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第8話 マルンバ町

 農村マルード村を発ってしばらく進むとマルンバ町があった。

 この町は王都への物品の中継地として発展してきた。

 また近年では王都が手狭なこともあって、王都を経由しないでこのマルンバ町を中心として各地への物資の輸送の中心的役割をになっている。


 王都と比べてしまうとかなり小さいが、今までの村よりは倍くらい大きい。

 そこに家々とそれから裏通りに倉庫がずらっと建設されていた。

 表通りには大型の商店が立ち並んでいる。


「すごいですよね。立派な町です」

「そうだよねぇ」

「お店によっては王都店よりこっちのほうがお店が大きいんですよ」

「王都は古いからねぇ」

「そうそう、そうなんですよ。この国の出身じゃないのによくご存じで」

「まあ私は旅商人なので、知ってるんよ」

「ほへぇ」


 この町はあとで発展したので、土地に余裕があって、最初から大きな区画で店を建てることができたのだ。

 そういう訳で倉庫も王都の倍くらいの巨大倉庫が並んでいる。圧巻だ。

 王都はそれこそ百年以上も前から家や商店が並んでいて、表通りなんかは当時とそれほど変わっていないそうだ。

 だから家や商店が大きく作られていなかった。手狭も手狭で商会によっては王都二号店とか王都西支店とかを作ってなんとかやりくりしていた。

 しかしそれも限界を超え、こうして外に新しく町を作ったのだ。

 それがマルンバ町だった。

 昔はこの辺りも一面、麦畑だったらしい。


 総二階建ての大きな倉庫は一段と目立つ。


「ジャイアント族の人がいます」

「あぁ大きな倉庫もあったもんね」

「体が大きい分、荷物持ちに便利ですね」

「そういうことだろうね」


 黒い革の首輪をしている。奴隷の証だ。

 もっと東のほうにジャイアント族の集落はある。

 いくつか点在していたと思う。

 そこから奴隷として連れてこられたのだろう。

 確かに体が大きく、麦袋を何袋も積んで両手で持って運んでいた。

 あれは私には無理だ。


「すごい、すごい」


 モーレアちゃんが手を叩いてよころんでいる。

 奴隷のジャイアント族さんは、少し得意げに荷物を運んでいった。

 奴隷であってもプライドくらいはある。

 やはり仕事を褒められたらうれしいのだろう。


 ジャイアント族さんは薄青い肌が特徴的だった。

 ここで働いているジャイアント族さんのほとんどは男性だけど中には女性もいた。

 女性の方も筋肉質で普段から肉体労働をしていることを窺わせる。

 そんな彼女をちょっとカッコイイなと思った。

 奴隷という身分であっても、立派に仕事をこなしている。

 人々の役に立っているのだ。

 奴隷と言っても借金奴隷とかなのだろう。しっかり服もそれなりのものを着ている。

 身だしなみも悪い感じではないので、そこまで労働環境も悪くなさそうだ。


 馬車に満載されていた小麦袋があっという間に倉庫に運ばれていく。

 流石、ジャイアント族さん。仕事が早い。

 監督官なのか人間の作業員の人が見守っていたが、ジャイアント族さんにねぎらいの言葉を掛けて、倉庫へと戻っていった。

 あちらに休憩室があるだろう。

 体が大きいので、普通の飲食店などでは入りにくいそうだ。

 人間規格の家や酒場だと生活とかも大変そうだ。

 ここには専用の施設があるのだろう。宿泊所とか。


「今日のおすすめは、グラタンですね」

「よし、じゃあグラタン」

「私もそうします」


 こうして今日の晩ご飯が決まった。

 小麦粉をたっぷり使ったホワイトソースのグラタンだ。

 もちろんマカロニも小麦粉製品だ。

 ニンジン、タマネギ、鶏肉、カブなどが入った具沢山のグラタン。


「あちっ、あちあち」

「ふぅふぅ、おいち」

「美味しいです」


 なんとか二人で冷ましながら食べる。

 熱かったけれど、なんとか口に入れてふぅふぅ言いながら食べた。

 まろやかな口当たりと、表面のパリッとした食感。

 それからコクのある塩味の効いたチーズが美味しい。


 それから小麦粉のドーナツ。

 高級品の砂糖が少し使われていて、甘くておいしかった。

 真ん中に穴が開いている。

 この穴、なんであるんだろう。

 アンパンみたいな形でもいいんじゃないか、と思いつつ、食べた。

 美味しかったので、なんでもいいけどね。


 この日はスイートルームは貴族様が使っていたので、普通のダブルベッドの部屋になった。


「それではおやすみなさい」

「おやすみ、モーレアちゃん」


 今日もベッドでぐっすりと眠るのでした。


 ヒツジが柵を超えていく夢を見た。

 途中から数が分からなくて一から数え直していた。

 そして気が付いたらピンク髪のヒツジ、もといモーレアちゃんたちが柵を飛び越えていく。


『モーレアちゃんが一人』

『モーレアちゃんが二人』

『モーレアちゃんが三人』


 ……。

 こうして夜も更けていく。外は真っ暗で静かだ。

 昼間の喧騒とは大違いで、なんだか不思議な気がする。


 コップをマジックバッグから取り出して、そこへ水魔法で水を入れる。


「ウォーター」


 手から水が出ていってコップに溜まる。

 モーレアちゃんは隣で爆睡していた。

 私は水を一気飲みすると、再び布団にもぐって眠りについた。

 いよいよ明日は王都に到着する。



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