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創作雑感 Revised 1  作者: 宮沢弘
2: わかりやすさ
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2−2: わかりやすさ(冒頭)

 ファンタジーでもSFでも、「冒頭をどうするか」というのは悩ましい問題かと思います。ファンタジーとSFに限る話ではないのですが、他のジャンルとかだとどうにかごまかす方法は結構あるので。

 先日、冒頭についてちょっと書いたこともあり、そちらに書いたのと合わせていくつか項目を挙げたいと思います。


 冒頭ですが、大雑把にこの4類があると考えてみてください:

   1. 設定を説明的に書き、一気に世界を構築する

   2. 社会を書く

   3. 作中の日常を描く中で世界を構築する

   4. 現実、あるいは実在する虚構を前提とする


 なお2.と3.には、おそらくさらに次の三つがあります:

     a. 話の導入で「なんでそういう話になっているのか」というと

       ころを書く、あるいは語らせるなど

     b. その世界がわかる話から入る

     c. ただ単に話に入る


 2.と3.の違いは、2.はその世界はなんなのかをピンポイントで指す社会の状況や環境、出来事から書き始めるものとします。もしかしたら、その時点で主要な人物が登場するかもしれません。対して3.は、おそらくは主人公の行動や考えから書いていくことになるだろうと思います。

 これらの中で、避けたほうがいいと一般には思われるだろうものとしては、まず1が挙げられるでしょう。次に2.a.、3.aというところでしょうか。

 対して、文芸において一番いいと思われているだろうものは、4.の亜種であるこれでしょう:

   4’. 現実を舞台とする


 小説家になろうなどを眺めていた思うのは、「3.c.」が多いのではないかということです。もっとも、この分類の項目は互いに排他的なものではないので、複数の項目の要素を持った作品というのもあります。そのような場合だと、「3.c.」と「1.」、あるいは「3.c.」と「2.a.」の組み合せが多いかもしれません。

 また、そこには「2−1: わかりやすさ(用語)」で触れた問題もからんできます。結果として感じるのは、「冒頭から『読者を置き去り』感があふれている」作品が多いということです。

 もちろん、それがうまくできる作者もいます。ですが、どちらかというと、「SFやファンタジーというものについてのイメージがズレているんだろうな」という印象を受けることのほうが多いのです。

 言うなら、前稿で書いた「SFっぽいフレーバーを出そうとしている」にもかかわらず、壮絶に明後日の方向の書きかたをしてすっ転んでいるというところでしょうか。あるいは、最初の一文字を書こうとした場所にバナナの皮があったというような感じかもしれません。

 「3.c.」と「1.」、あるいは「3.c.」と「2.a.」と書いてもイメージがわきにくいとは思います。そこでとくに「3.c.」の、問題となる場合がどんな感じなのか、そのままというわけではありませんが、近いものを書いてみようかと思います:

|    イーエムエックス 創作雑感

|    コントロール・ケー・オー・エフ

|    コントロール・エックス

|    コントロール・エックス

|    コントロール・エックス

|    コントロール・エックス

|    コントロール・エックス

|    コントロール・ケー・オー・エム

|    ようやく目的の場所に着き、俺は編集を始めた。


みたいな感じを想像してみてください。ここでの「俺」の、編集作業という日常が突然はじまっていて、謎用語が並んでいます。コントロールなんとかは実際に私が使っている、エディタのキーバインディングなので、私には意味があり、私が使っているエディタにも意味があります。言うなら、「世界設定で作った用語をガタガタ並べている」ようなものと思ってください。ですが、読んだかたには、これだろうと世界設定の用語だろうと意味不明でしょう。雰囲気としてですが、明後日の方向とか読者置き去りというのは、こんなものと思ってください。

 おそらくは、SFとファンタジーは他のジャンルと違い、その世界で起こることはまったくの未確定だという点も関係しているのかもしれません。他のジャンルの場合、具体的な内容や内容の順序は前後するとしても、なにが起ってどうなるかは、おおまかなところでは決まっていると言っていいでしょう。ですから、言ってしまえば「冒頭なんてどうでもいい」わけです。あるいは、世界の構築など不要、あるいはほとんど不要なのです。ですが、SFとファンタジーは何が起こるのか、そしてどうなるのかがまったくの未確定です。そもそも世界そのものが、始めて読むときには、読者にとって未確定です。その両方の未確定なのを、冒頭でそれなりに確定しないといけないのです。

 そういう状態で、「SFっぽい、あるいはファンタジーっぽいフレーバーを出そうとした」らどうなるでしょうか? 用語、なにを書くかの順番、作者の技術などなどがあいまって、紙媒体だったら即座に焼却炉行きの作品になりやすいことは想像に難くないでしょう。

 SFとファンタジーは、他のジャンルに比べれば読者がすくないジャンルです。小説家になろうでも、そうかもしれません。他のジャンルから入った作者が、他のジャンルと同じつもりで、つまりは4.’のさらに亜種と言えそうなこれ:

   4”. 作中の世界を、現実を舞台とするかのように扱う


という方法を取るなら、「3.c.」と「1.」、あるいは「3.c.」と「2.a.」になってしまうのも、個人的にはうなずけるかなと思います。

 その方法は不可能だというわけではありません。というより、上記のどれのどういう組み合せでもかまわないのです。ただ、それができるかどうかは別の話というだけで。

 というわけで、ちょっと冒頭を見直してみてはいかがでしょうか?


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