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4.南雲の家族と誓約書

気ままに書いていたら少し長くなりました。


俺は桜井翔也。

さっき南雲を連れてきた妖精の森で上位花妖精としてうまれ、のんびりと過ごす内に外の世界が見たくなって妖精の森を飛び出した。

場所は行く当てもなく花占いで適当にどっち行くかだけ決めて妖精姿で飛び回ってさ。


いくつか異世界を旅して分かったことは魔力を持たない世界が多いこと、魔反発(魔力が合わなかったり片方だけ持っている場合、触れると魔力を持ってる方が静電気みたいにバチってなる反発のこと)が地味に痛いってこと。



だから日本に魔力がないことが分かった時はすぐに次の場所へ行こうと思ったんだけど妙にいい匂いがしてフラフラ飛び回り探した。

そのいい匂いの元が南雲だったんだ。


極上の花の蜜みたいな匂いがしてふわふわ南雲の周りを飛び回ってくっついた途端、彼の祖母に引き剥がされた。

妖精姿は魔力の無い生き物には見えないって油断していたからあっさり捕まったんだ。

…今思うと凄く間抜けな顔をしていたんだと思う。

俺は南雲の背中にくっついた時の、両手を広げた格好のまま小さな鳥籠に入れられた。

そんな俺を南雲の祖母は大笑い。

暫くその笑い声にポカンとしてしまった。


「緑茶だよ、飲んで落ち着きなさい。」


俺は南雲の祖父から渡されたペットボトルの蓋に入れられたお茶を鑑定してから飲んだ。

そして飲んで落ち着いた後は鳥籠から抜け出そうとしたんだけど…南雲祖母お手製の鳥籠が頑丈過ぎて出れなかった。

上位妖精としての自信無くして拗ねたよね、うん。



「あんた、あほだねぇ〜…」


「婆さん、この子も頑張ってるんだからそんな笑ったら可哀想だよ…」


「契約も無しに孫にくっついた上位であろう妖精がわしの作った鳥籠で拗ねていたら…ブフッ」


「あぁ…ほら、また落ち込んでしまってるじゃないか。」


「フフッ……でもまあいいタイミングだったかもしれないねぇ。」


「ならこの子に任せるのかい?」


「それはこの妖精次第さ…さぁ、あんた、名前は?」


「…なんで言わないといけないんだ!」



南雲の祖母が笑いながら言ったのを南雲の祖父が宥めるやり取りの後、名前を聞かれたが笑われた事による羞恥心と上位であるにも関わらず名無しである事へのコンプレックスに俺は真っ赤になって怒鳴った。


いくら怒っても所詮鳥籠の中。

南雲祖母は相変わらず笑っていて気にしていないし、南雲祖父はお腹が空いてるのかい?って次は小さなどら焼きを差し出してくる。

俺は怒ってお腹すいたし、また鑑定して食べた。

…小さいとはいえ俺の体サイズのだったけど食べ応えあって美味しくて気付いたらお腹いっぱいで鳥籠の中でその日は寝てしまった。




翌日、南雲の気配が遠くなったことに気付いた。

俺は昨日お茶とどら焼きをくれた親切な南雲の祖父に聞いて学校という存在を知り、彼が学校に行っている間はほぼ祖父母しかいないことが多いことを知った。

それなら俺は魔力がない生き物にも見えるように人間に変化も出来るし学校に付いて行ってもいいなって考えたんだ。

そしたら2人から契約の話を持ち出された。


「……てかなんで2人は俺が見えてるんだ?」


「今更かい。そうだねぇ…教えてやってもいいけど話した内容やお主が妖精であることはわしが死ぬまで周りに、勿論孫にも話せないようにするが…それでもいいかのう?」


「それはまあいいけど…そんな大事な話?」


「まあまあ大事じゃの。」


「で、なんで見えるんだ?」


「わしがお主がいた所と同じ世界の生き物だったからじゃな。」


「は?」


「わしはお主と同じ世界の上位精霊じゃったが旅をして爺さんに一目惚れ、人間姿で猛アプローチして恋愛結婚。それからこの世界に移り住んだんじゃよ。いやはやあの頃は若かったからのぅ…アプローチされた爺さんはすぐ真っ赤になって凄く可愛かったんじゃ。」


「えーと…つまり婆さんは俺と同じ世界の上位精霊で爺さんはこの国の人間?」


「そうじゃ。爺さんは体が繊細だったからわしの花魔力、つまり生命力を長い年月かけて少しずつ分けているうちに魔力持ちになり見えるようになったのぅ。あと多分爺さんの祖先に精霊か妖精か分からんがあの世界の関係者がいたはずじゃ…魔反発が少なかったからのぅ。」


「あの、俺がくっついたあの子は?」


「息子はあまりわしの魔力を受け継がなかったが孫は隔世遺伝なのかわしの精霊としての血を濃ゆく受け継いでおるからのぅ…気付いてはおらんがあの子は妖精姿でも本来は見えるはずじゃ。」


目の錯覚みたいな感じで見え始めたら意識しなくても見えるようにはなるみたいだけど今は魔力持ちだけど見えていないと説明があり、数枚の魔法誓約書を見せられる。


「…なにこの誓約書。」


「この誓約書に同意してサインしたらその鳥籠から出してやるしあの子と仲良くなるのもいいことにしようと思って用意したんじゃ。」




【1.妖精であることやこの誓約書にサインするまでのことを話すまたは書くことはしてはいけない。

2.あの子(南雲柚)と仲良くすること。

3.花田誠と花田百合アマリリスの死後も南雲柚のそばについていること。

また、場合によっては妖精の森に連れて帰り魔力回復をしたりして南雲柚が健康で幸せに暮らせるようにすること。


以上3つの項目に同意し、サインする意思があるなら鳥籠から出して名付けを行うのでサインをすること。

サイン完了後は南雲柚のそばにいることを許可する。】




「…誰?この南雲柚と花田誠と花田百合アマリリスって。」


「南雲柚がお主が気に入っておるあの子で花田誠が爺さん、花田百合がわしでアマリリスはわしの精霊名じゃ。」


「へぇ…」


「ちなみにいくら精霊と妖精が同位で同じ上位でも年の功と名ありだと魔力量は違うからお主ではこの鳥籠を自力で出るのは不可能じゃな。」


「誓約書同意するしかないじゃないか!」


「フフフッ…でも同意するじゃろ?」


「まあ…あの柚って子とは仲良くなりたいし、このまま鳥籠生活は嫌だから同意するけどさ一つ気になることがあるんだけど。」


「なんじゃ?」


「婆さん、精霊なら長生きだろ?短命な人間である爺さんだけならまだしもなんで誓約書に婆さんの名前まであるんだ?」


「それは爺さんの死を見届けたらすぐに死んで来世の生まれ変わりでも一緒になろうと思ってな!」


にこにこ笑う婆さんに苦笑いな爺さんは何度言っても聞かなくてな…諦めたんだよって遠い目。

上位の精霊でありながらこの地に、爺さんと共に最期まで一緒であろうとする婆さんの意思は固いらしい。


「ならこの場合によっては妖精の森に連れて帰り魔力回復をしたりってのは柚って子の意思次第では妖精儀式もありなわけ?」


「妖精儀式ってのは気に入った生き物を妖精するあの儀式かの?」


「そうそう!それ!」


「わしがいなくなった後、孫が妖精になりたいと心から願うならいいが…説明をきちんとせず良いように言いくるめて儀式を行うのはいかん。」


「わかった!」


「もしもその時が来たならわしの息子達、孫の周囲の人間関係の記憶を弄るのも伝えなければならぬぞ!」


「勿論!その為にあの子と仲良くなって人間関係把握しなきゃな。」


「柚の両親は仕事人間で海外に出張中で滅多に会うことは無いとは思う…」


「あの子は両親への関心が薄いからねぇ。能力高い人を尊敬し、時にコンプレックスを抱える子ではあるんじゃが…あの子は親の仕事について全然知らんから関心無いのじゃ…」


「仕事についてはわしらもよく知らないから息子達が話すしかないんだが中々会えないし話すタイミングを逃しておるみたいでな…」


「つまり両親は当てにならないから爺さんと婆さん死後、あの子が一人ぼっちにならないようにする為の誓約書ってわけだな?」


「まぁ…そういうわけじゃ。同意してもらえるかの?」


「いいよ!あの子気に入ったし!!早く名をつけてくれよ!」


「じゃあお主の名はー…『さくら』じゃ。」


「さくら?何からつけたんだ?」


「ほれ、あの白と薄ピンクの花!あれじゃあれ!」


庭先に咲く花を指差した婆さんに少し呆れた爺さん。


「婆さん、目に入った花適当につけたじゃろ…」


「適当なのは誤魔化して…そうじゃな、そこは出会いの季節に咲く花とか、わしらが死の約束…要は別れの時の花とかなんか良いように伝えれば良いじゃろ!」


「婆さん…それ、俺が聞こえるように言ったら意味ないやつ…」


「…みみっちい男はモテないぞぃ!」


「妖精や精霊は結婚とか滅多にしないの婆さん知ってるくせに。」


「まあまあ、二人とも忘れないうちに誓約書記入してしまったらどうかな?」


余計なことを言ったと慌てて爺さんは俺達の前に誓約書を差し出して来た。

俺はさっき名付けて貰った名前を魔法ペンで記入した。


婆さんのやや適当感もあるが名無しが嫌だった俺は自分で書いた『さくら』という文字に少しだけ嬉しくなった。


「嬉しそうじゃな。」


「…悪いかよ。」


「わしも爺さんに名付けて貰った時は嬉しかったのぅ…」


「…婆さんから名付けるまで風呂もトイレも付き纏う宣言された時は困ったが…名付けた時は今のさくらみたいに嬉しそうな顔しておったな。」


懐かしむ二人は誓約書の記載漏れがないか確認して三枚の内一枚を将来の孫にと預かり二枚受け取ってもう一枚を爺さんが小さな箱に仕舞う。

俺は誓約書を収納魔法で仕舞い、鳥籠から出してもらった。

読んでくださりありがとうございます。


次も桜井視点です。

キーワードは禿げとブロッコリー。

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