2.桜井という男
僕は友人、桜井の後を追いながらそっと自分の頬をつねった。
…うん、痛いので夢じゃないらしい。
いや、そもそも草花の香りやうんこの匂いがする時点で夢だとは思わなかったんだけど。
だって嫌じゃん、そんな匂いの夢。
呑気に鼻歌を歌う友人に急かされ足を進めるものの一体どこへ向かうのか、今どこにいるのかさっぱり分からない。
ふと歩きながら羽根を生やした桜井を見つめ、中学からの友人だけど僕は思ったよりあんまり桜井のことを知らないんだなって思った。
そもそもこの桜井という男、少し変わっているって思ってた。
桜井=妖精と知った今では蜂蜜が主食だったんだろうなって分かるけど今日まで知らなかったわけだし。
桜井の好きな物は蜂蜜。
しかも甘い物以外基本食べない。
でも糖尿病なるぞ!って弁当作ってやれば興味津々に食べた上、おかわりをねだるんだ。
食べれるなら蜂蜜瓶を持ち歩くなよ。
桜井、知ってるか?
お前、一部でプー様とかプー桜井って呼ばれてるんだぞ??
私服赤い服多いのは知っててわざとか??って思ってしまうよ。
…それにしても学校ブレザーで、私服登校じゃなくて良かったよ。
じゃないとそばにいつもいる僕もその仲間達にされそうだしな!…なんてこと前なら考えてた。
ただ桜井の後ろを歩くだけなのが暇で普段考えないようなことを考える。
多分桜井が妖精だって知ったのも原因の一つ。
妖精なのはいいけど妖精以外にも違う所あるんじゃないかってもやもやしてさ。
なんかさ、秘密ごとって苦手なんだよね。
桜井に限った話じゃなくておばあちゃんとおじいちゃんにも言えることなんだけど僕が悩んでいたらすぐに気付くし隠し事出来ないんだよ。
なのにさ僕だけ知らない気付かないってなんか嫌じゃん。
だから秘密があるなら友達だし知りたいなって思うんだ。
桜井のことだから今日みたいに唐突に…なんてありそうだし予想するだけでも心構えになる気がして更に考えを膨らましていく。
学校や僕の家で見せていた桜井と違うかな?って予想は今の所二つ。
一つが両親の有無。
いや、両親がいないのは本当かもしれないけど変化魔法?で日本人に成りすましてるならそもそも日本人の両親はいないだろうって考え。
二つ目が児童養護施設で暮らしてる話。
僕が桜井の暮らしている児童養護施設行った事ないのと僕がうんこついた靴見ていた少しの間で別世界行けるならそもそも児童養護施設で暮らす必要はないはず!って考え。
あと気になるのは妖精だから警戒心みたいなの強いのかな?ってこと。
よく僕の家に入り浸ってるし僕や祖父母は家族認識みたいで僕らが作った物はよく食べていたんだけど他の人からの食べ物は一切受け取らないんだ。
プー桜井の為に日頃から甘いお菓子渡そうとした女子も桜井が僕の作った弁当をおかわりしようとした姿を見て自身の弁当のおかずをあげようとしてきた女子にも凄くいい笑顔で受取拒否してたし。
日常ならともかくバレンタインの時の鬼気迫る女の子達はそれはもう怖かった。
桜井は顔が良くて勉強も運動も出来る僕の理想みたいなやつだからバレンタインモテモテなのも分かるし僕もモテたい!って思うけどさ、一時期は女の子が怖くて近寄れなかったよ…
桜井にお菓子の受け取り拒否された面々が恨めしいような目を僕に向けてくるんだもの。
見た目とか能力は羨ましいけど桜井ほどモテるのは面倒そうだなって思った。
ぼんやり桜井の後ろ姿を見て考え事しながら歩いていたらいつの間にか木々だらけだった場所を抜け、色鮮やかな花畑に着いた。
「南雲!ここで昼寝しよう!!」
「うん、ちょっと休もうかな。」
「はやくはやく!ここ座りなよ!」
「はいは…グハッ…」
桜井に促され花畑に興味を惹かれて近寄ったら凄いスピードで桜井に似た姿の妖精達とふわふわした毛玉みたいな光が僕にタックルしてきた。
まあ避けきれずに地面に突っ込んだよね。
「南雲!?大丈夫か??」
「……なんとか。」
また桜井にクリーン魔法掛けてもらい勧められた場所にゆっくり座る。
尚、桜井は妖精達や毛玉?に怒った後、僕にごめんなぁ…!って謝ってきた。
妖精達、久しぶりのお客さんで嬉しくなってはしゃいじゃったんだって。可愛いね。
小さな手で僕に握手してくる子達にイラつくほど僕は怒ってないし、仲良くしてねって笑顔で言った。
せっかくだし仲良くなれたらいいよね。
閲覧ありがとうございます。
次のお話も南雲視点。
キーワードは…次は特にないかなぁ。