3−5: 構成(リズムと終わること)
「1−4: 形容と説明、描写は悪手」、「3−9: 解釈・理解」(予定)で触れた「書かないことこそ書くこと」とかとも関係します。また、人によって好みはあるでしょう。ただ、これははっきり書いておきたいということが二点あります:
+ 終わらない話はない。
+ リズムを自覚する。
この二つは関係してます。
私の場合、中編相当くらいでの2,000文字 x 5話 x 5章が基本的なリズムです。2,000文字というのは私の認知機能の範囲という条件もあります。一度に見えるのがそのくらいの分量ということです。なので、文字数はちょっと話から外しましょう。
すると、5話 x 5章というあたりがリズムです。このリズムが存在するということは、なにより、終わることがわかっているということでもあります。終わることがわかっているため、なにを書くか、どこに焦点をあてるかを絞り込むことになります。そのために、逆に5話 x 5章という構成において、どこになにを書くかを考えることになります。
これはまた、冒頭と終わりをどうするかにも関わってきます。これは単純に「使える話数に制限がある」ということです。始まりそのものには一話しか使えません。終わりそのものにも一話しか使えません。冒頭はとくに重要です。冒頭の一話で構築した世界を提示します。どうにか使えたとしても二話に納めたいところです。ゆっくり提示していく余裕はありません。終わりも同じです。
小説家になろうなどで、ラノベを書こうと目指している人が多いだろうと思いますし、書籍化や連載とかを意識している人も多いだろうと思います。実のところ、そこがそもそも的に問題になります。いや、冒頭についてはラノベでも同じはずなのですが、その後が違ってきます。にもかかわらず、冒頭がゆっくりな話を目にします。
これはプロットを組むかどうかという話とも関係しますが、そこはとりあえず置いておくとします。
ここで、「3−3: 話を主導するもの」に書いたキャラクター主導、ガジェットやトリック、ギミック主導、共感主導、状況主導あたりが関係してきます。おおまかに言えば、キャラクター主導とガジェット主導以外の、トリック主導、共感主導、状況主導は終わることが前提になります。トリックは解かれれば終わります。共感は、延々と共感を得続けることはできません。状況主導は、状況が変われば終わります。対してキャラクター主導とガジェット主導は、「そのキャラクター/ガジェットにまつわること」として書き続けることができます。
さて、ここが問題になります。とくにキャラクター主導の場合ですが、どうやら世間的には「魅力的なキャラクター」があまりにも重視されています。あなたが、「話が終わること」よりも「魅力的なキャラクター」を重視するなら、それでかまわないでしょう。ですが、話を重視するなら、違ってきます。
ここで、先に書いた5話 x 5章というリズムを意識することが必要になります。5 x 5でなくてももちろんかまいません。ともかくリズムを意識して、それを制約としても意識するということです。これは、ともかく、終わりを意識することになります。さらには、配分や分量も意識することになります。
さて、きついことを言いましょう。あなたのその作品、本当にその文字数が必要ですか? まず間違いなく、そしてプロの作品においても、さらにはプロの純文学系の作品においても、その文字数は不要です。
なのに、プロにおいてもなぜそういう文字数を費やしているのでしょうか。それは作品とはまったく関係ない、大人の事情によるものです。ではそれを確認してみましょう(逆のほうがいいかも)。「ここは不要だ」と思うところの横にでも鉛筆で線を引いてみましょう。どれほど密度が高いと言われる作品でも、まず間違いなく3/4くらいにはなります。だいたいは2/3くらいにはなります。なかには、1/2を割り込むものもあります。
これでわかることは、「話を書くことと水増しの混同」があるということです。これは「1−4: 形容と説明、描写は悪手」に書いたこととも関係します。
その混同から抜け出すのにいい方法があります。一章、あるいは一話を俳句や和歌にしてみましょう。俳句や和歌にするのはむずかしいとしても、それらの文字数で書いてみましょう。それで書けないなら、「なにを書きたいのかがわかっていない」ということです。そして、その話や章で書かなければならないのは、たったそれだけです。
さらには、全体を俳句や和歌の形、あるいは文字数で書けるかやってみましょう。それで書けないなら、「なにを書きたいのかがわかっていない」ということです。
ここでちょっと注意があります。各話、各章、全体のどの場合でも、「誰々がなになにする話」というのはペケです。中身がわかる形でやってみてください。
それができたら、どのようにはじめて、どこになにを書いて、どのように終るかが見えているはずです。あとは、書かなければならないことを書くだけ。
そういう、リズムを意識するところから先もあるかと思います。それは、自身のスタイルとして見付けてみてください。