ぽこʅ(。◔‸◔。)ʃちん
日向ぼっこで稲が色を増し、辺り一面を豊かな緑に染める。
向こうには、雄大な富士の山際が見えている。
時折吹く風からは、この地に伝わる伝統の香りを感じられた。
この僻地で、男は日々、自然と浸み込んで来る光のあたたかさを、足で貪るほど味わう。
20XX年、世界の晴れ舞台、欧米のレイモンドコレクションで金賞を受賞したマウェフィーを造り出した男。
日本が世界に誇る寡黙な指揮者、精神の芸術家と呼ばれる、白井日三(71)である。
世界が認める奥ゆかしい味わい。
愛情、友情、男たちのダンディズム。
マウェフィーは哀愁に包まれた大人の世界を演出してきた。
マウェフィー 英語で、mature well-aged feet
それは熟成された足を意味する。
マウェフィー、それがいかにして造られているかこ存じであろうか。
自然と共に生きる農家の彼らの持つ汗と涙と情熱で蒸れた足。
そこから、ほのかに香る36人もの日本男児たちの足の原臭。
数10年という長い期間で育まれる足の原臭。
それをどう響き合わせ、極上の逸品にするか。
針を通すような緻密な調合することによりやっとこのマウェフィーは創られるのだ。
1人1人の原臭は個性が強く、かぎにくいものであるが、その個性をうまく響き合わせて美味しいマウェフィーにする。
これが指揮者の役割なのである。
全ては白井の感覚にかかっている。
「かぐかい?。」
「くっさぁ。これなんですね。」
「ああ。」
「非常にバランスがいい。特徴があって、複雑な風味がある。」
「ああ。」
「それでいて、繊細でしなやかな味わいだ。」
白井は嬉しくてたまらない悪戯小僧のようににっこりと笑う。
50年以上の熟成を経て完成された、モルトマウェフィーだ。
白井の嗅覚は独特だ。
「ちょっと、フローラルうんこっぽいでしょ。」
臭いの欠点や癖を一風変わった言葉で表現する。
「持ってる素材の個性をいかに引き出すか、これが指揮者としての力量。」
36人の絆、1人1人が欠けたら作れない。
「攻めの姿勢を大事にしたい。」
そう言うと白井は荒ぶる鷹のポーズをして見せた。
俺はバックステープで彼と間合いを取った。
その刹那、
「でやぁあああああああああぁああぁあぁ三連閃!。」
「ひでぶ。我が生涯に一片の悔いなし。」
「ウンチしよっと(﹡´◡`﹡ )。」