プロローグ2
少年だ。
それだけでもビジネス街には不釣り合いなのに、こういうのもなんだけど、みすぼらしい格好をしていた。
と言っても悲惨さはなくて、なんというか・・・ハロウィンの仮装みたいな? そんな印象だ。
気が早すぎるってことを除けば、ギリギリ公共でも許される変質さ。
目深に被ったキャップから生える2本の角。
肩が出るぐらい首回りが伸びきってて、更には裾が擦り切れたブカブカのTシャツ。
男物とは思えないジーンズ生地のホットパンツからは、室内派には眩しい褐色の素足とサンダル。
股下では悪魔みたいな尻尾が腰から垂れ下がり、見え隠れしていて。
貧相で寒そう。
これが俺の率直な感想だった。
何故、一見しただけで少年と断じられたか――だが。
キャップからはみ出た短い髪と、薄いTシャツ1枚な所。それと声・・・いや、話し方かな?
「なあ! そこのアンタ‼ 助けてくれよ‼‼」
そう言って少年は道行く人達に近寄っていく。
だけど郁子なるかな。
誰1人として見向きもしない。
まるで見えてないみたいだ。
そんな反応を肌に感じて、少年は引き下がってはまた別の人へと近付く。
一々肩を落とす仕草を見る度に心が痛むけれど、だからって積極的には成れない。
時代が時代だからだ。
極端な話をすると、詐欺かも知れない。
少年は餌で、後ろでは怖い大人が待ってるかも。
そうじゃなくても動画を取って、親切にする人を揶揄うのが目的だったり。
今では、人情って言葉が人を馬鹿にするときの符号として使われるぐらい。それほどまでに他人とのかかわりは希薄になってしまっている。
だから猜疑心を働かせすぎなことは重々承知しながらも、ここは無視する。
厄介事に関わりたい人間は少ない。
居ないとは言わないけど、少ない――はずだ。
「なあ! 助けてくれよ‼」
下から覗き込まれるように隣で懇願されても、心を鬼にして見ないふりだ。
僅か十数秒が永遠に感じられるぐらい、心が重い。
心臓が締め付けられる思いをしてようやく。
「やっぱ無理か・・・・・・」
少年は呟いて離れる。
本当に申し訳ない。
その気持ちが無意識に少年の背中を追った。
「移動するか・・・」
そのせいか聞こえた言葉。
上乗せされる罪悪感。
頭を抱えたくなって視線をあげると赤信号。
なんだか糾弾されている気分だ。
それに拍車をかけるように、ブオォォオオオオ―――ッ‼ という排気音。
視界の端、そんなはずはない。
少年が映る。
白と黒の上。
朝っぱらに人工灯が刺す。
トラックのヘッドライトが少年を漂泊していた。
考えるより速く、身体が動く。
英雄の資格なんて、要らなかったのに。
伸ばした手が触れる。
少年の腕を掴む。
振り返って、目が合う。
「お前‼ 見えてるなら、そう言えよ‼‼」
怒られたその瞬間―――視界は暗転した。




