表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣の勇者たち ※俺だけ妖刀  作者: 狐付き
7章 漂流 サルディラ海
61/201

プロローグ

「お兄さん! 次あれ、あれ見たい!」

「お、おう」


 現在双弥たち一行はスポットレートの港町へとやって来ていた。

 騎士団先導のためノーチェックにて港のゲートを通過し、荷物アルピナを置いて現在双弥はエイカに振り回されているところである。


「エイカさん、双弥様を引っ張りまわしすぎてませんか?」

「そっ、そんなこと……ある?」


 不安そうな顔でエイカは双弥を見上げる。


「いや、そんなことは別に……」

「そうですか。何か不思議な光景だと思いまして」


 リリパールは少し不満気な顔で2人を見ている。

 確かに今までと比べ、少し懐きすぎに感じる。エイカはあの一件以来吹っ切れたような印象を受けるのだ。


「リリパールも何か欲しいものは……自分で買えるよな」


 双弥は予想以上の報酬がもらえ、超リッチマンになっている。今ならここに停泊している船の1隻でも買えそうなほどだ。

 これで子種でも残していようものなら笑いながら城の1つや2つ買えていただろう。


 それでも余りある過剰資金にびびりつつも、エイカとリリパールを連れて王侯貴族気分でショッピングと洒落込んでいた。


「おっ! 大変だエイカ! ちょっと来てくれ!」

「えっ? なになに?」


 双弥は発見してしまった。

 それはエイカが求めているであろう例のアレである。しかし何かがおかしい。


「ヘンテコパジャマ4点セット……だと……?」


 そう、1点増えているのである。


「だっ、だからいらないって言ってるでしょ!」


 エイカは顔を真赤にして反発している。


「わかってるって。すみませーん、これくださーい」

「わかってない! すみませんキャンセルします!」


 イチャコラしているようにしか見えない。


「お2人共……そ、そう。まるで仲の良い兄妹みたいですね」


 リリパールの精一杯な皮肉に、エイカは不満そうな顔をする。

 といってもエイカが双弥を呼ぶときもお兄さんであるし、感じ的には友人の妹と買い物をしているようだ。


「お、お兄さん。これ、これどうかな」


 エイカは服を体の前に当て、双弥に見せてくる。

 シティドレスと呼ばれるルーメイー王国で着られている服で、ちょっとオシャレな人が町を歩くために着飾る服だ。

 カジュアルドレスとパーティードレスの中間的なものであり、デートなどをするときは必須である。


 しかしエイカが選んだものは紫色で少し胸元が開いていてセクシーな感じの、大人っぽいデザインのものだ。


「うーん……エイカにはまだ早いんじゃないかな」

「私子供じゃないよ!」


 そう言ってムキになる姿はどう見ても子供だ。


「エイカにはそうだな……おっ、これがいいんじゃないか?」


 双弥が見つけて取り出したものはピンクの幼い感じのロリロリなシティドレスだった。


「そっ、そんなのやだよ! 子供っぽいもん!」


 子供なんだから子供っぽいのでいいんだよと双弥は思った。


 子供に似合う可愛らしい服を大人が着るのは双弥的にはあまり好ましくない。着られる期間は短いのだから、着られるうちに着るべきだという主張のもと、ロリコンらしくかわいい子にはかわいい服がいいという意見だ。


「双弥様。私はどれが似合うと思いますか?」

「リリパールかぁ……。これなんかどうかな」


 リリパールに選んだのは、子供っぽくはあるがおとなしめの、清楚な印象がある水色のシティドレスだ。

 普段は姫らしくゴージャス感のある服装なため、こういった服のリリパールを見てみたいのだ。


「そうですか。では私はこれを買わせていただきますね」

「いいのかよ」

「ええ、双弥様はこれが私に似合うと思ったのでしょう? 早速着てみます」

「それは……うん、楽しみだ」


 リリパールはエイカをちらっと見、にこりと笑って会計を済まし、宿へと足早に戻っていった。


「お兄さん! 私にも選んでよ!」

「だ、だからさっきの……」

「むうぅぅー」


 エイカはお気に召さない様子。双弥は渋々他のものを探してみた。


 (ピンクが嫌なのかな……。他にエイカが似合いそうなのは軽い色だろうなぁ。白か、黄色か。黒はないな。……ん? 黒?)


 双弥はひとつの服に釘付けとなった。真っ黒ではない。レースが白。2段スカート。ふりふりのロリロリだ。


「こっ……これはゴスロリ!」


 無意識に掴み、手にとってしまう。

 それは紛うことなきGOTH-LOLIであった。


「こっ、これ! エイカ! これ、着て!」


 大興奮しやがっている。どうやら双弥の大好物に当たったらしい。


「え!? や、やだよ。恥ずかしいよ」


 エイカは全力で拒否をする。それでも双弥は諦めない。


「じゃあアルピナの体型わかるか!? わかるよな!」

「う、うん。服のサイズはわかるけど……これくらいかな」


 エイカが取り出した服を掴むと、双弥は店の中を荒らすように探しはじめた。


 そして5分後、丁度いいサイズのゴスロリを見つけ購入すると、エイカを置いてそそくさと宿へ戻っていった。



「双弥様、どうしたのですか?」


 宿の廊下でリリパールと会う。先ほどのシティドレスを着ているようだった。


「ああうんちょっとね」

「それでどうですか、双弥様。着てみたのですが……」

「そんなことより部屋の鍵くれ!」


 そんなことと言われ、一瞬でブチ切れ状態の寸前まで達したリリパールであったが、双弥の慌てぶりを見て何かあったのかと思い、鍵を渡す。


「あの、一体何が……」

「リリパール! 危険だから部屋には絶対入らないでくれ!」


 それだけ言い残し、双弥は部屋に入っていった。


 リリパールは不審に思い聞き耳を立ててみたのだが、中からアルピナが暴れ回る音、唸り声、双弥が破気を用いているであろうかなりの轟音を響かせている。


 確かにこの状況、入るのは危険だと判断したリリパールはエイカを探すため外へ出た。




 先ほどの服飾店にいたエイカと合流し、少し時間を潰したのち恐る恐る宿へと戻ると部屋からは何も聞こえない状態になっていた。どうやら決着がついたようだ。


「あの、双弥様……」


 そっと扉を開け、2人はこっそりと中の様子を見る。

 すると部屋はめちゃくちゃになっており、凄惨な状態であった。


「ふふふふふ……ふひひひひ……」


 不気味な声が微かに聞こえる。

 リリパールとエイカは壁に背を向け、顔だけこっそりと声のする寝室へと向けた。



 そこで2人が見た光景は、ゴスロリ衣装を着させられ不満そうな顔をしているアルピナを満面の笑顔で撫でている双弥の姿であった。

 ちゃんと尻尾が出るところに穴が空いている。拘っているようだ。


「双弥様、何をなさっているのですか?」

「ふひ、ふひひひひ」


 完全にイッてしまっている。ジャンルで言うとキ○ガイの類だ。


「お、お兄さん。そんなにそれがよかったの?」

「ぐふふふふ。げひひひひ……」


「あの、エイカさん?」


 エイカは意を決したような顔で部屋から出て行った。


 リリパールが不思議に思っていると、エイカは戻ってきた。

 デザインは一緒だが先ほどのとは違い、赤いドレスに黒いレースである。


「お兄さん! これでいいですか!?」


 やけっぱちで叫ぶ。

 双弥はそんなエイカを真剣な顔でじっと見ている。


「エイカ、ちょっとこっち来なさい」

「えっ? はぅ?」

「いいから来なさい!」


 何やら怒っている雰囲気で、エイカは恐恐と双弥のもとへ近付く。


 するとそんなエイカの腕を掴み引っ張り込み、腰へ手を当ててがっちりホールド。逃げられなくする。


「え!? え!?」

「エイカ! エイカあぁぁぁ! かわいい! かわいい! くんかくんか」

「ちょっ、やめてよお兄さん!」


 そんなことを言いつつもまんざらでもない、ちょっと幸せそうなエイカの顔を見て苛立ちが頂点に達したリリパールは、落ちていた棍で双弥の頭を思い切り殴った。




「───はっ。俺は一体何を……?」

「ナニモアリマセンヨ」


 抑揚のないリリパールの声に首を傾げ、辺りを見回す。

 横で丸くなっているアルピナはいつもの麻のワンピースだ。


 リリパールは…………。


「おっ、リリパール。その服やっぱ似合うね。清楚な感じでとてもいいよ」

「アリガトウゴザイマス」


 事務的な笑顔で返してきた。

 それに対し更に首を傾げたが、今度はエイカを見る。


「あれ、それさっき俺が選んだやつじゃん。やっぱ素材エイカがいいだけにかわいいよ」

「あっ、うん。ありがとう」


 少し恥ずかしそうにモジモジしている。


「それはさておきさ、俺、確かあの店でゴスロ……」

「双弥様! そういえばいつ船に乗られるのですか?」


「えっと明日の昼には出航するって言ってたから早朝には出るつもりだよ」

「そうですか! 必要なものは既に揃っていますので、今日は夕食をとって早く休みましょう!」

「お、おう」


 捲し立てるリリパールに圧倒されるような形で、双弥は自分の部屋に戻っていった。




 荷物には封印された箱が増えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ