その時彼らは 1
第1話、第2話 水面下の出来事
□ とある村の中で □
「のう、ダーガイムよ。なかなか面白い奴らがやって来たぞ。まだまだ見捨てたモンでは無いって、人間ってヤツは。
確かに馬鹿みたいな事もいっぱいするけれども、それでも女神エオリスが選んだのは人間じゃて。
まあ、お前さんの立場も判る。あの時もそうせざるを得なかったのも、そして今もそうせざるを得ないことも。
今の状態では、確かにそれが一番じゃろう。無駄な争いをせずにすむしな。
しかし、もしこの件が済めば、もしかして光明が見えてくるのではないかな。なにより、奴らの中には、あいつがいる。
それが何よりの証拠じゃて。ソナタは気がすすまんじゃろうが、今のままで良いわけがあるまい。
ちょっと考えてみておいてくれんかね。ソナタの力は必要じゃて」
狭い部屋の中、ランプが一つだけ点いていた。
暖炉の火は既に消え、急激に冷え込んでいく部屋の中、男は一人で話していた。
しかし、彼の声を聞く者の姿はどこにもなかった。外は、雪がしんしんと降り続けている…。
□ とある宿屋にて1 □
昼間だろうが、部屋の窓を閉め切った暗い部屋。
どこかの宿屋の2階だろうか、簡素なベットが部屋の大部分を占めている。
部屋の扉がノックされ、一人の男がやや沈んだ様子で入ってくる。
「報告します。布教活動中のディライト兄弟が、死亡しました。
兄は斬殺、弟の方は、B死でした。布教道具は、配布後のようです」
部屋の中にいた人物は、取り立て感情の起伏もなく、
「そう」
と、短く答えた。
その返答を聞いているのか聞いていないのか判らずに、入ってきた男の方はなおも報告を続けた。
「早速、目標地点に偵察を入れます。フィルシム市内のコアが破壊された以上、あの地点のコアが順調に育ってもらわないと計画に支障をきたします」
「まかせた」
と、またもや短く答える。その言葉からは、全くやる気が感じられない。
「では失礼いたします」
報告者は、判っていたものの、気のない返事にややがっかりしながら部屋を出ていった。
…まったく、なんであんな人を担がなきゃならないんだ…。