18.魔力水の実
精霊からおすすめの実があると聞いた僕は桜井を誘ってその実を見に行った。
「あの水色?いや緑色?のやつ?」
「あれは浅葱…いや、色味が少し濃いから花浅葱色だな。」
湖の真ん中に大きな木がいくつも生えていてその木に実っている。
その少し緑がかった鮮やかな青色の実が今回のお目当ての実である。
「美味しいって聞いたけど僕は泳ぐの苦手だし取れないや。」
「俺が取ってこようか?」
「お願いするね。」
妖精に戻った桜井がすい〜って実の所まで行って触って収納を繰り返す。
その繰り返し作業を遠くから見て慌てて下手したら木ごと収納しそうな桜井に大きな声で忠告する。
「桜井ー!1本の木についてる実全部取るのは駄目だからねーーー!!」
「はーーい!!」
うん。良いお返事。
でも既にかなり収納されていて桜井の手際の良さが伺える。
「桜井ー!戻って来てーー!!」
「えー??もういいのかー!?」
「うん!十分過ぎるほどだよー!!」
桜井はすぐさま戻ってきて戦利品を自慢してくる。
晩白柚くらいのサイズでずっしりしているその実は魔力水の実と呼ばれる果物で魔力を多く含んでいるらしい。
「妖精の森にも似たようのあるぞ!魔力樹の実っていう果物でこの果物より小ぶりでたくさん木に実んだよ。」
たしかあったはず…と桜井が収納魔法から取り出した甘夏蜜柑サイズの果物を晩白柚を持っている僕の手にバラバラ乗せていく。
「うわ…ちょ、桜井乗せすぎ…!あ!落ちた…」
落ちた果物は精霊達が拾い集めてくれる。
「魔力樹の実と魔力水の実、交換な!数はー…これで一緒だな!!」
ぽんぽん僕の所に乗せてボタボタ落ちる。
それを精霊達が集めている。
直接渡せばいいのに…と思ったけど口に出さない。
「じゃあ、食べてみる?」
「お!食べよう!!あ、これ南雲の魔力樹の実!はい。」
「ありがとう。では「いただきます!!」」
湖のほとりで晩白柚似の魔力水の実の分厚めな皮を剥くと中から甘夏ゼリーみたいなプルンとしたものがふるふる揺れる。
「早く食べなよ。ジュレみたいで美味いぞ!!」
ぱくんと一口。
レモンと甘夏蜜柑をジュレにした感じ、あとほんのりライムの風味もするそれはさっぱりしていて食後にはぴったりなデザートだった。
「これ、紅茶とかに入れたりしても良さそう。」
「あー…今緑茶の茶葉しか手元に無いな。あと試してないが酒とかでも合うやつは合いそうだな。」
ペロッと魔力水の実を完食した桜井は収納魔法から魔力樹の実を取り出して剥く。
「…いいな、お酒飲めるの。」
「南雲にはまだ早いぞ!?家に帰ったらカクテルグラスにミックスジュース入れて出してやるから!な!お酒はまだ飲むなよ?」
「飲まないよ。飲めていいなーって話。」
毎年5月の末になるとおばあちゃんの梅酒作りのお手伝い(洗った梅の水分を拭き取ったりヘタを取ったり)をしていた。
そして梅酒が完成したらお世話になっている近所の方々に配っているのだけど未成年の僕はホワイトリカーが買えないから今年から作れない。
それが少し嫌ってだけで本当は別に飲みたいわけではないんだ。
おばあちゃんとの毎年恒例作業だったからその作業が無くなるのが寂しいってだけ。
桜井も何となく気付いてそうだけど気にしないようにしてるのか魔力樹の実をパクパク食べていた。
「ほら、南雲!こっちの魔力樹の実も美味いぞ!」
実を差し出され口に入れる。
こっちは歯応えがしっかりしていてこれはこれで美味しい。
「でも柑橘系の味かなって思ってたのにまさか唐揚げ味だなんて…」
「こっちの実は色が根岸色だし肉感より野菜感ある色なんだけどガッツリ唐揚げ味なんだよな。」
ケラケラ笑う桜井は皮の部分もモシャモシャ食べている。
「美味しいの?魔力樹の実の皮。」
「鶏皮せんべいみたいで美味いぞ!パリパリしてて白米が進むんだよなぁ〜…」
僕も桜井も精霊達もご飯食べた後だというのにたくさん食べてしまった。
そして桜井が追加で言う。
皮と実をセットで食べたら外はカリカリ中はジューシーな唐揚げだし、色違いの魔力樹の実はそれぞれ味が違うぞ!って。
精霊や妖精は見た目を変えれるから問題無いけど僕はそのまま肉が体に付くから成長期とはいえ食べる量は気を付けようって思ったよ。
閲覧ありがとうございます。
次も南雲視点です。
キーワードは『お散歩』。




