プロローグ1
めでたく二十歳を迎えたその日。
春休みだというのに、サークルの友人達や先輩諸兄に呼び出され、大学へ向かう途中。
一生における最大の分岐点に巡り合う。
そして、望むわけでなく、選ぶわけでもなく、ただ反射的にそうしたことによって――
――俺の人生というものは終わりを迎えることなる。
四月一日。
暦の上では何の意味もない日。
世界的? には”嘘をついても良い日”と呼ばれたりもするが、祝日でもなければ、大掛かりなイベントなどもない。身内でちょっとした冗談を言い合うだけの普通の一日だ。
だが俺。只野逸人にとっては少し違う。
特別な日だ。
そう、誕生日である。
俺は20年前の今日この日に生を授かったのだ。
そして、非常にややこしいのだが・・・四月一日というのは”学年で一番遅い誕生日”でもある。
どういうことだ? と、思う人もいるだろう。
四月一日生まれならば、学年で一番最初に誕生日を迎えるのではないか? 普通はそう考える。
だが、実際には。
四月一日生まれの子供というのは一つ上の学年に組み込まれるのだ。
そのからくりは”年を取る”というシステムに由来する、ちょっとしたバグみたいなものだ。
とてつもなくわかりやすく説明するなら、『年を取るのは誕生日の前日』とでも言えばいいだろうか。
つまり、四月一日生まれの人間は三月三十一日に歳を取るのだ。
だから、一つ上の学年に一番最後の人間として参加することになる。
ちょっとした豆知識だ。
ではなぜ、こんな話をしているかと言えば。
それが”今、俺が大学に呼び出されている理由”だからだ。
呼び出した相手は同じサークルの同級生と先輩達。
『一緒に誕生日を祝ってやるからサークル棟まで来い』
という旨のメッセージが前日の夜に届いたのだ。
この日本において、二十歳というのは一つの区切りだ。
酒やタバコが許されるようになる。
以前はそこに成人という重大なイベントもあった。
今ではそれは引き下げられ、大きな区切りでは無くなったが。
それでも、春休みの大学生が集まって酒を飲むには十分な理由だった。
しかも、俺は学年最後の二十歳。
周りはどんどん酒を飲めるようになって行く中で、気を使われたり、揶揄われたりした存在だ。
そいつを肴に一杯やろうというのが今日の魂胆だろう。
とはいえ、俺も少し楽しみにしていた。
なにせ一番最後だ。
友人達が楽しそうにバカ騒ぎする中、ただ一人素面ということには一抹の寂しさがあったからだ。
そう思えば、この2年通った大学への通学路も、少しは違って見えるというもの。
いつもの道を、いつものように、いつもより早く、進んでいると。
いわゆる。名所へ近付いてくる。
そこは、ビジネス街のビル群の間。
大通りへとつながる細い一本道。
片側車線の一方通行。
通称:転生通り
細い道であるのに、なぜか大型トラックが朝昼晩と爆速で通る道だ。
細く、長いこの道は信号も少なく。おそらくだが、抜け道として有名なんだろう。
だから、特定の時間にはよく大型のトラックが通る。
まるで踏切みたいに。
最近流行りの異世界転生を狙うならここに行け。と皮肉交じりに言われて付いたのが、さっきの”通称:転生通り”だ。
ここの信号は捕まると長い。
なにより、トラックもそれを見越して走っているからか、信号が変わる頃目掛けて突っ込んでくるせいで危なくもある。
とはいえ・・・
まだ遠いのに青信号が見えている。
これは、急いだところで引っかかるな。
そう判断して、ゆっくりと歩いていくことにした。
な~に、まだまだ約束の時間まで余裕があるんだ。
休みの朝の空気でも存分に味わいながら行こう。
それぐらいの気持ちでいると、おかしなものが目に飛び込んできた。




