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聖剣の勇者たち ※俺だけ妖刀  作者: 狐付き
3章 獣人 オウラ共和国
28/201

7話 山を越えて

「確かにこれは獣剣リクイディティだ」

「じゃあもう人を襲うようなことはないな」

「ああ約束しよう、客人」


 リーダーは満足気に双弥を客として扱うことにした。

 それから2、3話し、双弥が外へ出るとそこはパラダイスであった。


「ふ、ふひょおおぉぉぉぉ!」

「このバカが!」


 思わず我を忘れた双弥の後頭部をスターリングが殴りつけた。

 前のめりでぶっ倒れた双弥は恨めしそうな顔でスターリングを睨みつけるが、スターリングは冷たい目で見返していた。


「お前は客として認められたが、皆はまだ怯えているんだ。お前の欲望のままにさせたら余計に酷くなる」


 そこでようやく双弥は我に返った。そう、嫌われてしまったら元も子もないのだ。

 嫌がるケモミミ少女を捕まえ、無理やり撫でる。それではまるで強姦だ。

 強撫ごうぶとでも言うべきか。変態を飛び越え犯罪の領域へ足を踏み込んでしまう。

 それは双弥としても認められない。お互いが合意の元──和撫が最も望ましい。


「なあスターリング」

「なんだ?」

「俺はどうしたらいいんだ……」

「知るか。大人しくしてろ」


 スターリングはいい加減この変態の扱いがわかってきたようだ。


「くそぉぉ」


 変態そうやはその辺りを歩きまわっている獣耳たちを羨ましそうな目で追っている。

 撫でたい。撫で回したい。撫でくりまわしたい。禁断症状のように手が震えてきていた。


「おい普人族へんたい

「なんだよ」

「お前の気持ちはわからないが、どうしても信用が欲しいならばティロル公団にでも入っておけ」

「ああ、噂に聞いている素敵団体だな」

「素敵かどうかは知らん。が、我々に援助をしてくれている」


 変態そうやには何故援助をしているかわかっていた。

 ケモミミロリの至高を理解しているもの同士、通じるものがあるのだろう。

 これでますますティロル公団というものに興味が湧き、魔王の件が終わらずとも入団をしようと本気で考えていた。


「なあスターリング」

「なんだ?」

「どこへ行けば入れるのかな」

「でかい町に行けば支部とやらがあるんじゃないか?」

「よし行こう」


 ここでようやく双弥は本来の目的であるアイザーへ行くことになった。

 ソブリンに引き返すと言わなかっただけ進歩しているのかもしれない。

 実際そんなにのんびりしていられるような旅ではないから仕方ない。他の勇者が今どこで何をしているか一切わからないのだから。


「それでアイザーに行きたいんだが、道を教えてくれないか?」

「仕方ないな。じゃあオレが案内してやる。アルピナは残れ」

「嫌きゃ」


 アルピナはスターリングへ威嚇するように唸る。またいつもの我儘かとスターリングはそれを苦々しい表情で見る。


「大体お前、ついていってどうするつもりだ?」

「ごはんもらうきゃ! あと撫でてもらうきゃ」

「おい、どれだけこいつを甘やかせたんだ」


 スターリングは双弥を非難する。

 そんなこと言われてもと首をふるくらいしかできない。


 甘やかせたといえばそうなのだろうが、ある程度普人族の生活というものを教えようとは努力してみた。

 双弥の努力の程がどれくらいかというのは察しの通りだが、やることはやったつもりでいる双弥としては憤慨する。


「俺だって色々がんばったんだよ」

「で、大方嫌われたくないとかいう理由ですぐ折れたんだろ?」

「ぐぅ」


 ぐうの音しか出ない。

 とはいえスターリングもアルピナに言うことを聞かせることはできない。2人は大きくため息をつき、アルピナの同行を許した。






「この先がアイザーだ」

「思ったより早く着いたな」


 今双弥が立っているのは、獣人の集落があるところから更に山を2つほど越えた場所だ。

 ここを下り、暫く歩けば町に着ける。もう既に町と海が見えるため、迷うことはないだろう。


 本来ならばいくつもの崖を迂回して進まなくてはならなかったのだが、その都度刃喰を使いかなりのショートカットをしたため予定より2日も早く来れた。

 しかしそろそろ戦闘のひとつでもしないと刃喰もご立腹だ。

 だからといって無闇に人を襲うわけにもいかない。折り合いというのもなかなか難しいものだ。


「ではオレはこれで帰らせてもらう。行くぞアルピナ」

「嫌きゃ」


 そうくると思っていたのか、やはりといった感じでスターリングはため息をついた。

 彼女に何を言ったところで聞いてくれるはずがない。


「では好きにしろ」

「おけきゃ」


 これについては双弥もため息をつくしかない。町に入るのが面倒になるからだ。

 またアルピナを突っ込ませてエイカと2人で入るか、再び刃喰に乗り入り込むしかないのかと。


 どうしたものかと町へ目を向けると、何か違和を感じた。


「あれ? あの町に壁は無いのか」

「港町だからそういうものだろう。戦になると陸からよりも海から襲われるものだからな」


 壁を作って出入りを制限してしまうと逃げ場がなくなる可能性がある。だから港町には基本大きな壁はない。

 その代わり船乗場にはゲートがあり、厳しく調べられる。


 とにかく町へ入り、それ以降のことは中で考える。それしかあるまい。


「色々ありがとう。それじゃまたな」

「再び会うことがあるかわからぬがな」


 先のことなど双弥にもわからない。

 全ては魔王を倒してからだ。


 双弥はスターリングと別れ、アイザーへと足を向けた。

短くて申し訳ありませんっ。

盆は家を空けてしまうので更新が止まってしまいます。


再開したとき、また見て頂けたら幸いです。

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