表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/25

13. 初代・最強ババアの真実


「世界を我が手中に」


国王は術師に命じた。


臆病で優しい術師は苦しんだ。


少女リオランは国を守りたかっただけだ。

無闇に人を傷つけたいわけではない。

それなのに――




***

「……どうして」


棺に横たわる師は相変わらず美しかった。

手入れされた緋色の髪。

愛用のルージュが塗られた唇は、今にも動き出しそうなのに。


『殺戮? いやいや、そなたは力を誇示するだけで良いのだ。それで不必要な戦いも避けられる』


『圧政? いやいや、そなたも言うようになったな。必要なのだよ、舐められれば直ぐに暴動を起こしかねん。隣国とは言え、そなたも死人が出るのは避けたいだろう?』


停止した頭の中を、強欲な王の言葉が駆け巡る。


千の使い魔をもってして、周辺国との戦いに勝利した小国は。

その武力をもって、隣国に圧政を敷いた。

圧倒的な武力の前に、目に見える反乱は生じなかったが――


「難民に扮した敵国の刺客です」

棺の前で涙ぐむのは、ビビアンの同僚だ。


「国王陛下を庇い、なおかつ陛下が受けた毒を肩代わりしたそうで……」


守れなかった。

最も守りたかった人を、守れなかった。




***

彼女は苦渋の決断を下した。

愛する使い魔たちに、"悪役"を命じたのだ。


恐ろしい蛇の魔物の姿をまとった使い魔たちは、国境線に住み着いた。

人が近づけば、誰彼構わず襲いかかる。




***

「分かっておるぞ! そなた、なんのつもりだ!」

激昂する王を前に。


「私は……()()()()は、国民を誰にも殺させない」

語気を強めた術師の少女に、王は気圧された。


(こやつめ……臆病で吃りの小娘が、雰囲気が変わっただと!?)


「あたくしは、この国の人に、誰も殺させない」

俯きがちだった少女が、今は真っ直ぐ背筋を伸ばし、王をはっきり睨みつけた。

ポケットから取り出した口紅で、すっと唇に朱を引いた彼女は宣言した。


「あたくしは、大切な人が愛した国を守ります」


その声が合図だった。

轟音に包まれた城。

慌てて窓に駆け寄った王は、目撃した。


木が、森が、山が動き出す様を――



***


こうして小国の人々は外界から切り離された。

けれど、外国からの侵略におびえる必要もなくなった。


「蛇が出たぞ!」

逃げる人々の前に現れる術師。


「術師様が助けに来てくれた!」

「術師様、ありがとうございます!」


子飼いの使い魔との茶番劇。

けれどもそれとは知らぬ人々は、彼女に感謝した。

嘘は彼女を苛んだが、周辺国は相変わらず乱戦の世だ。


(この子たちには悪いけど……いつか、本当の平和がくるまで)


恩師の名が刻まれた石碑の前で。

蛇の姿になった使い魔たちを、彼女はそっと撫でてやる。


彼が愛した国を、私は守り続けよう。


やがて彼女は年を重ね、"最強ババア"と呼ばれるようになるのだった――




挿絵(By みてみん)



お読みいただき、ありがとうございました。

物語は残り1話で完結となります。

最終回は、金曜の夜に公開予定です。


***

あまりに短い出番だった師匠ビビアン……

けれども、どうかご安心ください。


◆予告◆

『最強ババアのオフタイム〜魔女たちの日常譚』

本編スピンオフの短編集を、明日より公開いたします。


第1話は、リオランとビビアン――

少し不器用な師弟の、ささやかで温かな日常回です。

感情表現が苦手なリオランが、ほんの少しだけ“甘さ”を見せます。


どうぞ、こちらもお楽しみください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
蛇たちの正体に、切なくて鼻の奥が痛くなりました。 番外編も最終話も楽しみに待ってます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ