4−6: オリジナリティ
「4−3: 設定・考証(世界の構築)」で「アンバランス」とか「どうにか」とか書いちゃったので、「オリジナリティ」に触れないわけにもいかないかなぁ。そこに触れるの、難しいから避けたいところなんですが。
えーと、簡単なところから。
小説などでも参考文献や、あるいは小説ならではかもしれませんが「影響を受けた作品」をちゃんとリストアップするというのがマナーになればなぁと思います。
これは、面倒な作業ではありますが、明らかな利点があります。「これに影響を受けた」と明言しているなら、「だがこの作品ではこのようにした」という議論ができるからです。議論の結論がどうなるにしても、議論ができるという土台があるのは大きいのではないでしょうか? その土台がなければ、「パクリだ」と言われてなにかを言い返しても、相手はいつまでも「パクリだ」と言える。もっとぶっちゃけて言うなら、書き手は「影響を受けましたがなにか?」と言える。はじめから明言しているのだ。それ以上、譲ることはなにもない。
あるいは、影響を受けた作品と作者や会社に対して、「影響を受けました。こういう形になりましたが、影響を与えてくれてありがとうございます」と明らかにすることにもなる。
ただし、明らかな欠点もある。ある作品をリストに挙げていなかったなら、つまりは知らなかったなら、それは作者の落ち度になる。それは、作者の読書量を示すことになるし、創作活動への参入のハードルを高めてしまうことにもなるだろう。もう一つ。「影響を受けましたがなにか?」と言った上で、「それでもこれは私の作品だ」と言えるなにかが必要なわけですが。これも参入のハードルを高めてしまうかもしれません。
このような利点と欠点の、どちらを重視するのがいいのか。あるいは、どちらの影響が大きいのか。それは私にはわかりません。
えーと、次。
「正真正銘のオリジナリティなど存在しない」とか、「オリジナリティは既存のものの組み合わせだ」という話を聞いたことがある人ももすくなくはないと思います。
それだと、「最初に語った人はなにを語ったのか」という疑問が出てきます。まぁそれは50万年とか100万年とか昔の話だと思うので、その間に「すべてが語られた」という可能性はありますし、最初に語った人などいないという可能性もありますが――特定の誰か、とくに個人には限りません。
ただ、「オリジナリティは既存のものの組み合わせだ」というあたりには、別の意味もあるのかなとは思います。というのは、そういうものでないと、受け手にとってわかりにくいものになるみたいな。
えーと、それじゃぁ次。
と言っても「オリジナリティは既存のものの組み合わせだ」関連ですが。
組み合わせだとしても、元にあるものが透けて見えるようだと、ちょっといただけないかなと思います。既存のアイディアだとしても、それが十分に消化されているかいないかが重要かなぁと思います。
たとえばですが、ゾンビやゾンビらしきものが現われる小説が書かれたとします。ゾンビやゾンビらしきものと読み手にわかる時点で、オリジナリティはかなり減点されるんじゃないかと思います。
まぁ、それを言ったら「ゾンビもの、全部減点対象じゃん」と返されるかもしれませんが。うーん、全部減点対象だと思いますけどね。もちろん、ゾンビものに限りませんが。
それでは次に。
「4−3: 設定・考証(世界の構築)」にて、「IF深度」というものを設定しました。これとオリジナリティを掛け合わせてみようと思います。まずは再掲します:
IF深度 体感など
0 −
1 IFであると意識する対象外
2 IFであるとはいちいち気にしない
3 IFであるとはわかるが、細かいことは気にならない
4 IFであるとわかる。状況を成り立たせるのに必要とはわかる
5弱 そのIFについては、説明に相当するものが欲しいと感じる。
なくとも、類推などは可能
5強 そのIFについては、説明に相当するものがないと、世界の理
解に支障を感じる
6弱 そのIFがなければ、世界の維持が困難になる
6強 そのIFがなければ、作品を書いたり作る理由が存在しない
(大人の事情を除く)
7 同上
また、こうも書きました:
ミステリで事件が起こるというのはIF深度で4としましょう。
その上で、いわゆる「なろうテンプレ」のようなものとして、こういうものを考えてみます:
1. ファンタジーふう世界に
2. 転移か転生して
3. 主人公最強をする
さて、1.のIF深度はどれくらいでしょう。「なぜファンタジーふう世界なのか」などは、たぶん問題になっていないでしょうから、IF深度は4か3とします。「VRMMOで」でもかまわないでしょうし。
2.のIF深度はどうれくらいでしょうか。「なぜ転移か転生したのか」などは、「そっちの世界の危機により召喚した」とかはあるかもしれません。そのあたりも含めてIF深度は3,4,5のあたりというところでしょうか。
3.のIF深度はどうでしょう。そのIFが存在する理由は、ありますかね? どうも思いつかないので、深めにIF深度は3としておきます。
さて、そうだとしてですが、こういう条件で作品の独自色を出すのはどこが使えるでしょうか。おそらくは3.ではないかと思います。どのように最強をするのかというところですね。でも、それ、IF深度3です。どれだけ設定を盛り込もうと、異色と思える設定を使おうと、IF深度3での話。
これについては「悪意のある評価だ」と言われるかもしれませんし、「なろうテンプレのようなものだからだ」と言われるかもしれません。それはかまいません。それでですが、ではなろうテンプレふう以外の作品も見てみてください。およそ、IF深度5弱が一番深いIF深度だろうと思います。
ほかの場合もちょっと考えてみます。SFのサブジャンルの場合、とくにサブジャンルが形成される過程においては、深い部分に対しての新しい概念の導入が必要になるため、IF深度6弱は最低限でも必要でしょう。SFのサブジャンルでも、もうできあがっている上で書く場合、上のなろうテンプレふうのものと同じ程度にしかならないでしょう。
すると、IF深度5弱とIF深度6弱が、仮にですが、出てきました。ちょうどIF深度5強を挟んでいます。なので、ここではこう考えてみたいと思います:
IF深度5強に到達しているかどうかを、オリジナリティがあるかどうか
の基準とする
IF深度5強ならオリジナリティがあるのか、IF深度5強ではまだどちらとも言えないのかはわかりませんが。
ただ、「4−5: モチーフなどの繰り返し」で触れた「神話素」くらいの段階で分析して、IF深度5強に達っしていない作品は、「オリジナリティを問題にするだけのものを持たない」という提案をしてみたいと思います。