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新幹線のたこ飯と富士山 ―恋人と向かう大阪はじまりの旅―

作者: さとるん
掲載日:2026/03/08

朝の新宿は、人であふれていた。

改札前の柱のそばで、私はスマホの画面を見ながら待っていた。

約束の時間まで、あと一分。

そのとき、改札の向こうから彼が手を振ってきた。

「おはよう」

「おはよ!」

今日、私たちは大阪へ行く。

東京駅から東海道新幹線に乗って、新大阪まで。小さな旅行だ。

「じゃ、行こっか」

彼と並んで歩き出す。京王線の新宿駅から、JR新宿駅へ向かう通路は、朝の通勤客でいっぱいだった。

駅構内を歩いていると、私は思わず言った。

「JR新宿駅って広いね!」

彼が笑う。

「広いよね」

人の流れに乗りながら中央線のホームへ向かう。

オレンジ色の電車が滑り込んできた。

ドアが開く。

私たちは並んで座った。

電車が動き出す。

見慣れた東京の景色が窓の外に流れていく。

なんだか落ち着く景色だ。

でも、私はふと思った。

(もう、この景色にも慣れたな)

電車は次々と駅を通り過ぎる。

四ツ谷。

御茶ノ水。

神田。

そして、東京。

東京駅はいつ見ても大きい。

赤レンガの駅舎の近くを歩きながら、新幹線の改札へ向かう。

「急がないと」

彼が少し足を速めた。

そのとき、私は大事なことを思い出した。

「駅弁買おー!!!」

思わず大きな声が出た。

彼が振り返って笑う。

「やっぱりそれか」

改札の近くには、駅弁のお店が並んでいた。

いろいろな弁当が並んでいて、見ているだけでも楽しい。

私はすぐに決めた。

「あたし、たこ飯がいいな!」

「じゃあ俺もそれにする」

彼も同じ弁当を手に取った。

レジに持っていくと、若い店員のお兄さんがにこっと笑った。

「今日のたこ飯には、ぷりっぷりの卵が入ったイイダコが入ってますよ」

「ほんとですか!」

私は思わずうれしくなった。

弁当を受け取り、新幹線のホームへ向かう。

白い車体の新幹線が静かに停まっていた。

私たちは指定された車両に乗り込み、席に座った。

しばらくして、発車ベルが鳴る。

新幹線は静かに動き出した。

東京駅のホームが遠ざかる。

窓の外には、たくさんの電車が見えた。

山手線、京浜東北線、いろいろな車両が並んでいる。

品川駅を過ぎるころ、私は弁当を膝に置いた。

「そろそろ食べよっか」

包み紙を眺める。

説明が書いてあった。

「みてみて、明石のタコとイイダコが入ってるんだって」

彼が身を乗り出す。

「楽しみ!」

ふたを開ける。

ふわっと、いい香りが広がった。

茶色く炊き込まれたご飯の上に、タコが並んでいる。

見るからにおいしそうだった。

一口食べる。

「おいしい!」

明石のタコは、噛むほどに味が出る。

ご飯にも、タコのだしがしっかり染みていた。

ゆっくり食べながら、私はふと窓の外を見た。

景色はいつの間にか海沿いになっていた。

遠くに駅の看板が見える。

「熱海…?」

次の瞬間だった。

その向こうに、大きな山が見えた。

「見てみて、富士山だよ!素敵ね!」

私は思わず身を乗り出した。

真っ白な雪をかぶった富士山が、青い空の中に立っている。

あまりにもきれいで、すぐスマホを取り出した。

カシャ。

写真を撮る。

そのまま、私は弁当をもう一度見る。

小さなイイダコが入っていた。

「これ食べてみよ」

口に入れる。

ぷりっとした食感。

中には粒のような卵が詰まっている。

私は笑った。

「富士山を見ながら食べるイイダコはおいしさ100倍ね!!!」

彼も笑う。

「高かったけど買った価値があったね」

「うん!!」

窓の外には、まだ富士山が見えていた。

私はふと思った。

「なんだか新幹線の楽しみを最初に取り過ぎちゃったけど、大阪まで何する?」

彼は少し考えて言った。

「将来に向けていろいろ話ししよっか」

私はうなずいた。

それから私たちは、小さな声でいろいろな話をした。

仕事のこと。

住む場所のこと。

これからのこと。

新幹線は速く、でも静かに走り続ける。

気がつくと、車内アナウンスが流れた。

「まもなく、新大阪です」

窓の外には、大阪の街が広がっていた。

新幹線が止まる。

私たちは席を立った。

ホームに降りると、少し暖かい空気が流れていた。

「大阪だね」

「うん」

改札を抜けて、地下へ向かう。

大阪メトロ御堂筋線の新大阪駅。

ここから、私たちの大阪の旅が始まる。

私はふと笑って言った。

「次は大阪のたこ焼きだね!」

彼も笑った。

「じゃあ最初の目的地、決まりだな」

私たちは並んで電車に乗り込んだ。

大阪の旅は、まだ始まったばかりだった。

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