閑話•エイプリルフール
本編には関係のない小話(桜井視点)
桜井が日本に来て2度目の春の話になります。
「婆さん、エイプリルフールって何だ?」
「なんじゃ、お前さん知らんのかい。」
「さっき爺さんがカレンダー見て『明日はエイプリルフールだな…』って呟いてたから単語しか知らないな。」
「…そういえばさくらが柚の背中にひっつき虫しておったのも去年の今日じゃの。」
「ひっつき虫って…俺は婆さんに簡単に引き剥がされたけど。」
「フハッ…そうじゃったな。あぁ、話が逸れてしもうたの。」
「そうだよ!!結局エイプリルフールって何なんだよ?」
「エイプリルフールは愛を伝える日じゃな!4月1日の午後に日頃の感謝の気持ちや愛の言葉を伝えるんじゃよ。」
「午前中だといけないの?」
「感謝の気持ちや愛の言葉を伝える時に相手の好きな物を渡すんじゃよ。午前中は渡すプレゼントを用意したり伝える言葉を考える時間じゃな。ちなみにバレンタインやホワイトデーは主に恋愛としての愛を伝えるイベントじゃがエイプリルフールは主に家族愛や友愛を伝えるイベントじゃ。柚に何かしてやったらどうじゃ?」
「南雲に俺が?」
にこにこ婆さんは俺を見てくる。
南雲には普段からお世話になってるからエイプリルフール参加するのありかもしれないけど婆さんに乗せられた感あってちょっと嫌。
……うーんどうしようかな。
「柚は友達付き合い浅く狭くじゃから友人とエイプリルフールしたことないんじゃ。」
学校で見た感じ南雲は最低限の会話や絡みはするけど俺ほどにはやり取りしないし家に呼んだりもしない。
見た目黒豆柴、時折キャンキャン鳴くポメラニアン。
同級生の男子から聞いた話曰く、怖く無いし可愛いけど遠くから眺めて愛でていたいタイプらしい。
だから婆さん的には俺が適任だと認識したのかもしれない。
「でも何すればいいんだ?」
「そうだねぇ…南雲の好きな物買ってきて渡したらいいんじゃないかい。」
「じゃあ肉だな!!」
「生肉は昼に渡せないだろう?だからお弁当作ってやったらいい。」
「焼肉弁当だな!!」
「あとはお花とか感謝のハグとかはどうだい?」
「よし!明日の朝は南雲に焼肉弁当作ってやってお花渡してハグしてくる!!」
「いつもありがとう、これからもよろしくって伝えるんじゃよ。」
「おう!じゃ、肉とお花買ってくる!!」
……というのが昨日の会話だ。
現在、4時間目が終わり給食前に慌てて南雲を呼び止め焼肉弁当とお花を渡してハグをしている最中。
感謝の気持ちを込めて「南雲!いつもありがとな!これからもよろしく!!」って言ったんだけど南雲は俺の腕の中で固まったまま動かない。
「……桜井、これは何?」
「それは焼肉弁当だ!肉も牛肉と豚肉の2種類使ったんだぞ!!お花はお店の人におすすめされたプチブーケだな!!」
「いや、それも気になるけどどうして急にこれを…?」
「今日はエイプリルフールだからだが…」
「……誰からエイプリルフール教わった?」
「南雲の婆さんだ。エイプリルフールは4月1日の午後、家族や友人に感謝の言葉や愛の言葉を相手の好きなものと一緒に贈るって聞いたぞ?」
周りがやたら俺らを見てくるのは何でだ??
「桜井はおばあちゃんから冗談言われたんだよ。」
本来は嘘をついてもいい日がエイプリルフールらしい。
地域によって嘘は午前中だけ、午後にはネタバラシをする場所もあるらしい。
俺は午前中嘘をつかれることがなかったのもあって婆さんの冗談だと気付けなかった。
「まあ南雲はちょっと嬉しそうだし普段あまり感謝言えてなかったからちょうど良い機会だったな!」
ただこの後は給食だったのでお花は教室に飾り、弁当は一口だけ南雲が食べて残りは俺が完食した。
勿論、給食も残さず食べたぞ!
どうせなら南雲が嬉しくなる嘘を来年迄に考えようと思う。
よーし!来年、エイプリルフールリベンジするぞ!!
閲覧ありがとうございます。
そういえば今日エイプリルフールだったなとふと思い、突発的に書きました。
〜プチメモ〜
出会いが南雲中2の春
今回が南雲中3の春