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夜
少女が頂上に登り終えたころには、空が少しずつ煌めきはじめていました。
星です。
しかし、少女は星というものがよくわからないものだったのでしょう。
ただ、ひたすら手を伸ばしてみるだけでした。
もちろん届きません。
しかし、少女はやめませんでした。何度も、何度も、手を伸ばします。
少女も、なぜこんなにも星が恋しいのかはわかりませんでした。
いくら歩いていても疲れはしませんでしたが、なぜかこのときだけは、胸に重い何かがのしかかるような感じがしました。
本の上に寝転がります。最初寝ていたときと同じように。
大の字になり、星空を両手で包むように仰ぎます。
あまり寝心地がいいとは言えないようですが、満点の星空がそれを忘れさせてくれるほどに美しく輝いていました。