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半神様は遊戯神  作者: 大麦若葉
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 知らない天井だ......。

 なんてことはなく、目が覚めるとまず目に映ったのは雲一つない青空だった。

 辺りを見回すが身に覚えのある景色はそこにはなく、ただただ見慣れない草木が生い茂っているだけ。

 「ここ何処だよ」

 目が覚めると青空が広がっていることなどこれまで幾度となくあったせいかそれ自体に驚きはない。

 ただ、これまでとは違う点と言えば周囲に瓦礫が転がっていないことだろうか。

 昼夜問わず襲い来る阿呆共のおかげで変な耐性がついてしまった雪弥は周囲の様子まで変わってしまっていることに戸惑っていた。

 それに、

 「ベッドがない?」

 いつものように部屋を爆破されたのなら周囲に瓦礫が転がっているはず、にも関わらず瓦礫の姿はなく、結界で囲んだはずのベッドすらなかった。

 つまり何らかの力によって森の中に移動させられたということになる。

 可能性としては最も高いが、同時に最も低いだろう。

 もし移動させたのなら何故拘束されていない?

 何故まだ殺されていない?

 謎が深まるばかりだと一先ず誰が、何のためにと言ったことは隅に置き、現状を確認することにした。

 数十分後。

 周囲を一通り探索した結果、雪弥が導き出した答えは。

 「異世界だ」

 それはここが雪弥の知っている世界とは別の世界だということ。

 理由は様々あったが、決定的だったのだがキノコが二足歩行している所を目撃したことだろうか。

 他にも緑色の身体をした小人(ゴブリン)二足歩行する巨大な豚(オーク)も見かけたがキノコの二足歩行の方が雪弥には印象強かった。

 これらの事実からまず間違いなく今いる場所は地球以外の場所ということになる。

 となれば次の疑問だ。

 誰が何の目的で異世界に飛ばしたのかということだが、雪弥はこれに覚えがあった。

 昨晩寝る前に確認した『女神』を名乗る人物から届いた一通のメール。

 『私の世界に避難しませんか?』

 この状況でなければ絶対に信じなかっただろうが、今のところ原因はこれしか考えられない。

 もし仮にこの差出人が本当に女神だというならこの状況にも納得できる。

 だが残念なことにそれを確かめる術がない。

 「まぁいいか」

 一先ず別の世界に来てしまったという事実は受け入れなければいけない。

 それよりも問題なのはこれからどうするかということだ。

 ゴブリンやオークに似た人型の化物は弱すぎて話にならなかったが、あんなものがいるということはドラゴンやそれ以上に危険な化物がいてもおかしくない。

 そして何より自分の異能がこの世界でも通じるのかが分からない。

 何より優先すべきは自分の命だ。

 例え世界が変わってもそれだけは変わることはない。

 「無限倉庫(ストレージ)

 渦をイメージし、魔力(・・)を込めると空間が歪み、闇が生まれた。

 雪弥はそこへ腕を入れると、軽く目を瞑り、次に腕を抜くとそこには一振りの刀が握られていた。

 素人目にも分かるほど鍛え抜かれた刀は雪弥の手に収まると一際その輝きを増す。

 「魔法とアイテムは大丈夫と、じゃあ次は」

 再び空間を歪ませ、闇を生み出した雪弥は携帯型のゲーム機を取り出した。

 一応インターネットにもつなげる機種ではあったが、異世界である以上やはりというべきかインターネットに接続することは出来なかった。

 雪弥は一つ一つ丁寧に確認するとゲームを起動する。

 そのままゲームのアイテム画面を開くと人差し指を液晶部分に押し当てた。

 指紋が付くため普通ならば絶対にしないであろう行為。

 「よし、大丈夫だ」

 雪弥の声と共に液晶画面から飛び出たのは綺麗な朱色の宝石のついた男物の指輪だった。

 これが雪弥の異能、仮想を現実にする力だ。

 仮想と言っても強すぎる力には制限がかかる。

 雪弥の場合はゲームに限定されていた。

 ゲーム内のアイテム、武器、生物以外であれば何でも現実への持ち出しが可能。

 今持ち出したのは自分に敵意や悪意を持つ者を感知することが出来る効果を持つ感知の指輪だ。

 異能が使えることが確認出来、取り出したアイテムも使用可能だと分かった時点でほぼほぼ命の心配はなくなった。

 最後に確認するべきは自身の身体能力に関してだ。

 出来れば元通りになっていてほしいと願うばかりだが、その願いは近くにあった大木にデコピンしたことで儚く散ることとなった。

 少しだけ力を込め、デコピンをすると大木は跡形もなく姿を消し、塵と化す。

 「やっぱダメだったか」

 普通の人間であれば、いやどれだけ優れた人間であろうと成し得ないであろう非現実的な光景がそこにはあった。

 御神木として崇められてもおかしくないほど立派に育った木が木片の一つも残さずに吹き飛んでしまったのだから。

 それも全ては自業自得、調子に乗った結果なのだから誰も責めることが出来ない。

 ゲームをやったことがある人なら一度は目にしたことがあるだろう。ステータス強化アイテムの存在を。

 『力の実』それはゲーム内でも限られた数しか入手できないキャラクターの筋力値をランダムで上昇させるというものだった。

 だが幾らそれを数個使用したからと言ってデコピンで大木を木っ端微塵に出来るほどの筋力が手に入るわけがない。

 雪弥はとある方法(チート)で『力の実』を始めとするステータス強化アイテムを片っ端から手に入れ、それを使用し自身の肉体を強化していった。

 どれだけ身体能力が上がろうと見た目に反映されないのをいいことに調子に乗って使用し続けた結果がこれだ。

 ちなみにだが、本気でジャンプすれば大気圏まで一跳び出来るほど他の身体能力も高くなっている為、銃弾程度であれば避け続けることが可能だったりする。これが最強の異能者と呼ばれる所以であり、雪弥が暗殺者や軍のあらゆる攻撃から身を守ることが出来た理由なのだが、

 「やっぱりチート(ズル)はだめだよな」

 元の身体能力に戻れることなら戻りたかったというのが本音だ。

 私生活に支障がない程度に自制は出来るが感情が高まればそれも難しい。

 「取りあえず全部元のままか」

 それならばと、雪弥は足に力を込め、軽く跳躍する。

 上空二百メートルほどまで一気に上昇すると、空中に結界で足場を作り、周囲を見渡す。

 視界に映るのは溢れんばかりの緑、緑、緑。

 よくよく目を凝らせば緑の中に幾つか動く影が見え隠れする。

 それは先ほど見かけたゴブリンやオークであったり、二足歩行するキノコであったり、二メートルはある巨大な狼の群れであったりと様々だったが人の姿は確認できなかった。

 「まぁこんな化物だらけの場所に人がいたらそれはそれで怖いよな」

 態々化物が闊歩する森の中に住んでいる物好きな人間などいないだろうし、いたとしても全く仲良くできる気がしない。

 「それにこの世界に人間がいるなんて保証はどこにもないし」

 一見ゴブリンやオークにしか見えない人型のアレがこの世界の人間、知能を持つ生物なのかもしれない。

 或いは元の世界でいう猿人のような進化の途中の姿なのかもしれない。

 「取りあえず人でも探してみるか」

 雪弥は一歩踏み出した。

 








 

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