勇者降臨
最近、休んでいて、久しぶりに書きました
続ける事のきつさを改めて実感しましたが、また休憩します
サクッ
「あ〜やっと、衣装の着付け大変だったな〜」
パリッパリッ
「私もです」
モシャモシャ
「着付けがあんなにも大変とは思わなかったっすよ」
ウンウン、パリッ
「そういえば、黒くん」
ムシャムシャ、ん?
俺は咲耶に名前を呼ばれ、クッキーを食べるのを続けながら顔を上げた。
「黒くん。今さっきはあんなこと言ってたけど、あの人達のことが、本当に好きになったりしてないよね?」
バキッ!
ふるふるふる
俺はその問いに対して全力で否定の為に首を横に振った。
ついでに、その前になった不気味な音は顎に力を入れすぎてクッキーと共に俺の奥歯が成仏した音だ。
それ程、怖かったのだ。問いを発した咲耶の顔が。何、アレ、後ろに大威徳明王のあの憤怒の顔がスタンドとして現れたんだけど。あんなスキルあったか?
俺が頭を全力で横にシェイクしながら思考していると咲耶が微笑みながら言った。
「あんまり、他の女の人とイチャつくと私、妬いちゃうからね」
「そうっすよ。先輩、あんまり他の人とイチャつかないで下さい。姉ちゃんはともかく、女の人が全部先輩に持ってかれると俺、本当に困ります」
「そうだぞ。黒。気を付けろ」
何故だ。何故、俺は責められるんだ。俺は悪い事はしてないぞ。あの時は、不可抗力であり、故意的ではない。よって、俺を責めるのはおかしい。うんうん。
今、俺達は王城の休憩室でテーブルに置かれているお菓子を貪りながら、さっきの着せ替え隊のことについて駄弁っていた。
もうすぐ、勇者承認の儀というのに緊張しているようには見えない。まぁ、それ程、着せ替え隊が強烈だったのだ。
ちなみに、逝かれてしまった俺の歯はあとからメイドさんがスキルの力で一瞬の内に直してしまった。治癒系のスキルって便利ねぇ。ついでにメイドさんの顔が治す時近くて、咲耶のスタンドが俺を睨んでいた。やめて、こわいから、ホント。
カッカッカッ
誰かがこちらに走ってくる音がドアの奥から聞こえる。勇者承認の儀の準備が整った様だ。
「緊張するっすね」
「うん」
「そうだな」
うんうん
皆、かなり緊張しているようだ。さっきと比べて口数が減ってしまった。
すると、扉が開いて、一人の使用人が現れた。
「勇者の皆様。準備が整いましたので、大広間に入場してもらいます。私に付いてきてください」
仏頂面の使用人の声が少し震えていて、緊張が見て取れた。王家の使用人ですらも緊張する程の大事な儀式の主役が自分達という事が信じられない。
数日前は一学校の生徒会役員だった自分達が、まさかこんなことになるなんて、誰がわかっただろうか。
そんなことを考えながら緊張して早足になったり、遅足になったりする使用人に付いていく。
豪華な装飾が並ぶ道を歩いて数分後、王城で見た中でもっとも、大きく、きらびやかな扉の前で使用人は止まった。
扉の両脇に控えていた兵士がこちらにおじぎをしてきたので返した。
「今から、勇者承認の儀があります。扉の奥には沢山の人がいらっしゃいますが、気にせず堂々と入場してください。では、健闘を祈ります」
汗をかいている使用人が俺らに言った。健闘って結構大袈裟だな〜。
扉の奥から「勇者入場!」と聞こえた。
その声に続いて扉を両脇に居た兵士が開いていく。
パチパチパチッ!!!
静かに開いていく扉の奥から、地が揺れるぐらい、はち切れんばかりの拍手が4人の勇者を迎える。
その4人の勇者である、俺たちは一瞬、圧倒されながらも赤き道を歩んでいく。
使用人の言う通りだった。ガチで健闘しなきゃな。これはヤバイ。多すぎ。 周り見渡すと、人、人、人、人…すんごい居る。こえぇ。内心、冷や汗かきながら、王の前まで行く。
王の前に這う這うの体で俺らはつくと、拍手が止んだ。
すると、王の隣にいた、如何にも大臣な眼鏡を掛けた男が一歩前に出、1枚の紙を前に出した。
「この4人の者達を勇者とす!皆の者っ!彼らは異世界から来た。なので、我らの世界のことに疎く、困る時があるだろう!その時は全力をもって手助けをすべしっ!彼らは我らの為に!恐るべき敵と戦ってくださる。これ程勇気ある者を勇者以外何と言おうか!もう1度言う!彼らは勇者である!」
「「「「「勇者!勇者!勇者!勇者!」」」」」
……何コレ。
大臣が身振り手振りで演説をしていたが、あんなに声が出る人とは思わなかった。しかも、何、周りの人々の勇者コール。狂気に満ちてるでしょ。
周りの狂った皆さんが勇者コールを熱唱していると、唯一、静かにそれを見ていた王様が右手を掲げる。
すると、たちまちの内に勇者コールが静まる。やんべ。王様かっこよすぎっしょ。
「大臣も言った通り、王家、アーカナス王国はこの4人を勇者と認める。勇者よ。我らの為に戦ってくれるか?」
「「「「はっっ」」」」
覇気を纏ったという表現が正しい王様の一言に俺らは跪いて返事をした。
そして、それを見ていた周りの人々から拍手が再び鳴り響く。
この世界に勇者が降臨したことを祝福していた。
いやっと、10話目!
これ100話いくかね〜