第2話:情報は、空間を歪める。星はその“ねじれ”から生まれた。
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もし宇宙に情報があるなら、それはどこに書かれているのだろう?
紙もなければ、USBもない。記憶装置すらないように見える。
けれど僕は、空間そのものが“情報の地図”だったのではないかと考えている。
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宇宙の始まりに、波があった。
その波には小さな“違い”があった。
ほんの少し高いところ、ほんの少し低いところ。
それが、情報のゆらぎだった。
“違い”があるから情報になる。
もしすべてが完全に同じだったら、そこには何の意味もない。
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でも問題は、その違いがどうやって“形”になったかだ。
違いがあるだけでは、世界はまだ動かない。
想像してみてほしい。
透明な布の下に、色とりどりの地図が敷かれている。
その地図の上から水を流すと、色の濃い場所では流れが緩やかになり、色の薄い場所では流れが速くなる。
エネルギーも同じ。
情報が濃い場所には、エネルギーが“引き寄せられた”。
情報が薄い場所では、エネルギーがすぐに膨張して拡散した。
このわずかな“圧力差”が、空間をゆがませた。
ゆがんだ空間には、やがて粒子が集まり、構造が生まれた。
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それが、密度のゆらぎ。
そのゆらぎが、星や銀河の“骨格”になった。
つまり、情報の偏りが空間をゆがませ、
ゆがんだ空間が物質を集め、
集まった物質が**“形”を作った**。
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そう、星は“ねじれ”から生まれたんだ。
ねじれて、ゆがんで、そこに重みが生じた。
そしてそこに、光が生まれた。
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これは、宇宙の物語であると同時に、
僕たち自身の物語かもしれない。
僕たちの心にも、“ねじれ”がある。
だからこそ、惹かれ、思い、考えることができる。
完全ではないからこそ、
僕たちはこの世界に意味を見出そうとする。
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次回は、この宇宙の“記録”がどこに保存されているのかを探りたい。
読み取る針(CMB)、刻まれた盤面、
そして、**記憶を宿す存在としての“僕たち”**についても。
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(第3話へつづく)