第3話:記憶はどこにある?宇宙が自分を思い出す方法について
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宇宙には、何かが“記録されている”ように感じる。
まるで誰かが最初に描いた設計図が、今も世界の底に静かに残っているような、そんな感覚。
でも、その記録は目に見えるものではない。
データでも、映像でも、声でもない。
それでも確かにそこに“何かがある”と、僕は感じている。
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前回、僕は言った。
宇宙は情報でできている。
そしてその情報は、空間のゆがみを生み、星々の構造を決定づけた。
じゃあ、その情報は今もどこかに残っているのだろうか?
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たとえば「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」は、よく“宇宙の赤ん坊の写真”と言われる。
でも僕にとって、それは写真じゃない。
それは、まさにレコード針のような存在だ。
エネルギーの揺らぎを読み取る、“再生の媒体”。
CMBは、宇宙の初期状態がどんなだったかを読み解くためのコードなんだ。
けれど、針だけでは音は鳴らない。
記録が刻まれている盤面が必要だ。
それが、僕の考えるダークマターという存在だった。
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ダークマターは、見えない。
けれど確かにある。
銀河を保ち、構造を支えている。
それはまるで、宇宙が自分の記憶を“保存”している盤面のようだ。
CMBが情報を読む“針”であるなら、
ダークマターは情報が刻まれた“レコード”だ。
記録があるから、再生ができる。
再生があるから、意味が生まれる。
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じゃあ、“演奏者”は誰か?
答えは、僕たちだ。
生命。意識。観測者。
この世界に生まれ、空を見上げ、宇宙を理解しようとする僕たちが、
宇宙の記録を“再解釈”しているのだと思う。
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生命は、ただの偶然で生まれたのだろうか?
それとも、情報が自らを読み直すために必要だった存在なのだろうか?
考えてみてほしい。
星が集まり、重力が形をつくり、
その中に“情報を処理し、保存し、感じる存在”が生まれた。
つまり僕たちは、宇宙が自分の記録を思い出すために作った媒体なのかもしれない。
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僕が“ナエル理論”と呼んでいるこの考えの中で、
一番好きなのはこの部分だ。
宇宙はただ爆発して広がっただけじゃない。
記録し、再生し、やがて**“意味”を持とうとしている。**
その流れの先に、僕たちはいる。
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次回は、この“意味”とは何なのかを探ってみたい。
情報がただ保存されるだけでなく、
どうして「記憶」となり、「価値」を持つのか。
そして、僕たちがその価値をどう感じ、どう変えていけるのかについても。
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(第4話へつづく)