監督のパソコンに表示された脚本に向かっていく。

杉田の声

「いつから私たちは、こんな作品を作るようになったのでしょうか。監督に向かって一歩、歩み出した日から、それは始まっていたのかもしれません。思い出してください、もう一度……」


□エンディングクレジット


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