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聖剣の勇者たち ※俺だけ妖刀  作者: 狐付き
4章 異世界アイドルエイカちゃん
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32話 エイカ、倒れる

「研修生のハトハです! よろしくお願いします!」


 エイカたちに向かい元気よく挨拶をするのは、双弥が見つけてスカウトに失敗した少女だ。とりあえず様子見として傍に置くことにする。

 しかしとっさのこととはいえ、双弥は少し後悔している。研修制度のことでだ。

 こういうのでどんどん人を集め、ふるいにかけることで質が上がるのはわかる。メンバー内でも競争心を煽り、切磋琢磨もするからレベルも上がる。

 だけどそれでは野心的で他人を蹴落とすことすら厭わないような人間だらけになってしまう。仲良しごっこで上辺では友達のように見えるが、腹の中ではなにを考えているのかわからない。


 双弥が目指すアイドルは、そういったものではない。アニメのような、みんなでがんばって上を目指すものだ。だからこそ順位を付けるのを辞めたのではなかったのか。


 だからといって彼女────ハトハを手放すのは惜しい。もしこれで双弥たちのアイドルビジネスを模倣するような輩が現れ、彼女をスカウトしたとなったら、確実に脅威となる。それは避けたい。


「それで、ハトハは3人を見てどう思った?」

「初めて聴く音楽に、見たこともない踊りだったんですけど、凄くカッコ良かったです!」


 ハトハはとても澄んだを輝かせ、3人に訴えかけるように言った。面と向かってそんなことを言われると、エイカたちは流石にテレている。


「特にエッカさん、私、とても憧れています!」

「えっ、私!?」


 突然そう言われ、エイカはドキマギした。リリパールやアセットを差し置いての名指しだ。


「エイ……エッカのどこに憧れたの?」

「全部です! 体は大きくないですけど、とても大きく見えました。それに歌も素敵ですし、踊りも上手で、なによりとても楽しそうなところがすごく魅力的でした!」


 エイカは他2人と較べて特に運動能力が秀でている。だから振り付けなども簡素化させたものではないし、リリパールたちの粗がバレないよう目立つようにさせている。リズム感も良くなってきているため、今はちゃんと歌いながら踊っている。口パクはリリパールだけだ。


 これは双弥にとって好印象だ。エイカがリーダーだと言っているのは内々の話だけで、一般の人は知らない。リリパールはキルミットの姫だし、アセットも大商人の娘で人気がある。エイカだけなんの力もないのに彼女を選ぶということは、ハトハにとって権力や金などよりもちゃんと実力を見て選んでいるということになる。彼女ならみんなと上手くやってくれるだろう。


「それじゃあ基本から教えよう。まずリリとアーセの2人と一緒に柔軟。その後にアーセからリズムを習おうか」

「はい!」



 それからリリパールとアセットはとても丁寧に教え込んできた。初めての後輩が嬉しいのだろう。ハトハも早く追いつこうと頑張っており、双弥が危惧していた殺伐とした感じはなさそうである。

 しかしここで油断してはならない。ハトハは言うなれば“アタリ”だっただけだ。今後増やす予定であるメンバーが皆こうとは限らない。人材選びは慎重に行う必要がある。


「そうだ、お兄さん。次はリティちゃん入れるんだよね?」

「おっとそうだったな。リティならまあみんなと仲良くやってくれるだろうし、悪くないか」


 更には獣人猫族だから運動神経は良く、体も柔らかい。問題はリズム感と歌だが、きっと大丈夫だと高を括る。

 これで2名が決まった。セリエミニのデビューは6人と決めているので、あと1人欲しい。


「迅が戻って来たら相談してみるか……」

「それがいいと思うよ。お兄さんだけだと暴走するし」

「俺をなんだと思ってるんだ。そうやっていつも暴走するとは限らないぞ」

「ほんとかなぁ」

「た、多分……」


 むしろ暴走の代名詞たる双弥が暴走しなくてはおかしい。暴走そうや、或いは双弥ぼうそうとしてもいいだろう。


「大体ね、ハトハちゃん……だっ……て……」


 話している途中、突然エイカがふらふらとして膝から崩れた。慌てて双弥はそれを抱きかかえる。

 少し無理をさせただろうか。このままだと1期のリーダーになってしまう。そんなことを考えていると、エイカが突然起きて双弥の手首を掴み、廊下へ出て行った。



「ど、どうしたんだよエイカ!」

「どうもこうもないですわ! 私の勇者よ」


 破壊神と入れ替わったようだ。エイカの体調が崩れたわけではなくひと安心。だが焦った気持ちの行き場がなくなり、少し苛立つ。


「出てくるタイミングを少しは考えろよ。んでなんのようだ?」

「ちょっと、私の勇者はもっと私を敬うことを学ぶべきだと思いますわ!」

「はいはい敬う敬う。んで用件を言えよ」

「むぅーっ。まあいいですわ。私、とっても気分がいいのですから」

「ほう?」


 確かにいつもより口調が楽しげである。エイカの体なのだがそれを感じられる。


「なにせ今、信者の数はうなぎのぼり! そして創造神ハゲジジイの信者は滝下がりなのですわ!」

「ほう」


 どうやら双弥たちの作戦は上手くいったようだ。

 ライブチケットにはセィルインメイ用チケットがあり、優先的に入場できる。アニメの劇場も然り。そのうえグッズなどにはセィルインメイ割引なるものがあれば、信仰に疎い一般市民はさっさと改宗してしまうだろう。今ではここ、アーキ・ヴァルハラの住民の7割が破壊神信仰者セィルインメイである。


「そんなわけで、残りの3人へまとめて聖剣を渡してしまうことにしたのですわ!」

「おおっ!」


 これはかなりの吉報で朗報だ。タイムリミットぎりぎりになって間に合わなかったと言われたら目も当てられない状況になるところだった。だがこれで色々と段取りを組むことができる。

 なにせ次の勇者は16人。少しでも多くの仲間が必要なのだ。ジャーヴィスの手も借りたい。


「それにしてもさすが私の勇者ですわ。一体どのようなえげつない行為をしたらこのような転覆を謀れるのでしょう」

「人聞きの悪いこと言うなよ。まあ世の中はメリットとデメリットの計算で成り立っているってことだ」

「なるほど、人の欲を利用したわけですわね。私もよく地球の神からボスドロップの激レアアイテムを餌に地球永住を……」

「まだやってんのかよこのネトゲ廃神はいじんどもめ。てかボスドロ持ってるとかどれだけだよ」

「そりゃあ私たちは神ですから。福の神もおりますから」

「おいコラ、それはえげつないチートじゃねえか!」


 チート本来の意味で考えれば、確かに福の神とかずるい(チート)だろう。偶然目の前に現れたボスが瀕死で、殴ってみたらたまたまクリティカルなうえMVPを取り、更にレアドロップまで引くまでが福の神だ。これは周囲の人間がやる気をなくす。


「……もうそこらへん突っ込むのもめんどいわ。いいからとっととみんなのとこへ行ってこい」

「全く、もう少し神らしい対応をして欲しいものですわね。ではこの子を借りて行きますわね」

「えっ、ちょっ」


 エイカは破壊神の巫女なのだから、彼女がいなくては始まらない。だが今エイカに抜けられるのは非常に困る。


「3日……いや、あと1週間くれ。みんなを集めるから」

「あら、手間を省いてくださるのね。さすがは私の勇者」


 破壊神が上機嫌に答えるが、双弥の意図は全く異なっている。折角軌道に乗っているアイドル活動を休止させるわけにはいかないのだ。


 とりあえずフィリッポは近くにいるし、ジャーヴィスも半日あれば連れて来られる。問題はハリーだ。生身の彼を大陸間弾道弾にくくりつけて飛ばすわけにはいかないため、数日を要す。


 今はとにかく鷲峰が戻ってくるのを待つしかないのであった。

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