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聖剣の勇者たち ※俺だけ妖刀  作者: 狐付き
5章 真実 ワンクル帝国
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3話 再会

「さて、考えはまとまりましたか?」

「ええまあ」


 双弥は主教と2人で会っている。ジャーヴィスとムスタファは現在客室にて干からびているところだ。


「ではまず、何故勇者の血族であるあなたが破壊神信仰を?」

「それについては他の勇者と一緒のときにお聞かせいたしましょう。きっとあなたよりも重要ですので」


 今双弥に話すことではないと言っているのだ。

 すぐにでも聞きたいという話でもないし、他にも聞きたいことはたくさんある。後で教えてもらえるのならば急く必要はない。


「ならば何故この世界に勇者が残ったのかを……」

「それも揃ったときのほうがいいでしょう」


 わざわざ言わないでいるように感じる。それに双弥は怪しんだ。

 この場で伝えた後、皆がいるところでもまた話せばいい。まるで隠しているかのようだ。


 何が聞けて何が聞けないのかわからない。ならばあちらから話してくれるのを聞いたほうがいい。


「じゃあ教えてもらえることを聞かせてください」

「そうですね。ではまず……」




 500年前の勇者たちが魔王と戦い、そして勝つことができた。

 その後3人の勇者がこの世界に残り、次の勇者が来るのを待った。


 ここまでは誰でも知っている伝説に近い歴史だ。

 問題はここからである。


 残った勇者たちは創造神へ反旗を翻し、敵対するという情報から破壊神を頼ることとなった。

 破壊神も彼らの信仰により力を得、次の勇者召喚時に創造神を堕とすと約束した。


 そこで召喚されたのが双弥というわけだ。


 今回の魔王討伐で失敗すれば創造神は信仰を減らし、再び勇者召喚するだけの力がなくなるかもしれない。

 先の話になってしまうが、自分たちの悲劇を未来へ残さぬためのことだ。


 だから双弥はこの不幸な出来ごとを食い止めるために戦わなければならない。ただの神同士の喧嘩というわけではなかったのだ。

 とはいえ次も恐らく500年後だろう。そんな先の人物のためにやれというのも酷な話だ。



「簡単に言えば俺が真っ先に魔王を倒せば全て解決……ってことだよな」

「そう単純な話ではないのですよ」

「何?」


「いずれお話します。そのときあなたは選択を迫られるでしょう」




 それから5日ばかり経過した頃、いつものように町の外でエイカと練習をしていたとき、双弥に向かって1台の馬車が突っ込んできた。

 慌てて避けようとしたが、動くまでもなく馬車は止まり、扉が開く。

 そして中から出てきたのは鷲峰であった。


「よぉ」

「鷲峰君じゃないか! どうしたんだよ」


「ふん、ジャーヴィスらしきものがこの方向へ向かったという情報を得てな。会ったか?」

「あ、ああ。ムスタファもいるよ」


「ほう。するとフィリッポも?」

「いや、あいつはみんなで仲良くといった類じゃないよ。今ごろどこで何をしているんだか」

「まあいい。馬車を預けてくる。話はそれからだ」

「じゃあ宿で待っているよ。泊まっているのは──」



 それから双弥は町へ戻り、宿で鷲峰を待った。

 鷲峰はほどなくしてやって来たが、その傍らには1人の少女が。

 美しく長い黒髪の少女だ。年齢は15くらいだろうか。淡い藤色のワンピースを着ており高貴な印象を受ける。


 名前はチャーチスト・ビッド。なんでも皆と別れて少し経った頃、魔物に襲われていた村から救い出し、以来なつかれてしまったそうだ。


「そんな話はいい。ジャーヴィスとムスタファはどこだ?」

「これから案内するよ。その子はどうする?」

「では少しの間、お前のところの……エイカといったか。彼女と一緒にいさせてやってくれないか?」

「あ、いや、それは……」


 言い辛そうな双弥に怪訝な顔をする鷲峰。一体何かと問い詰めると、仕方なしに双弥は白状した。



「なっ……獣人だと!?」

「あ、ああ」

「ネコミミか!? ネコミミなのか!?」

「い、いや。狐耳なんだけど」

「どどどどこにいる! 見せろ! はよ!」


 鷲峰のキャラクターが崩壊している。仕方なしに双弥は鷲峰を案内した。


「いいか。近づくなよ。とても凶暴だから」

「うむ、わかった。だからはよ」


 双弥は扉をノックしてから開けた。

 部屋の中にはベッドに腰をかけているエイカと、クッションの上で丸くなって寝ているアルピナがいた。


「き、きつ、狐耳いぃ!」


 飛びつこうとする鷲峰の襟首を掴み、動きを止めた。


「は、離せ! 離すのだ!」


 ろくなものではない。双弥は鷲峰のことをクールな男だと思っていたが、ただクールぶっている中二だという認識に改めた。

 しかも同じケモミミマニア。今度熱く語ろうと胸に誓う。


「落ち着け! 言っただろ。気性が激しいんだからあまり近寄るな」

「そ、そうだ。チャーチと交換! 交換でどうぐぉぇっ」


 チャーチストからみぞおちに肘を打ち込まれ、同時に足の小指を踵で踏みつけられた。全力でやられたらしく、勇者でも痛いようだ。


「訂正」

「あ、ああ。チャーチはやらんからな、双弥」


 誰もそんなことを言っていない。どうやら鷲峰は尻に敷かれているようだ。

 名残惜しそうな鷲峰を部屋から追い出し、双弥はエイカにチャーチストと一緒にいるよう話してからセィルインメイへ向かった。



「おい、これはどういうことだ?」

「や……やあ、迅」


 半分ミイラのようになっているジャーヴィスを見て、鷲峰は双弥の肩を揺すった。

 見たままを言うと、死にかけだ。かろうじて生きているといった感じだろう。

 だがこれでもまだマシなほうであり、5日前は本当に死ぬ寸前であった。


「それは私が説明しよう」


 そこへようやく歩けるようになったムスタファがやって来て、これが一体何なのかを教えた。



「──そんなことが……」


 あまり表情を変えない鷲峰が、かなり渋い顔をしている。


「ああ。それで迅。お前はどうするのだ?」


「俺は……うむ、俺もやっておこう。不安要素はないほうがいいからな」


 これで最も重要な点は、聖剣が壊されたときの準備ではなく、魔王が倒され、自分の世界に帰れたときのためであるということだ。

 元の世界へ戻れるということ。それすなわち聖剣と離れるということになる。


 先に述べたとおり、勇者は聖剣により力を引き出され、更に体を無理やり維持されている。

 その際に一番恐れているのは、戻り際に今と同様に体へ反動が来ることだ。


 それはつまり、元の世界へ戻れるというよりも、死体が元の場所へ送られるといった感じになるわけだ。

 これではなんのために戻ろうとしているのかわからない。ひょっとして元の世界へ戻らなかった勇者たちはこれを知って戻らなかったのだろうか。

 この世界に残ったほうが、生きているだけマシだと考えられるからだ。





 鷲峰が来てから1週間が経ち、ムスタファはもう普通に生活ができるようになっており、鷲峰もふらつきながらも1人で歩けるようになっていた。

 双弥はその間も空を気にしていたが、フィリッポらしき影を見ることができなかった。

 ひょっとしたらいい加減陸路を使っているのかもしれないが、特に変わったものを見ることはなかった。


 そんなとき、双弥を含む4人が主教に呼ばれ、集まった。

 応接室のソファーに座り待っていると、何冊かの書物を持った主教が現れた。


「お待たせしました。ええと双弥さん」

「はい?」


「以前あなたがお聞きした問いに答えましょう。そしてお話ししましょう。勇者の地獄を」


 主教は静かに口を動かしはじめた。

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